自動化で運用管理コストを削減する
はじめに
今回の連載では、データセンターの運用を効率化する各種の方法を、具体的な技術動向や事例、ツールの解説などを交えて紹介していきます。3回の連載を通じて、運用の自動化、仮想化技術を適用したIT環境の運用管理、ITサービス管理、資産管理などを解説します。第1回の今回は、主に自動化に着目し、現在のデータセンター運用の姿を把握します。
コスト削減の対策としては、例えば、IT資産(ハードウエアやソフトウエア)の新規購入を控え、新規ITプロジェクトを凍結し、既存の保守サポート契約を見直し、運用への外注を抑える、ないしは、アウトソースする、などが考えられるでしょう。その反面、コスト削減策が原因でネットワークやサーバーがダウンするなどして、ビジネスへ影響を及ぼすことは許されません。
現在のところ、コスト削減策を推し進める中で、サーバーや周辺機器などを統合する“ITコンソリデーション”が有効な手法の1つであると認識されています。複数のデータセンターを保有する企業では、データセンターの統廃合も選択肢になるでしょう。
米Hewlett-Packard(以下、HP)では、全世界に85カ所あったデータセンターを米国内の3カ所に統合しました。各サイトは真っ暗な(Lights-out)状態の無人化データセンターで、運用は遠隔管理されています。これによるITコスト支出削減効果は今後数年間で約10億ドルと見込んでいます。
HPでは、ここで培ったノウハウや経験、使用した製品を、“HPデータセンター・トランスフォーメーション”というコンセプトの下、顧客へソリューション提供しています。こうしたソリューションは、大きく次の4つに分類できます。
- IT環境を統合・仮想化する「コンソリデーション」
- エネルギーおよびスペースの効率化
- 事業継続・災害対策
- IT運用プロセスを自動化する「データセンター自動化」
このうち、データセンター自動化は、無人化データセンターを実現できる重要な技術です。これにより、ハードウエアとソフトウエアのプロビジョニングや変更管理の定型作業を標準化・自動化し、人的エラーの発生するリスクも抑え、運用管理コストを削減します。以下では、具体的に自動化の内容、機能などをご紹介します。
HPのデータセンター自動化とは?
技術市場調査会社の米Forrester Researchでは、データセンター自動化は、「ハードウエア、ソフトウエアおよびプロセスが協力してITオペレーションを合理化することができる手法の組み合わせ」で、「ITオペレーションとITサービス管理チームが設計からオペレーションや保守に至るまでのサービスを実現するために役立つ高度な手動処理を自動化する」ことと定義します。
ここで、データセンター自動化も、ITサービス管理の視点から検討されなければならない点に注意してください。ITIL(Information Technology Infrastructure Library)をベースに考えると、データセンター自動化も、IT戦略、IT設計・開発、IT運用といった全ライフサイクルの視点から、データセンターの運用、管理で中心的な役割を担う「人」、ビジネスの円滑な進行をサポートする「プロセス」、基盤となる仕組みを構築する「テクノロジー」の3つにバランスよく取り組んでいく手法をとることになります。
以上から、データセンター自動化には、次の4つの機能が必要と考えられます。
1)ネットワーク、アプリケーション、サーバー、ストレージからサービス全体を可視化するとともに構成情報を一元的に管理できること。
2)ITプロセス自体を自動化すること。
3)変更および構成管理の自動化。ネットワーク機器の増設やサーバーのプロビジョニング、OSのインストールや設定、サーバー更新、パッチ管理など、多くは人手でまかなうような労働集約的な作業を自動化すること。
4)ITプロセス全体をトレースおよびトラッキングできること(誰がいつ、どこで何をどうしたか、作業履歴はすべて記録され、レビューされなければなりません)。
次ページでは、上記で最も重要と思われるITプロセス自動化を説明します。