情報処理技術者試験のエントリー資格「ITパスポート」を攻略する

2013年10月25日(金)
五十嵐 聡

 ITパスポート試験(以下、IP)は公式略称で「iパス」とも呼ばれている試験で、他のレベルの試験とは異なり、CBT(Computer Based Testing)方式をとっています。CBT方式では試験日や試験会場を指定できるので、都合のいい時期に受けたい場所で受験できます(公式サイト参照)

 ただし、いつでも受けられるからといって、日ごろの学習を怠っているといつまで経っても実力がつかず合格できません。受験時期を明確にし、適切な学習のスケジュールを定めて、過去問題の復習を毎日少しずつ進めるなど、必ず日々学習を続けていくことが合格への最短コースです。

ITパスポートの出題傾向分析

 IPの問題(小問84問、中問形式の小問16問、計100問)はストラテジ、マネジメント、テクノロジの三つの分野に分類されています。合格基準は総合評価点が全体の60%以上、分野別評価点が各分野の30%以上です。100問中の60問以上に正解することで合格となります。60%以上正答すれば合格なので、難易度が高い問題を無理に解くことは止め、頻出テーマの問題を重点的に学習し、6割取れるようにすることが試験対策の鉄則です。

 ただし、6割取れていても不合格になる場合があるので注意してください。たとえば、ストラテジとテクノロジで全問正解していても、マネジメント(毎回約25問出題)が苦手で3問しか正解できなかった場合、全体の100問のうち78問正解していますが、マネジメントの評価点を十数%しか取れないことになるため、このケースでは不合格となります。各分野で最低でも30%の問題に正解できるように、全分野の知識を広く学習しなければなりません。

 IP試験では、上記の三つの分野の問題数はおおよそ同じです。平成25年春期試験では、ストラテジ(小問・中問の両方。以下同じ)が35問、マネジメントが24問、テクノロジが41問です。テクノロジが他よりもやや多い程度で、出題数が少ないから捨ててよいという分野はありません。また、前述の分野別評価点があることから、どの分野も最低30%以上正解しなければならないので、すべての分野が重要になります。

 ストラテジ、マネジメント、テクノロジの各分野について、頻出テーマと出題回数(平成21年春期から平成25年春期までの9回分の集計結果)を示します。9回のうちの半分(5回)以上出題されているテーマを頻出テーマとしています。

ストラテジ頻出テーマ

ストラテジ頻出テーマ

 ストラテジでは、損益分岐点(固定費や変動費の計算問題も含む)、SWOT分析、著作権法、DFD、不正アクセス禁止法、RFP(システム調達の手順なども含む)などの、経営分析、法務及びシステム戦略に関するテーマが頻繁に出題されています。上のグラフの各テーマの過去問題を集中的に学習することが合格への一歩です。当該テーマの過去問題は、過去のIPにおいて最低でも2回に1回は出題されているので必ず押さえておいてください。

マネジメント頻出テーマ

マネジメント頻出テーマ

 マネジメントでは、システム要件定義とアローダイアグラムのふたつがもっとも多く出題されています。システム要件定義のテーマでは、システム要件定義において業務上の要件が満たされていることを確認するのに適切な役割の者はだれかを問う問題(平成24年春問43)など、システム要件定義に関連する各種作業や役割などを確認する問題が出題されているので、単にシステム要件定義という名称を知っているだけでは正解が難しくなります。アローダイアグラムのテーマでは、アローダイアグラムで表されるプロジェクトについて、すべての作業が完了する日時やクリティカルパスを答えさせる問題がよく出題されています(参考までに、これは基本情報技術者試験の同テーマの問題も同様です)。また、インシデント管理などのITILに関するプロセスや、SLAなど契約に関するテーマも頻繁に出題されます。これらのテーマに関する過去問題を確認しておきましょう。

テクノロジ頻出テーマ

マネジメント頻出テーマ

 テクノロジでは、表計算ソフトに関する問題と、稼働率、MTBF、MTTRがテーマの問題が特に多く出題されています。表計算ソフトがテーマの問題は平成23年秋期、平成24年秋期及び平成25年春期に公開された過去問題で2回出題されています。また、稼働率、MTBF、MTTRがテーマの問題は平成21年春期、平成22年春期及び平成23年春期に2回出題されています。試験によっては同じテーマが2問出題される可能性があることから、特に出題されやすいこのふたつはもっとも重要なテーマです。必ず出題されるものと考え、十分に学習しましょう。

