クラウド事業の今後の展望
クラウドビジネスで生き残るために
最後に、今後のクラウドビジネス生き残り戦略についてお話しします。
昨年はクラウド元年であり、いよいよクラウドが本格的な普及期に入ったと言えます。しかしまだまだ序盤戦であり、本格普及のせいぜい数%が進み始めたところです。これからいよいよクラウドへのシフトが本格化していきます。 それはあまり目立たないようですが、背の低い津波のように、既存ビジネスへの破壊力はすさまじいものとなるでしょう。
そのために多くのプレイヤーがクラウド事業に参入してきていますが、その中で生き残るためには他社との何らかの差別化を図っていく必要があります。生き残り戦略のヒントとなるようなものをあげてみたいと思います。
<顧客対応>
当面は各社のサービスにそれほど大きな違いがないため、顧客がクラウドを選定する決め手としては顧客対応が大きな影響を与えるでしょう。お客様が知りたいことの理解、わかりやすい説明、不安の解消など、ソリューション営業的な対応スキルが求められます。この点ではSIer系は有利と言えます。
<広告宣伝>
何はともあれ顧客に情報が届かないことにはサービスは売れません。インパクトのある広告表現、購入ターゲットに届きやすいメディア選びなど、ホスティング系の会社に有利な戦略でしょう。
<クチコミ宣伝>
コスト以外の差別化が難しかった低価格レンタルサーバーと違い、クラウドサービスは機能面や品質面での差別化の余地が高いサービスです。そのような高機能サービスにおいてはクチコミによる宣伝が大きな影響力を発揮します。
特にインフラサービスは長く利用するものであり、顧客も多くの情報を集め慎重に検討をするでしょう。 そこで重要なのが先進ユーザーや信頼できる人からのクチコミ情報です。スポーツ用品メーカーが有名選手に製品を使ってもらうように、 クラウド利用の達人が発信する情報に載せてもらうことが宣伝の最終ゴールと言えるかも知れません(先進企業や有名エンジニアなど) 。
<ニッチ市場>
インターネットによるEC(ネットコマース)が普及してから、ニッチ商品がにわかに高収益なビジネスとなりました。競争相手がいないため価格を下げる必要がないことと、数少ない対象顧客を検索エンジンによって集めやすくなったためです。 これはクラウドでも同じことが言えるでしょう。
メインストリームの技術だけでなく、全体のシェアとしては非常に小さな製品技術でも、それを提供するサービス業者が少なければビジネスとしては十分成り立ちます。
図3:ロングテール |
クラウドでもロングテール理論は成り立つと思います。メジャープレイヤーがカバーできないニッチな市場を狙いましょう。
<OSS利用>
オープンソースソフトウエアは両刃の剣です。クラウドと同じように既存ビジネスを破壊する力を持っています。逆にうまく利用すれば他社との差別化要因にしたり、ソフトウエアライセンスコストを節約したりすることができます。
インターネットブームが起きたころはSPARCサーバー+Solaris+Netscape(Webサーバー)が主流でした。それが現在では、IAサーバー+Linux+Apacheとなっています。OSとWebサーバーにはOSSが一般的に使われるようになり、その分ユーザーはコストメリットを得ることができ、レンタルサーバー事業者も利益を出しやすくなりました。仮想化ハイパーバイザーでもKVMなどが主流になりつつあります。
今後クラウドに付加価値としてOSSのアプリケーションや運用ツールなどを提供していくことがかなり強力な差別化につながるでしょう。
<コンサルティング>
性能チューニング、アプリケーション設計、ビジネス戦略など、クラウドを利用する上で必要となる要素に対するコンサルも今後需要が高まるでしょう。今後どんどん進化する新しいIT技術をお客様に紹介・提案することもクラウドベンダーには求められてくるでしょう。
最後に
これまで4回に亘ってクラウドについて述べてきました。ITコアで実際に行ってきた仮想化ビジネスから得られたノウハウを多く公開させていただいたつもりです。 これからの社会は競争よりも協力・シェアリングが重要であると考えていますので、今後もできるだけノウハウの公開を行っていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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