プライベートクラウドの作り方
サービス領域での検討事項
サービスの領域では、「サービスメニューの定義」と「利用者向けガイドラインの整備」を行います。これらの検討は、インフラ設計、運用設計の結果に基づいて実施します。
サービスメニューの定義
サービスメニューとは、プライベートクラウドが提供するサービスをメニューとして一覧化したものです。アプリケーション担当者はサービスメニューとして整理された各種サービスから、必要なサービスを選択して調達します。
サービスメニューは、アプリケーション担当者が最適なものを選択できるように、サービスの内容や品質(サービスレベル)、そしてその対価が表現されます。サービスメニューには、レストランのメニューのような、選択のしやすさと、分かりやすさが求められます。
以下に、サービスメニューの例を示します。
図3:サービスメニューの例(クリックで拡大) |
サービスメニューを定義する際には、以下の点に留意します。
- ・提供機能と選択肢
- 提供する機能ごとに、その構成の選択肢を定義します。この際、グレード別アーキテクチャ標準化で検討した結果を参考にします。
- ・リソースの提供単位
- 提供する機能ごとに、提供するリソースの提供単位を定義します。例えば仮想マシンを提供する場合、メモリを1GBごと提供するのか、512GBごとに提供するのかなどを定義します。
- ・サービスレベル
- サービスのメンテナンス時間、障害発生時の影響範囲や、割り当てるリソースを保証するか否かなどを定義します。
- ・価格
- 提供サービスの価格をメニューごとに定義します。
利用者向けガイドラインの整備
利用者がスムーズにプライベートクラウドのサービス仕様を理解できるよう、ここまでに検討した結果を利用者向けガイドラインとして文書化します。
利用者向けガイドラインは、アプリケーション担当者がプライベートクラウドの内容を理解するために最初に読むドキュメントです。分かりやすさが最重視されるため、利用する単語もできる限りアプリケーション開発者にも分かる言葉を用います。インフラの専門用語は極力避けるべきです。インフラの内部的な構成についてもアプリケーション開発者にとっての重要性は低いため、なるべく記述を省略します。
この文書には以下の内容が記載されます。
- ・プライベートクラウドの概要
- プライベートクラウドの事をあまり知らない読者でも分かるよう、基本的な事項も記載します。例えばプライベートクラウドを利用する価値や効果、そしてサービスの全体概要などです。
- ・サービスの仕様
- ここまでに検討したサービスメニューや、運用業務の役割分担を記載します。
- ・問合せ窓口、申請フロー
- その他、アプリケーション開発者が疑問に思うであろう内容については先回りして文書化しておく事で、問合せの発生を抑制します。
プライベートクラウドを常に最適な状態に保つために
このようにして構築されたプライベートクラウドも、利用されなければ意味がありません。作成した利用者向けガイドラインを用いて、アプリケーション担当者に対する周知、啓蒙活動を定期的に実施します。デモ環境の公開など、プライベートクラウドを知ってもらい、利用してもらうための定着化活動はプライベートクラウド構築後も継続して実施すべきです。
また、プライベートクラウド環境は今後、複数年にわたって利用され続ける事になります。複数年の中では、技術トレンドや、アプリケーション担当者からの要望も変化していくでしょう。そのような変化に対応するためにも、技術動向をウォッチし、利用者からのフィードバックを得ながらサービス仕様の改善や、運用方法を見直しなど、さらなる効率化のための検討が必要です。
今後の第3回と第4回では、運用のさらなる効率化を実現するために、CTCで実施している具体的な取り組みや事例を紹介します。