オープンソースDBMSの成長に期待
オープンソースDBMSの成長に期待
今回実施したユーザ調査においてひとつ特長的だったのは、PostgreSQLやMySQLのようなオープンソースDBMSについて調査を行ったことだろう。Linuxの調査はあってもオープンソースDBについての調査はほとんど存在しない。
そのオープンソースDBは、現状での導入率は10%、今後の導入意向としては30%近くのユーザが関心を示している。DBMSはソフトウェアの中でも大きなコスト負担を占めており、その分オープンソースDBMSへの期待が高いことは間違いない。
既に導入済みのユーザの品質に対する評価は高く、商用ソフトウェアとも張り合えるレベルまできていることがわかる。ただし、Linuxのようにサ ポートを表明しているベンダーやSIerは非常に少ない。商用DBMSを開発・販売しているベンダーは収益源が減ることにもなるので、その辺との兼ね合い で非常に難しい面があるようだ。
とは言うものの、ユーザではオープンソースDBMSを求める声が強まっていることは明らかである。このようなニーズの高まりを受けるようなかたち で、ベンダーやSIerにおいてオープンソースDBMSに対する動きが2004年後半からいくつか出始めている(表1)。
| 発表日 | 取り組み内容 |
|---|---|
| 2004年11月 | SAPジャパン、日本HP、ノベル、住商情報システム、ビーコンITで「SAP/MaxDBコンソーシアム」設立。オープンソースDBであるMaxDBとLinux上でSAP製品を運用するためのノウハウを蓄積する。 |
| 2005年2月 | NTTデータと富士通が、PostgreSQLコミュニティとの協調のもと、エンタープライズ分野で利用するための共同開発を行うことで合意。オープンソースを利用したより高度な基幹システムの実現を目指していく。 |
| 2005年4月 | ヒューメントがFirebirdの有料サポートサービスを4月1日より開始。 |
| 2005年5月 | サイボウズが2005年6月30日から販売を開始する自社グループウェア製品の新バージョン「サイボウズ ガルーン 2」のDBにMySQLを採用。 |
| 2005年5月 | 住商情報システムがオープンソースデータベースMySQL の開発元であるMySQL ABと、最高レベルのパートナー契約となる「MySQL Network Certified Platinum Partner」契約を締結。企業/自治体などのエンタープライズ向けのサポートサービスを提供する。 |
| 2005年5月 | NECとSRAがPostgreSQLの技術者認定試験「PostgreSQL CE Silver」のSRA認定トレーニングコースを全国規模で展開していくことで協業。 |
SRAや住商情報システムなどのSIerではサポートを強化していく構えである。NECや富士通といった総合ITベンダーでも、SIerと協力しな がらオープンソースDBMSに積極的に取り組む姿勢である。また、SAPジャパンやサイボウズといったアプリケーションベンダーにおいても、採用するDB としてオープンソースを選択肢に加えようとする動きが出始めている。サイボウズでは全面的にMySQLを採用している。
このようにオープンソースDBMSを取り巻く環境は、追い風になってきていることは間違いないだろう。
Linuxビジネスの成長性
2003年から2004年にかけてハードウェアベンダーのLinuxサポート体制が整備さ れ、ようやく他のOSと同じ舞台に立つことができたのではないかと思われる。また、2004年は各ベンダーがLinuxに対して積極的にコミットしていた ことも、ユーザのLinux導入に対する安心感につながっていくことを期待したい。
サーバと一緒にOSが出荷されるケースはおよそ7割から8割である。それを考えると、OSのシェアの拡大においてサーバベンダーの対応がより重要に なってくる。今後はサーバの第3のOSとしてLinuxが選択肢に挙がるようになると思われる。導入するシステムの用途にもよるが、商談ベースでは Windows、UNIXと同じ土俵に上がってくることになるだろう。Linuxサーバの本格的な普及はこれからである。
ディストリビューションビジネスの今後
Linuxディストリビューションのビジネスは、商用ソフトウェアのように高いライセンス料で利益を生むことはできない。まず可能性があるのはサポートビジネスである。各社サポートには注力しており、サポートサービスに大きな差は見られない。
このサポートビジネスで売上を上げるにはやはりボリュームである。自社製のOSが普及しないことにはサポートもできない。現状、国内のサーバ用 Linux OSは4種類で占められているが、最も市場占有率が高いのはレッドハットである。レッドハットの強みは主要サーバベンダーにOEMを行っていることであ り、プレインストールモデルの販売もされている。
引き合いに出していいかどうかはわからないが、マイクロソフトのWindowsもこの戦略で圧倒的なシェアを占めるまでになった。他のディストリ ビューションベンダーがレッドハットと互角に戦うためには、まずはサーバベンダーとのパートナー関係を強めていく必要がある。そうすることでLinux市 場全体もより活性化し、Windowsにとってもより脅威になる存在となるだろう。