陸上自衛隊の富士総合火力演習と、ネットワーク連携する最新式の「10式戦車」を見る

2012年9月6日(木)
Think IT編集部

装備品展示で見た戦闘車両と航空機の数々

後段が終わり、全ての装備・隊員が撤収した後、40~50分たってから、本日の主役たちが再び演習場に現れた。自走式りゅう弾砲や先頭車両、輸送ヘリや戦闘ヘリ、戦車が展示され、見学者は近くまで寄って写真撮影ができる。

開始時間が少し遅れたため、正味の時間は40分ほどしかなかったが、なんとか一通り見て回ることができたので、全てではないが紹介する。

93式近距離地対空誘導弾 88式対地対艦誘導弾
87式自走高射機関砲 遠隔操縦観測システム
多連装ロケットシステム 軽装甲機動車
96指揮装輪装甲車 対戦車ヘリAH-1S コブラ
戦闘ヘリAH-64D アパッチ・ロングボウ 多用途ヘリコプターUH-60JA ブラックホーク
輸送ヘリコプターCH-47JA チヌーク 施設作業車
10式戦車_前部 10式戦車_後部
74式戦車と宮原氏 90式戦車
89式装甲戦闘車 展示された数々の装備

陸自の最新戦車が持つ「C4I」システムによるネットワーク連携とは

今回最も注目されたのが、平成23年度から配備が開始されたばかりで、総合火力演習では初のお目見えとなる陸自の最新式戦車「10(ヒトマル)式」だ。

この10式最大の特徴は、先代の90式までにはない、戦車同士のネットワークによる連携を可能にする「C4I」システムの搭載で、刻一刻と変わる戦況や、敵戦車の情報、味方の位置などを共有することが出来る。複数台で射撃の統制をとるなど、より高度な作戦行動も可能になった。

走行しながら射撃体勢に入る10式戦車

作戦の一例としては、先行した10式戦車が敵部隊の情報を入手し、それを後続の10式戦車に送信する。後続の10式戦車は送られてきた情報から敵部隊の位置を把握し、旋回走行によって攻撃を避けながら、進攻しつつ目標を的確に狙い撃つ、といった具合だ。

ちなみに、C4Iとは「Command、Control、Communication、Computer、Intelligence」の略称で、別に自衛隊だけのものではなく、世界的な軍隊用の情報処理システムを指す。旧来の概念「Command(指揮)」、「Control(統制)」に加え、電気通信の発達による「Communication(通信)」や情報理論の発達による「Intelligence(インテリジェンス)」が徐々に加わり、80年代のコンピュータの高性能化によって「Computers」が加わりC4Iと呼ばれるようになった。現在も進化を続けている。

10式戦車単体の動きを見ていても、演習場を縦横無尽に走り、左右に旋回走行しながらのスラローム射撃や、射撃時のブレが小さいことなど、他の戦車よりも基本性能が高いことを感じさせた。

演習後、展示中の10式の近くにいた隊員に尋ねたところ、足回りは路面状況を検知してサスペンションを自動調整することにより、滑るような走行が可能で、90式とは乗り心地が全然違うとのことだった。他にも、C4Iは通常4両単位で運用することが多いが、理論上はいくらでもリンクさせられるということも聞くことができた。

おわりに ~来年にそなえて(?)~

今回、自衛隊のメカニックや射撃デモに対する好奇心でこの総合火力演習を観に行ったことは紛れもない事実だが、日ごろ平和な日本で暮らしている時には体験できない、兵器の破壊力や恐ろしさを知ることができた。10式が戦車砲を発射するのを近くで感じながら、「有事」の片りんと、そうなってしまってはいけないと強く感じたことも事実だ。

あまり堅苦しく考えず、興味がある方にはぜひ見学に行ってもらいたいが、14~15倍の抽選倍率をクリアして運よくチケットを入手できた際は、この時期の強い日差しや気温の上昇に負けないよう、帽子やタオル、日焼け止め、長袖シャツ、補給用の水分を“装備”していく事をお忘れなく。

現地でもらったパンフレットと入場チケット

【関連リンク】

(リンク先最終アクセス:2012.09)

“オープンソース技術の実践活用メディア” をスローガンに、インプレスグループが運営するエンジニアのための技術解説サイト。開発の現場で役立つノウハウ記事を毎日公開しています。

2004年の開設当初からOSS(オープンソースソフトウェア)に着目、近年は特にクラウドを取り巻く技術動向に注力し、ビジネスシーンでOSSを有効活用するための情報発信を続けています。クラウドネイティブ技術に特化したビジネスセミナー「CloudNative Days」や、Think ITと読者、著者の3者をつなぐコミュニティづくりのための勉強会「Think IT+α勉強会」、Web連載記事の書籍化など、Webサイトにとどまらない統合的なメディア展開に挑戦しています。

また、エンジニアの独立・起業、移住など多様化する「働き方」「学び方」「生き方」や「ITで社会課題を解決する」等をテーマに、世の中のさまざまな取り組みにも注目し、解説記事や取材記事も積極的に公開しています。

連載バックナンバー

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています