多岐に渡ったモバイルFelicaのバグ管理ポイント
「最新家電のバグ管理」 では、日常生活の中で使われているIT技術を採用したプロダクト・ソリューションを取り上げ、そのバグ管理に対する取り組みについて紹介している。今回取 り上げるのは、SuicaやPasmo、Edyなど、さまざまなサービスのベースとなっている「モバイルFeliCa」だ。
当初はSuicaに代表されるカード型が中心となっていたが、携帯電話にFeliCaチップを搭載した「おサイフケータイ」の普及が進み、現在 では交通や決済、アミューズメントなど、幅広く利用されている。ファイナンスを含め、トランザクションやエンタテインメント、リテーラ、アクセスコント ロールといった形で、身の回りにあるサービスに近づいているという状況だ。
このモバイルFeliCaによってもたらされる決済規模は2.8兆円といわれており、フェリカネットワークスでは事業者に対する技術情報の開示などを通して、より広く利用してもらう環境づくりを行っているという。
そこで、本記事では、改めてモバイルFeliCaの仕組みを解説し、そこで発生するバグ管理のポイント、さらに今後の取り組みについて紹介する。
まずモバイルFeliCaのシステムの概要を模式図化したものが図1だ。エンドユーザから見た場合には、同じモバイルFeliCaを使いながらも複数のサービスが混在しており、個々のサービスの観点からは、「第1回:実は難問だらけのバグ管理」で解説した、さまざまなリソースを統合する端末のケースと思われるだろう。
しかし図1のように、基本的な考え方としては「モバイルFeliCa ICチップ」または「FeliCa ICチップ」を中心とした特定の端末を中心としたサービス側重視のケースだといえる。
FeliCa全体の特徴としてあげられるものの1つに「マルチアプリケーション」がある。これは1つのモバイルFeliCa ICチップ/FeliCa ICチップで、あらかじめ複数の事業者が個々のデータ管理を管理できるようにした仕組みだ。
詳しくは後述するが、ICチップ内にはデータを保存するために区分けが可能な領域が用意されており、個々の区画をそれぞれの事業者がユニークな 「鍵」によって管理できる。これを実現しているのが「FeliCa OS」だ。イメージとしてはWindowsのように複数のフォルダの作成が可能で、かつフォルダごとのアクセス権が設定できる、と考えるとわかりやすいだ ろう。
この事業者ごとの領域はフォルダ数やデータサイズが柔軟に設定可能で、例えばSuicaのように課金情報や履歴といった複数のデータを保存したり、会員証サービスのように会員番号だけを記録する、といった使い方が可能だ。
このマルチアプリケーションは開発段階から仕様として組み込まれており、これによって複数事業者のサービス乗り入れを可能としている。そこで重要なのは、セキュリティと互換性である。次ページではこの2点について、より詳しくみていこう。
