今後のOSS/Linuxの普及可能性について
これまで6回に渡り、ユーザ企業におけるオープンソースソフトウェア(以下OSS)の導入実態と、OSSの代表格であり近年ビジネスとして急成長を 遂げているLinuxの市場動向に関する調査結果を述べてきた。最終回となるこの第7回では、これまで見てきた調査結果をもとにOSSおよびLinuxの 将来について展望していきたい。
ユーザでの導入意向高く今後の普及が見込まれる
連載第1回で示したが、OSSの導入率32%、導入意向ありが31.3%というユーザ調査結果 からもわかるように、企業情報システムユーザにおいてOSSへの関心は非常に高い(図1)。その大部分が最も著名なLinuxに向けられているものではあ るが、そのLinuxが今後のOSS普及のきっかけとなっていくことは間違いないだろう。

図1:OSSの導入状況と今後の導入意向
また、Linux以外のOSSの中にも高い導入率を示しているものはある。OSSによるWebアプリケーションの開発環境のポピュラーな組み合わせ であるLAPP(Linux、Apache、PostgreSQL、PHP)の導入率が高いことが調査結果から見て取れた。単にLinuxを導入するとい うことではなく、OSSを組み合わせてシステムを構築していくということが徐々に浸透してきている。
OSSの導入を業種別という切り口で見てみると、官公庁や自治体など公共での導入率が60%以上となっていることがわかった。経済産業省をはじめと して政府がOSSの導入を推奨している結果が調査結果にも表れている。一方で民間企業を見てみると、サービス業で約45%の導入率を示している以外は、ど の業種も30%に至っていない。しかし製造業では今後の導入意向が高く、導入が増えていくのはこれからというところだろう。
ユーザがOSSに期待しているものはTCO削減であることは間違いない。OSSにとって無償で入手できることは大きなメリットであり、導入コストの 削減は確実に見込むことができる。問題となるのは運用面のコストであるが、ベンダーやSIerでのサポート体制の充実が図られれば、その問題も解消されて いくだろう。少なくとも商用ソフトウェアより増大することはないのではないだろうか。
OSSはコスト先行のきらいがあるが、機能・性能面やセキュリティ、信頼性を導入理由として挙げているユーザが多いことも見逃してはならない。ソフ トウェアの本質的な部分での評価は確実に高くなっている。コストと品質の両面でユーザの信頼が得られてきているので、普及が本格化するまでにそう長くはか からないだろう。
OSSやLinuxの導入理由としてTCO削減の次に多かったのが、ベンダーやSIerの提案によって導入されたケースである。導入ユーザの約 1/3も存在している。ユーザがシステムを構築するときに直接関わってくるSIerはOSSの普及のための大きな鍵を握っている。
よほどシステム管理者に強いポリシーがない限り、どのソフトを使っても安上がりで効率よく正常にシステムが動けばユーザにとっては十分である。 SIerがOSSのメリットを説き、積極的にOSSによるシステム構築を提案していけば、ユーザへの普及は加速されるだろう。