vCenter Lab Managerのメリット

2011年9月6日(火)
福留 真二

Lab Managerの機能(1)―セルフサービスポータルの提供

先述したとおり、Lab ManagerはvCenterにはない便利な機能を持っています。以下では、Lab Managerの持つ代表的な機能を紹介します。

Lab Managerは、ユーザーに対して仮想マシンのデプロイ(展開・運用)するためのポータルサイトを提供します。ポータルサイトとは、一般的にはYahooやGoogleなど、インターネットを利用する際に最初にアクセスするWebサイトのことを意味しますが、ここではVMware社によって構築されている仮想環境を利用するための入り口となるWebサイトのことです。

図2:ポータルサイト(クリックで拡大)

ユーザーは仮想マシンが必要になったときに、このポータルサイトにアクセスすることで、仮想マシンを自由にデプロイできます。この機能によるメリットをポータルサイトがある場合とない場合とで比較してみましょう。通常のvSphereの環境では、仮想マシンをデプロイするには、vSphere Clientを使用してvCenter Serverにアクセスします。vCenterへのアクセスをすべてのユーザーに許可するのであれば問題ありません。しかし、ほとんどの場合において、vCenterへのアクセスはその仮想環境の管理者のみに制限されています。そのような制限をかけることで、ユーザーがvCenterに勝手にアクセスし不要な仮想マシンを大量に作成することや、vSphereの構成を変更してしまうリスクから守ることができるのです。このことは逆にいうと、ユーザーは自由に仮想マシンを作成する権限を持っていないことを意味します。それではユーザーは必要なときにどのようにして仮想マシンをデブロイするのでしょうか? それは物理環境を利用しているときと同様で、以下のプロセスを踏むことが多いでしょう。

図3:ユーザーの仮想マシン利用までの流れ(クリックで拡大)

管理者としてはこのような手順を踏ませることで、ユーザーにより無造作に仮想マシンが作成され、無駄な仮想マシンが乱立し、リソースの無駄遣いをしてしまうという状況を防ぐことができます。一方、ユーザーの立場としては、物理マシンを使用しているときと同様の手順を踏まないと仮想マシンを利用できません。ユーザーとしては必要なときに即座に仮想マシンをデプロイできることが理想といえます。

このように管理者の理想と、ユーザーの理想のギャップが存在しているのが通常の仮想環境です。このギャップを解消してくれるのがセルフサービスポータルです。ユーザーはセルフサービスポータルにアクセスすれば、仮想マシンをすぐにデプロイできます。一方、管理者はユーザーが使用できるテンプレートは事前に設定しておくことが可能です。そうすることでユーザーは許可されたテンプレートから自由に仮想マシンをデプロイすることが可能になります。許可されていないテンプレートから仮想マシンを作成することはできないため、ユーザーに対して必要なテンプレートのみ公開できます。また、クオータの設定で、作成させる仮想マシンの台数の上限を設定できます。ポータルサイトを利用すると、以下のような手順になります。

図4:ポータルサイト利用時の仮想マシン作成の申請(クリックで拡大)

このように、管理者は事前にユーザーに対して自由に使用してよい範囲を定義しておきます。ユーザーは許可された範囲で自由に仮想マシンを作成できるようになるのが、セルフサービスポータルの大きなメリットです。

株式会社ネットワールド

株式会社ネットワールド所属。VMwareを中心とした仮想化関連製品のプリセールス、サービスデリバリーに従事。トレーニングやセミナーなどでスピーカーを担当することもしばしば。
最近注力しているのは、VMware vCloud Directorなどクラウド関連製品。慣れない概念や聞いたことのない用語と悪戦苦闘する毎日。地方から出てきたITを使いこなせないアナログSEで苦手なものは機械全般。

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