プライベートクラウドの作り方

2011年2月10日(木)
須賀 仁志

グレード別アーキテクチャ標準化

アプリケーションのインフラに対する要件は多種多様です。この多様な要件を標準化しないまま、プライベートクラウドの運用を開始してしまうと、多種多様なアプリケーション担当者からの要求に悩まされる事になります。そうならないために、アプリケーション担当者からのインフラ要件をグレードとして定義し、グレードごとに採用するアーキテクチャの標準を定義します。

標準化すべき主要なインフラ要件は「可用性」と「バックアップ」そして「監視」です。例えば可用性要件では、システムによって許容できる障害発生時のサービス停止時間や、メンテナンス停止の時間が異なります。これをサービスレベルの高いものから低いものまで、グレードとして定義し、それぞれのグレードに対する冗長化アーキテクチャを標準化します。

運用領域での検討事項

運用の領域では、「役割分担」と「課金ポリシー」が主要な検討事項となります。

役割分担の定義

アプリケーション担当者と、プライベートクラウド担当者の間での役割分担を定義します。運用時に不要な混乱を生じさせないためには、この役割分担をしっかり定義しておく事が必要です。「プライベートクラウドの提供機能スコープ=プライベートクラウド担当者の業務範囲」であるとは限りません。
例えば、プライベートクラウドでOSやミドルウエアを提供する場合、初期インストールだけはプライベートクラウド担当者が実施し、設定変更、パッチの適用、起動停止はアプリケーション担当者が実施するなど、タスクによって実施担当が異なる事はよくあります。そのため、役割分担の定義では事前に構築・運用業務を細かくタスクとして分解しておく必要があります。

図2:構築業務の役割分担定義の例(クリックで拡大)

課金ポリシーの定義

アプリケーション担当者からのコスト回収ルールを、課金ポリシーとして定義します。課金の方法には大きく分けて2つあります。1つは、年間でかかった全体コストを、一定のルールに従ってアプリケーション担当者に配賦する方式です。この場合、アプリケーション担当者は同一のサービスを受けていたしても、年度によって回収される金額が変動する可能性があります。そのため、予算計画を立てづらいといった欠点があります。一方で、プライベートクラウド担当者側の収支管理がシンプルになるという長所があります。

もう1つは、事前に価格を設定しておき、定期的にその設定された価格に従ってアプリケーション担当者からコストを回収する方式です。この方式では、アプリケーション担当者側の予算計画は立てやすくなりますが、プライベートクラウド担当者側は赤字にならないよう、精度の高い需要予測と拡張計画が必要となります。

また、運用人件費やブレードサーバーのシャーシ費用など、全体共通で発生する費用の回収方法や、利用されなかった余剰インフラリソースの費用を誰が負担するかなど、課金に関するルールを明確にしておく必要があります。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

ITビジネス企画推進室 インフラソリューション企画推進部 ソリューション企画推進第1課。2001年に伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)入社。
開発SEとしてERPの導入を担当後、アプリケーションとミドルウェアの標準化・共通化の企画、設計、開発、運用に従事。現在は、サーバーやストレージ、仮想化等のインフラ領域に軸足を移し、プライベートクラウドの構想策定業務を中心に活動している。

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