vCenter Lab Managerのメリット
Lab Managerの機能(3)―ネットワークフェンシング
ネットワークフェンシングは、同一ネットワーク上に同一のネットワーク情報(IPアドレス、ホスト名)を持つサーバを存在させる機能です。リンククローンなどの機能があれば仮想マシンの複製は容易になり、開発・テストの利便性は格段に増します。しかし、クローンを行ってもすべての情報をクローン元とクローン先で同一にすることは困難です。それはIPアドレス、ホスト名といったネットワーク情報は基本的に同一ネットワーク上で固有である必要があるためです。
図6:ネットワークフェンシングのない環境(クリックで拡大) |
しかし、IPアドレスを変更することで、アプリケーションに影響が出る場合があるため、開発やテストを行う側から見ると、ネットワーク情報を変更せず、クローンで作成された仮想マシンを利用したいケースもあります。それを可能にするのがネットワークフェンシングです。ネットワークフェンシングは、同一ネットワーク上にまったく同一のネットワーク情報を持つ仮想マシンが存在することを可能にします。Lab Managerでは、ネットワークフェンシングを利用すると自動的にESX上に仮想NATルーターを作成します。その仮想NATルーターが各仮想マシンに外部向けのIPアドレスを提供します。外部のネットワークには、それぞれ固有のIPアドレスが割り当てられるため、ネットワーク情報が競合するといった問題は発生しません。このとき、当然OS上に変更は行われません。また、外部向けのIPアドレスの割り当てはすべて自動で実施するため、ユーザーは追加作業を行う必要はありません。ただし、ネットワークフェンシングの設定を行えば利用可能です。
図7:ネットワークフェンシングを利用した環境(クリックで拡大) |
◆◇◆◇ コラム:ホストスパニングについて ◆◇◆◇
ネットワークフェンシングを行えば、同一のネットワーク情報を持つ仮想マシンの複数セットを作成できるようになり、非常に便利です。しかし、ネットワークフェンシングには制約もあります。それはネットワークフェンシングを使用するコンフィグレーション(Lab Managerが管理する仮想マシンのグループ)内の仮想マシンは、すべて同一のESX(i)上に存在しなければならないという点です。この制約により、vMotionやDRSの機能がありながらも、利用できないことになります。Configurationには、通常、複数の仮想マシンが存在するため、すべての仮想マシンが同一のESX(i)上で動作すると1つのESX(i)の負荷が高くなってしまうケースが想定されます。
最新のLab Manager4では、この制約がなくなりました。ネットワークフェンシングを利用している場合でも、Configuration内の仮想マシンが別々のESX(i)上で動作することができます。これを、ホストスパニングといいます。当然、vMotionで別のESX(i)に移動することも可能です。これには条件があり、ESX(i)上の仮想スイッチがvNetwork Standard Switch(以下vSS。仮想スイッチ)ではなく、vNetwork Distributed Switch(以下vDS。仮想分散スイッチ)で構成されている必要があります。vDSは、Enterprise Plusという最上位のライセンスでのみ使用可能です。
上記のようにネットワークフェンシングを使用する場合でも、vMotionなどを使い、リソースを効率的に使いたいケースでは、vDSの利用を検討してみてはいかがでしょうか。