イスラエルのInfinidat、ハイエンドのユニファイドストレージを発表

2016年3月15日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
イスラエルの新興ストレージベンダーのInfinidat、高密度&高性能ストレージを発表

EMCとIBMでハイエンドストレージの開発を指揮したヤナイ氏が率いるイスラエルの新興エンタープライズストレージベンダーInfinidatは、日本での法人の立ち上げと新製品の発表を行った。

これまで専用のハードウェアによって実現されていたスイッチやルーター、ストレージなどがオープンソースソフトウェアと汎用のオフザシェルフサーバーによってSoftware-Definedなモノに変貌している。その先鋒を切っているのはハードウェアベンダーではなくFacebookやGoogleなどのハイパージャイアントだ。インターネットの凄まじいトラフィックボリュームを支えるために市販の製品ではなくソフトウェアと安価なハードウェアを組み合わせるだけで多少故障率が高くてもサーバーやストレージの数を積み上げることで性能を確保しようという発想だ。

その発想をストレージに特化し、仮想化と分散処理を実現するソフトウェアと安価になってきたSSD、ホワイトボックスサーバーによってEMCやNetAppといった専用のストレージベンダーの市場を侵食し始めているのが最近のNutanixやTintri、Nimble Storage、Scalityなどの新興ベンダーだ。そこにまたイスラエルから新たなベンダーが名乗りを挙げた。今回はInfinidatの新製品発表会のレポートをお届けする。

2016年3月8日、都内にてインフィニダットジャパン合同会社が記者発表会を開催した。この発表会では新製品のストレージアレイInfiniBoxと日本法人であるインフィニダットジャパン合同会社のカントリーマネージャーの岡田卓也氏、米国からチーフマーケティングオフィサー、ランディ・アーセノウ氏、イスラエルからインターナショナルマーケティングのトップのサボ・ディアブ氏が会社紹介と製品概要の説明などを行った。

インフィニダットジャパン合同会社カントリーマネージャー岡田卓也氏

Infinidatを理解するには創業者のモシェ・ヤナイ氏の経歴を紹介するほうが判りやすいだろう。EMCでSymmetrixの開発を指揮し、その後にXIVを創業、IBMに買収されたあとに引退状態だった時にバイオサイエンスの研究者である息子との会話から再度、ハイエンドのストレージの必要性を認識して、かつての部下らを率いてイスラエルで起こした会社がInfinidatなのだ。企業を紹介するスライドに「Moshe Yanai 3.0」とあったのはEMC時代を1.0、XIV/IBM時代を2.0として今回が3回めのチャレンジという意味だろう。

今回の特筆すべき点は、Infinidatの作るInfiniBoxというストレージアレイが、90万IOPS、99.99999%の可用性、42Uのラックに480台のHDD、2.8PBの大容量、SAN/NASのマルチプロトコルサポート、HDD交換時のリビルドの高速さなどという部分だけではなく(もちろん、これらの数値も相当注目に値するが)、信頼性の部分と価格の付け方だった。

まず信頼性に関して、製品自体は標準の42Uのラックに収められたラックマウントシステムなのだが、実際に顧客に出荷される前に最低3週間、イスラエルのラボにて耐久テストを行った上で出荷が行われると言う。F2000という下位機種の18Uのシステムであっても既存のラックに追加するのではなくラックに入ったものがその状態で出荷されるのだ。つまり自社のラボで1台1台十二分に信頼性を確認されたものだけが、出荷されるというやりかただ。さらに上位機種であるF6000は42Uにフルにエンクロージャーが収められた状態で出荷され、総重量が1トンを超える。下位機種のF2000でも550kgだ。EMCのハイエンドハイブリッドアレイであるVMAX3 400Kが3.5PBで1トン以下なのでコントローラー3個に電源も3系統というシステムにしては相当ヘビーデューティーに作られていると言えるだろう。

F6000のシステム構成

さらに価格の付け方もユニークだ。F6000の最大2.8PBというキャパシティを全部使わない場合にはその何割かだけを支払えばいいという。つまり設置されているストレージを全部使わない場合は全ての価格を支払う必要はなく、必要になった場合にのみ支払いが発生する。まるでAWSの課金のようだが、これがクラウド的な発想なのだろう。かつてSun Microsystemsが元気だった時にISPのデータセンターにSunのラックサーバーが山積みされていて必要になったら勝手にラックに入れて使ってくれればいい、後で使った分だけ請求しますというビジネスがあったことを思い起こされるやり方だ。

ストレージの伝説と言って良いベテランがゼロから作り上げた製品ということで業界の中でも注目されており、既に金融機関やISPなどでも導入が進んでいるという。日本でのビジネスは3年間で25億円程度を予定しているというインフィニダットジャパンだが、日本ではパートナーをどれだけ獲得できるか?がポイントだろう。Nutanixの日本法人のカントリーマネージャーから移った岡田氏の手腕に注目したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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