Linux/OSSの導入実態と今後の展望 7

Linuxの基幹システムへの導入可能性

Linuxの基幹システムへの導入可能性

   基幹システムへのLinux導入率は3%とまだまだ少ないものの、導入意向は約40%と非常に高い。導入したい理由としてはTCO削減効果が圧倒的 に多く、ユーザの基幹系システムに対するコスト削減意識が非常に高いことがわかる。既に導入しているユーザの評価では、導入コスト、運用コストともに満足 度は高く、実際にTCO削減効果の役割を果たしている。また、性能・機能、信頼性・安定性も高い評価を得ており、基幹系システムでも十分に通用している。

   導入したい業務として多いのは販売管理、財務・会計管理。とくに財務・会計管理、いわゆる勘定系ではどの業種からも導入意向が高く、またどの業種でも必ず存在するシステムという点からも、今後の導入ポイントとなってくるだろう。

大きな2つの課題

   基幹システムへの導入に立ちはだかる大きな壁として、管理者・技術者の不足、サポートに対する不安がある。もともとLinuxだけではなくOSS全体でも言われてきたことだが、基幹システム導入となると更にそれが顕著に出ている。

   サポート面については、ハードウェアベンダーやディストリビューションベンダーをはじめ充実されてきているので、徐々にユーザの不安も解消されてい く方向になっていくことが予想される。しかし、管理者・技術者の不足はすぐに補えるものではない。UNIX技術者がLinuxのスキルを習得することは難 しくはないが、Windows技術者がLinuxをマスターするのは難しいとも言われている。

   ただし、ディストリビューションベンダーがトレーニングコースを設置し、技術者の育成ビジネスに注力しており、Linuxの裾野は徐々に広まりつつある。技術者が十分な人数になるまで、SIerがユーザをサポートしていけるかどうかが重要になってくる。

基幹Linux導入への準備整う

   特に2004年に入ってから日本IBMやNECをはじめとするサーバベンダーが、ハイエンド Linuxサーバを用いた基幹系Linuxソリューションを積極的に推進している。例えば、2005年4月には富士通がインテルと共同開発した基幹 Linuxサーバ「PRIMEQUEST」の販売を開始した(表2)。また、そのためのミドルウェアの対応、サポートや技術者の体制を整えている。

   Webサーバなどフロントエンド領域で実績を出してきたLinuxが、本格的にミッションクリティカル領域に進み始めたと言えるだろう。


ベンダー 取組内容
日本IBM 「Linux on Power」というテーマを掲げ、Powerアーキテクチャを採用しているzSeriesやpSeriesなどのハイエンドサーバでのLinuxを推進。また、Linux専用サーバ「eServer OpenPower」の販売も行っている。
NEC 「エンタープライズLinuxソリューション for MC」として、Linuxを使ったミッションクリティカルシステムの構築を推進していく。
富士通 インテルと共同開発した基幹Linuxサーバ「PRIMEQUEST」を軸に、Linuxを採用した基幹システムソリューションを展開していく。
日本HP LinuxをItanium 2ハイエンドサーバ「Superdome」で展開をすることにより、メインフレームやRISCサーバからのマイグレーションを積極的に推進していく。
表2:サーバベンダーの基幹Linux戦略
 

   データベースや業務アプリケーションも対応が積極的に図られている。主要データベースはほとんどが対応していると言っても良い。ERPなどの業務ア プリケーションについても大規模企業向けのソフトは対応が図られているが、Windowsをメインプラットフォームとしてきた中堅・中小企業向けのソフト は対応が図られておらず、今後の予定がないというベンダーが多いのも現状である。

   もともとメインフレームやUNIX系しか選択肢のない大規模企業では徐々にLinuxが浸透していくことが予想されるが、システムの規模的に WindowsかLinuxどちらにも振れる可能性がある中堅企業をターゲットとするベンダーの対応がポイントになってくるだろう。

   最後になるが、サーバ、ソフト、ディストリビューションどのベンダーからも、取材時に最も多く聞かれたのはSIerがキーポイントになっているとい うことである。ユーザとシステム構築で直接やり取りをするSIerがLinux技術者を要し、今後Linuxによるシステム構築を積極的に提案していくか どうかが大きな注目点になっていくだろう。

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