 ほかには、情報セキュリティポリシ(情報セキュリティ基本方針なども含む)、データベースの主キー、HTMLなどのテーマが頻繁に出ています。上のグラフの各テーマは確実に押さえましょう。

 なお、基本情報技術者試験などと異なり、IPでは過去問題と同じ問題が出題されたことはありません。よって、過去問題と正解を丸暗記して対応することはできないので、問題を丸暗記する対策方法は無意味です。問題そのものではなく、出題されているテーマの要点を理解して習得しておく必要があります。

中問形式の問題の解き方

 IP試験では、他の試験の午前試験と同じ小問形式の問題のほかに、中問形式の問題が存在します。中問A~中問Dの四つの中問が出題されます。各中問は四つの小問を含みます。ひとつの中問では1~2ページの問題文が示され、その記述に関する4問の小問を解いていく形式です。

 ほとんどの中問は、専門知識よりも読解力が要求されます。問題文や図表の内容に対応する適切な選択肢を選ぶことで正解できる問いが多いので、自分の読解力を頼りにして問題に挑みましょう。

例 平成25年度春期IP 中問A

(問題文)

 X社の人事部のFさんは、社員の満足度調査を、電子メール(以下、メールという)を利用して実施するように上司から指示された。調査は、ワープロソフトで作成した満足度調査用のアンケート文書を、メールに添付して回答してもらう方法で行うことにした。

 Fさんが上司から指示された事項は、次のとおりである。

(1) メール本文中に満足度調査の目的、対象者、回答方法、期限を明記する。
(2) アンケート文書をメールに添付して、全社員にアンケートの依頼メールをFさんから出す。アンケートの回収は、回答したアンケート文書をメールに添付してFさん宛てに返信してもらう。期限は、翌月の月末とする。
(3) アンケートは、全社員の99%以上に回答してもらいたいので、期限の2営業日前に、未回答の社員に対して個別に督促メールを出す。
(4) 返信されたメールを基に、回答者を社員リストでチェックする。
(5) 回答されたアンケート文書は、サーバにある人事部だけが参照できるアンケート用の共有フォルダ(以下、共有フォルダという)に、回答者の部署別に、社員が識別できるファイル名で保存する。アンケートの回答メールは、集計が終了するまで他の受信メールと分けて保管しておく。

 この問題文に関する問85~問88の4問を解くことになります。問85の問題は次のとおりです。

問85 Fさんは、上司から指示された事項を満たすように、社員へアンケートを依頼するためのメール本文を作成した。aに入れる記述として、適切なものはどれか。

 この度、職場環境を改善するために、満足度調査を実施することになりました。対象者は、全社員です。(  a  )。  期限は、来月の末日です。ご協力をお願いいたします。
 本件に関するお問合せは、人事部担当のFまでご連絡ください。

ア アンケート文書への記入内容に間違いがないようにお願いいたします
イ 回答期限の2日前に、回答がない方へ督促メールを送信したします
ウ 添付のアンケート文書に回答を記入し、このメールの返信メールに添付して送信してください
エ 全社員が対象ですので、期限を必ず守るようにお願いいたします

 このメール本文の内容から、アンケートの提出方法について空欄a以外の箇所に記述がないので、空欄aの箇所に提出方法を記載していないと、メールを受け取った社員がどのようにしてアンケートを提出すべきかわからなくなります。よって、提出方法を示しているウの記述が正解とわかります。また、問題文の(2)に「アンケートの回収は、回答したアンケート文書をメールに添付してFさん宛てに返信してもらう」とあることからも、正解を推定できます。この問題を解くときにはメールなどに関する専門知識は不要であり、問題文から正解を特定できるのです。

 以上のように、過去に出題されたことがないテーマの中問であっても、あきらめずに問題文をよく読み、各小問に解答できるようにしましょう。

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1964年横浜市生まれ。60社を超えるIT系メーカやソフトウェア企業などですべての区分をこなせる情報処理技術者試験対策などの講師として25,000名以上の指導実績がある。各研修先では,その指導力とキャラクタから常に高合格率を誇っている。「応用情報技術者過去問題集」「情報セキュリティ過去問題集」「徹底攻略ポケットシリーズ」(以上,インプレスジャパン)など著書は50冊を超える。

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