分散ストレージ管理のOSS、SODAが開催したミニカンファレンスを紹介
オープンソースのストレージマネージメントソリューションSODAを運営するSODA Foundationは、2023年6月14日に約半日のミニカンファレンスを幕張で開催した。SODA Foundationは同時期に開催されたInteropにもブースを出しており、その参加者への相乗効果を期待した設定であろう。14時に開始され、最後のセッションが終了したのが18時という短い時間ではあったが、SODA FoundationのチェアマンであるSteven Tan氏による概要解説に始まり、トヨタ、ソフトバンク、NTTデータ、NTTコミュニケーションズなどのSODA Foundationの会員企業からエンジニアやビジネス開発の担当者等が登壇し、セッションを行った。
オープニングセッションはSODA FoundataionのチェアマンSteven Tan氏
カンファレンスの冒頭のセッションを行ったTan氏は、SODA Foundationが9月に行われるOpen Source Summit Europe 2023に参加すること、これから中国、インドなどでも同様のSODA Dayを行うことを紹介し、SODA Foundationが積極的にイベントに参加する計画であることを説明した。
そしてSODAの最新リリースについても簡単に紹介。ここではOkinawaというコードネームのバージョン1.9.0について、その新機能などを解説した。
その上でSODAの主要となる機能について、5つの柱を挙げてそれぞれを説明した。
5つの柱とは、以下に示したものである。
- データストレージとライフサイクル
- データプロテクションとセキュリティ
- データガバナンスとコンプライアンス
- コストの管理と最適化
- データのビジュアライゼーション
Tan氏はそれぞれについて簡単に説明を行ったが、多くの部分にコストを意識することが含まれていることに注目したい。これはオンプレミスだけではなくパブリッククラウドとの併用が当たり前になってきている現状では、予想できないパブリッククラウドの利用コストの発生がビジネスにインパクトを与えていることを前提としているのだろう。
またデータに付随するメタデータの管理についても注目しており、1.9.0の中でメタデータ管理が挙げられていることの背景として画像などの非定型データについてはメタデータをデータと同様に扱うべきであることもスライドで説明された。
そのためにデータストレージの上位にメタデータを扱うレイヤーを用意するプロジェクトCrystalについても簡単に紹介した。
Tan氏は駆け足でSODAの目指す方向性や強化ポイントなどを紹介し、セッションを終えた。その後、トヨタによる車載システムでのストレージ、KIOXIAがリードするSoftware-Enabled Flashの紹介、ソフトバンク、NTTデータなどのエンジニアによるセッションが行われた。
サイボウズとOSSとの関わり方を解説したセッション
この稿では最後に行われたサイボウズの武内覚氏と深谷敏邦氏による、サイボウズ社内で利用しているストレージシステムに関するセッションを紹介したい。
このセッションは「Cybozu's storage system and their contributions to OSS」と題されており、サイボウズが利用するCephとRookのスタックを紹介し、合わせてオープンソースソフトウェアとの関わり方についても言及するという内容だ。
サイボウズのシステムは、現状ではKubernetes上で実装されており、アプリケーションからはオブジェクトストレージ、ブロックストレージがCephストレージとRookのオーケストレーションによって分散処理されていることを解説した。
このセッションの中核はサイボウズのストレージそのものの概要よりもオープンソースソフトウェアであるCephとRookを使っている理由、オープンソースコミュニティとの関わり、そしてどうして商用のオープンソースソフトウェアを使わないのか、などについて説明した後半の部分だろう。
特にレッドハットなどが提供するオープンソースソフトウェアに対するサポートを使わない理由として、バグなどが発生した時にソースコードが公開されていることで修正を自社で行うことが可能であるが、それがアップストリームのリリースにマージされるまでの時間的な遅さを指摘。これはレッドハットなどの視点から言えば、他との整合性を取りながら検証した上で実施するために時間がかかるということになるのであろうが、サイボウズとしては、アップストリームのリリースとの整合性よりも素早く修正できることを重視しているということになろう。
これは武内氏のようにRookのメインテナーとしてのタスクを実行できるほどにそのソフトウェアについて経験と知識があるエンジニアが在籍しているからできることであり、他の事業会社が真似をするのは難しい。また経験のあるメインテナーを雇用できたとしても、そもそもそのオープンソースソフトウェアを社内で利用するという決断を下すのは同様に難しいだろう。つまりメインテナーを雇う前にどのオープンソースソフトウェアを使うか? を決めること自体が困難となる。サイボウズについては富士通でオープンソースソフトウェアに関わっていた武内氏を1年間、技術顧問として招いた後にストレージシステムの開発者として雇用したことを考えるとサイボウズが慎重に決断したことがわかる。
武内氏はセッションの中ではレッドハットの名前は出さなかったものの、メインテナーとして直接オープンソースソフトウェアに関わっているエンジニアのジレンマを垣間見たセッションとなった。
また筆者が「CephとRookで実装されている部分をSODAで置き換えることは可能か?」という質問には「できない。SODAとCephとRookは担当しているレイヤーが違う。SODAはCeph/Rookの上位で複数のストレージを束ねる役割」と解答した。同じストレージとは言えど、レイヤーが異なり、SODAはよりマルチクラウドを想定していることが分かる回答となった。
SODA Dayの概要は以下から参照されたい。
●参考:https://www.sodafoundation.io/events/sodadayjapan2023/schedule/
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