Linux上でSAPの堅牢性をより高める

2010年12月6日(月)
菅野 博貴

使用製品の概要(1):IBM BladeCenter

IBM BladeCenterは、5種類のシャーシが販売されていますが、いずれも同じブレードサーバー、同じスイッチモジュールが利用できます。例えば、シャーシを購入後3年経過後にも最新ブレードサーバーが同じシャーシで使用可能であり、逆にブレードサーバー購入後3年経過後も新しいシャーシに移動することが可能という、他社製品にはないアドバンテージを持っています。また、Webサイトを通じてハードウエア仕様をオープンにしていることにより、幅広いパートナー企業との協業が実現、ユーザーへの提供価値を最大化しています。

これに加えてシステム管理の観点では、アドバンスト・マネジメント・モジュール(略称:AMM)と呼ばれる、Webインターフェースの管理モジュールによって、遠隔操作も含めたさまざまな機能を提供します。さらに、IBM Systems Directorにより、IBM BladeCenter以外のサーバー群も一元管理することができ、同時にOSや仮想ハイパーバイザーの管理も行うことができます。

また、Green ITの観点でも、消費電力を抑えることのできるスマートな設計となっています。各部品を小さくすることで冷却風量を最適化・極小化し、電力を使用する部品数も少なくすることで電力消費量の削減につなげています。さらに、AC-DC変換効率の高い電源モジュールを採用し、電力消費も発熱も抑えています。

以上のようにIBM BladeCenterは、互換性を維持しながら、常に最新のテクノロジーを提供し続け、かつ投資の保護に寄与するオープン・プラットフォームです。

使用製品の概要(2):LifeKeeper

LifeKeeperは、サイオステクノロジー社が販売、サポートするクラスタソフトウエアで、予備サーバーを準備した上で、稼働サーバーに障害が生じた場合に自動的に切り替えを行い、復旧時間の短縮と運用リソースの削減を可能にします。サーバー同士が一定間隔で監視を行う仕組みをソフトウエア上で行い、通信が不可能となればシステムダウンとみなして、予備サーバーへの切り替えを実行します。

LifeKeeperには、多くのアプリケーション用にARK(アプリケーションリカバリーキット)と呼ばれるオプションが用意されており、スクリプトの開発なしでアプリケーションの冗長化を実現できます。これにより、開発コストや運用管理者の負担・コストを削減することにつながります。今回使用したSAPやOracleをはじめ、Apache、DB2など主要なアプリケーションのARKが既に存在します。また、カスタムアプリケーションの場合、仮にARKが存在しない場合でも、Generic ARKという機能を用いて任意のアプリケーションをLifeKeeperの保護対象に組み込むこともでき、柔軟な対応が可能です。

図4:LifeKeeperの基本構成イメージ図(クリックで拡大)

今回の検証とは異なるシステム環境ですが、IAサーバー系のSAPシステムでは、Windows Serverが日本国内では高いシェアを持っています。この標準クラスタ機能であるMSFC*3とLifeKeeperをクラスタ機能の観点で比較すると、まずLifeKeeperは、Active Directoryが不要であり、また、共有ストレージを使用しないシステム形態(オプション)も構成できるため、H/W費用や構築費用を抑えることが可能になります。

そして、MSFC(またはMSCS)では、WindowsのエディションはEnterpriseエディションが必須となりますが、LifeKeeperであればStandardエディションでも動作可能であるため、ライセンスコストを抑えることができ、この点でもMSFC(旧称MSCS)よりも優れた点と言えます。

次回からは、具体的な環境構築作業の流れやノウハウ、ポイントを紹介していきます。

[*3]Microsoft Failover Clusterの略、Windows Server 2003まではMicrosoft Cluster Service(MSCS)。

<協力:SAPジャパン株式会社/サイオステクノロジー株式会社>

日本アイ・ビー・エム株式会社

2001年、日本アイ・ビー・エムに入社。入社当初よりSAP社製品関連テクニカルサポートに従事し、日々東奔西走中。グローバルISVソリューションズ所属。

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