コピーレフト型と非コピーレフト型OSSライセンスの違いとは?

2014年2月3日(月)
吉井 雅人

非コピーレフト型のライセンス

非コピーレフト型のライセンスの特徴は以下の2点です。

  • ライセンステキストの添付が必要
  • ソースコードを変更したとしても、ソースコードを開示する必要はない

著作者の数だけ存在する!?BSDライセンス

BSD License は1990年に4条項のライセンスとして作成されました。そのため、この最初のBSD Licenseは、original BSD LicenseまたはBSD 4-clause License と呼ばれます。そしていわゆる宣伝条項(ソフトウェアの機能や仕様に言及している広告媒体に謝辞を記載せよとの条項)が撤廃され、3条に減ったのが1999年です。さらに最近は3条項(ソフトウェアから派生した製品の宣伝または販売促進に、著作権者またはコントリビューターの名前を使用してはならない、という意味の条項)も削除した2条のみのBSD 2-clause Licenseを多く見かけるようになりました。現在はこの3条のBSD 3-clause Licenseと2条のBSD 2-clause Licenseが主流です。

BSD Licenseは、固定のライセンス文がなくテンプレートがあるのみという点で、これまでご紹介したライセンスとは異なります。OSSの著作者はBSD Licenseのテンプレートに年号と著作者を入力することで、新しくライセンスを作成します。そのため厳密にはBSD Licenseといっても全く同じものはなく、著作者の数だけライセンスがあります。

BSD Licenseのもう一つの特徴として、派生ライセンスの多さが挙げられます。上で述べたように、BSD Licenseには著作者が必ず手を入れる必要があります。一つ手を入れるともう一つ手を入れたくなるものなのでしょうか、元々のBSD License の条項が少し変更されたり、条項を新たに追加されたりしているライセンスをよく見かけます。後に述べるApache License 1.1も広義ではBSDスタイルのライセンスの一つです。

BSD Licenseは元々FreeBSDなどOSに使われていたライセンスですが、Web系のコンポーネントなどでも用いられることも多く、どの分野でも広く使われています。派生ライセンスも含めると目にする機会が非常に多いですので、それぞれのBSD N-clause License(Nは2、3、4いずれか)を覚えておくと、非常に役に立ちます。

JavaScript系のOSSで多く利用されているMITライセンス

MIT Licenseはマサチューセッツ工科大学により1980年台後半に作成されたライセンスです。非常に条文が短いライセンスとしても知られています。BSD Licenseと同様にこのライセンスもテンプレートが用意されているだけですので、OSSの著作者は著作者と年号を記述する必要があります。歴史が古くシンプルでわかりやすいライセンスのため、いろんな分野のOSSに適用されています。特にJavaScriptの言語で実装されたOSSでよく利用されています。

Androidなど、Java言語のOSSに適用されているApacheライセンス

Apache Licenseは、Apache Software FoundationでリリースされているコンポーネントやAndroidに適用されているライセンスです。Apache Software FoundationからはJava言語で実装されたOSSが多数リリースされているということもあり、Java言語のOSSに適用されていることが多いです。またAndroid周辺の小規模なOSSにこのライセンスが適用されていることもあります。

現在Apache Software Foundationから公開されているOSSにはすべてApache License 2が適用されています。ただし、筆者がソフトウェアの検査をしていますと、2004年以前の古いバージョンのライブラリがそのまま利用されている、というケースもたまにあります。この場合のライセンスはApache License 1.1になるため、開発者の方(特にJava使いの方)は2だけ知っていればよいということにはならず、やはり1.1と2の違いは押さえておくべきでしょう。1.1にはエンドユーザードキュメントに"This product includes software developed by the Apache Software Foundation (http://www.apache.org/)."の文言を要求する条項があります。2.0ではこの条件はなく、新たに特許についての条件が追加されています。

今回紹介したタイプ別の主なOSSライセンス

最後に、今回紹介した主なOSSライセンスとそのタイプを一覧で紹介します。

ライセンスのタイプ 主なOSSライセンス 特徴
コピーレフト型
  • ライセンステキストの添付が必要
  • 改変した(コピー&ペーストも含む)ソースコードの開示
  • 組み合わせて利用した場合、対応する部分のソースコードの開示
準コピーレフト型
  • ライセンステキストの添付が必要
  • 改変した(コピー&ペーストも含む)ソースコードの開示

非コピーレフト型

  • ライセンステキストの添付が必要
  • ソースコードを変更したとしても、ソースコードを開示する必要はない

今回はよく利用されているOSSライセンスそれぞれの特徴を説明しました。最終回となる次回はOSSライセンスの最新の動向をご紹介します。また、ライセンステキスト添付の具体的な方法や、特殊なツールを使わなくともできるライセンスのチェック方法など、読者の皆さんがすぐに始められるOSSライセンス順守実践テクニックをご紹介します。

株式会社 オージス総研

2007年 オージス総研に入社。アーキテクチャの開発、ITシステムのパフォーマンス改善などを実施。
2008年以降、OSSソフトウェア検査、OSSライセンス教育、OSSガイドライン作成など、OSS の活用促進と適正利用を目的としたソリューションに従事。

連載バックナンバー

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています