サーバー仮想化と連携するエッジ・スイッチ
2010年の連載では、ハイパーバイザそのもののI/O仮想化オーバヘッドを削減する技術として、Single Root I/O Virtualizationと呼ぶ技術を紹介した。これについては、利用可能なハードウエアが徐々に市場に出てきている。
SR-IOVにおける現時点での技術上の課題として、PCI Expressデバイスのパススルーとして実装した場合に、仮想マシンのライブ・マイグレーションへの対応が困難になることが挙げられる。しかし、この問題点も、制御プロトコルやハイパーバイザ側の改良によって改善される見通しである。
では、スイッチの管理性はどうであろうか。まず、管理対象の数が本質的に多い問題については、多くのベンダーが独自技術で回答を提示している。米Brocade Communications Systems(Brocade)では「Logical Chassis」技術を提供する。これは、複数台の物理スイッチを論理的に1台のスイッチとして管理できるようにして管理工数を削減する技術である。
Logical Chassisでは、「個別のスイッチにログインして設定する」ということをしない。論理シャシーから、ファブリック内のすべてのスイッチの設定を行うことが可能である。例えば、論理シャシーに対してファームウエアの更新を行うと、ファブリック内のスイッチに対して1台ずつシーケンシャルに更新されていく。
図5: Logical Chassisのイメージ(クリックで拡大) |
Brocadeでは、サービス・インスタンスのポート・プロファイルと、仮想マシンの稼働位置の対応についても、今日ならではの解を提供している。Brocadeが「Automatic Migration of Port Profile」(AMPP)と呼んでいる技術がそれである。
Virtual Cluster Switch(VCS)では、ファブリック内にあるすべてのVDXシリーズのMACアドレス・テーブルとポート・プロファイル情報が同期されている。つまり、どのスイッチも、ほかのすべてのスイッチに接続されているデバイスを知っていることになる。もし、ライブ・マイグレーションによって仮想マシンがほかのスイッチのポートに移動したとしても、VDXはこれを自動的に検知し、ポート・プロファイルを適用することができる。
上記でも触れた通り、仮想マシンがどこで動作しているのかを管理することは、ネットワーク管理者からすると困難である。これを、AMPPは回避している。ただし、仮想マシンの作成とポート・プロファイル設定を自動連携させる部分については、EVB(Edge Virtual Bridging)の最新動向として説明したVDP(Virtual Station Interface Discovery and Configuration Protocol)がまだ議論中であるため、現時点ではハイパーバイザ連携は提供していない。
ただし、ハイパーバイザ連携がないことは、メリットということもできる。なぜならば、ハイパーバイザ連携がないことと、VDXシリーズが自律的にポート・プロファイルを適用できることから「ハイパーバイザに依存しない」と言えるからである。
図6: Automatic Migration of Port Profileのイメージ(クリックで拡大) |
AMPPを実現している技術は、Fibre ChannelでいうところのName Serverの機能である。VCSを構成する多くの技術は、FC Faric Serviceを拡張して実装されている。FCファブリックはマスターレスな分散構成であるため、ファブリックとしての高可用性も同時に実現している。このことは、特筆すべき事項である。
第3回まとめ
今回は、サービス・インスタンスを高密度実装する際に課題となる、性能面での問題点について、SR-IOV、EVBという解決手法を示し、2011年現在のアップデート情報を解説した。現時点ではまだ実現できていない部分などについて情報をアップデートすることで、正確な期待値を持っていただきたいからである。
また、Brocade VDXシリーズが備えているLogical Chassis機能とAutomatic Migration of PortProfile(AMPP)機能を紹介することで、クラウド時代のデータセンター・ネットワークにおいて問題となる管理性を大きく改善できることを説明した。
次回、最終回となる第4回では、ハイブリッド・クラウドに向けたネットワーク技術の将来にフォーカスし、主にデータセンター間ネットワークの将来像について解説する予定である。