Windows Embedded CEのアーキテクチャ
使い方の多様化が進む組み込み機器
みなさんがお使いの携帯電話やスマートフォンでも数GBのメモリを搭載し、画像や動画などの大きなファイルを扱うアプリケーションを使うことも多いと思います。これらの組み込み機器は、もともと大きなデータを扱うように作られていませんでしたが、この数年の間に、使い方が多様化し、扱うデータも肥大化した結果、OSそのものに大きなデータを扱うための基本的な機能が求められてきたのです。
ちょっと脱線すると、画面のサイズが扱うデータのサイズと関連があり、組み込み機器の中でも高解像度の画像や動画を扱う機器ほど、メモリの容量や、データにアクセスするためのバススピードが要求されます。例えば、テレビなどです。HD品質の画像を扱うテレビやHDDレコーダーなどの起動時間が思いのほか長くかかりいらいらした経験があるかもしれません。これは、システムが大きくなり、扱うデータが肥大化した結果、システムの初期化や、データの処理に時間がかかっているからです。
私自身は携帯電話で毎日のようにストレスを感じています、メニューの切り替えが遅くて画面が切り替わる前に次のボタンを押してしまって、期待と異なる動作をすることがよくあります、昔の家電は、ボタンを押せばすぐに立ち上がり、必要な処理を速やかに実行してくれたものですが、いまではそれらを管理しているのは組み込みOSとそのうえで動作するアプリケーションで、まるでPCの世界と変わりません。
例えば、Windows Embedded CE 6.0 では十分に階層化された構造を持っており、アプリケーションの起動は、昔ながらの組み込みシステムに比べればかなりのオーバーヘッドがあります。
それでも実用上の処理速度を実現できるのは、ハードウエアがそのオーバーヘッドによる遅延をカバーすることができるからです。
図4:Windows Embedded CE 6.0 のアーキテクチャ(クリックで拡大) |
OSを高速起動させるポイント
さて、OSのアーキテクチャを少し掘り下げてみていきましょう。
この図の中で、「マイクロソフト」で図示されているものはOSにあらかじめ含まれており(多くの場合ソースコードもShared Source Programによって共有されています)開発者が必要に応じてOSのコードに手を加えることができるようになっています。例えば、独自のファイルシステムや暗号化機能、ハードウエアを利用した高速な画像処理を実現する際に、関連するデバイスドライバーや、カーネルに手を入れることで同じOSを使いながら差別化を図ることができます。
例えば、マイクロソフトが同じ要領で個別の分野のニーズに対応したものがいくつかあります。Windows Automotive(次のバージョンではWindows Embedded Automotive 7 という名称になり、OSのコアはWindows Embedded Compact 7 と共通のものになります)では、カーナビ向けのいくつかの機能拡張がなされています。代表的なものとしては、グラフィックス機能の拡張、そして車載機器に必要とされる短い起動時間です。
最近LinuxなどのOpen source向けに高速起動(Quick bootなどと言われることもあります) の技術を提供するメーカーが登場していますが、Windows Automotiveではマイクロソフト自身が高速起動の機能を提供しており、通常のCEでは実現できない品質と性能を実現しています。
OSが起動するまでの間に行われる処理は、ハードウエアの初期化、各インターフェースの初期化、OSのロードといったものですが、起動時間を短縮するためには、ハードウエアの初期化やインターフェースの初期化を効率よく行うためにカーナビで必要とされる機能をどの順番で初期化して動作させるかが重要になります。
一般的な情報処理用のアプリケーションを開発する際にも、同じことを行ってシステムの性能や立ち上がり時間を最適化することがあると思いますが、基本的な考え方は同じです。ただしハードウエアが絡むために問題は少し複雑になるでしょう。その場合は、ハードウエアエンジニア、あるいはデバイスドライバーエンジニアとペアを組んで解決するのがベストです。