フラッシュストレージioDriveの様々な活用法
2014年3月18日(火)
フラッシュストレージのメリットは高速化だけではない
PCIe接続型のフラッシュストレージioDriveは、IOボトルネックを取り除き、アプリケーションの速度を大幅に向上させます。しかし、「今手がけているシステムではパフォーマンスに問題があるわけではなく、ioDriveなんて高価なものは必要ない」と思われる方が少なくないかもしれません。
実は、ioDriveのメリットはアプリケーションの高速化だけではありません。コスト削減の手段としても多く使われています。
今回はioDriveのメリットを最大限に引き出すための構成例とそれを支援するソフトウェア製品について紹介します。
データベースでの例:SANストレージ構成からミラーリング構成へ
企業ユーザの場合、データベースをSANストレージで構成されているケースが多いのではないでしょうか。SANストレージは一般的に高信頼の製品ですが、価格が比較的高く、SANを用意する必要があります。これはコストを増加させている1つの要因でもあります。
そこで、サーバ内のローカルストレージだけで実現できるミラーリング構成に変更します。ミラーリング構成はレプリケーションのオーバーヘッドがかかるため、性能が落ちると思われがちですが、ioDriveを使うことで簡単に克服できます。
あるユーザ企業では、Oracle RACとディスクベースの共有ストレージを使用したクラスタ構成でシステムを構築されていました。Oracle Data GuardとioDriveを使用したシステムに構成変更したところ、同期レプリケーションを実行しているにもかかわらず、トランザクション時間が20倍以上高速化しました。しかも、共有ストレージ・SANを排除することで、システムコストを大幅に削減されました。
また、ミラーリング構成を取ることで、可用性を高めることも可能です。MicrosoftのSQL Server 2012で搭載されたAlwaysON可用性グループは、ミラーリング構成を取りながら、高い性能・可用性を提供する機能です。従来のWindows Server フェールオーバクラスタリング構成と比べて、短いフェールオーバ時間を実現しています。さらに、ミラーリング先のセカンダリサーバでは、データベースをアクティブにすることができるため、バックアップ操作をセカンダリにオフロードしたり、読み取り専用でオープンしてOLAPサーバとして使用したりすることが可能です。
実際の企業ユーザの事例では、SANベースのディスクを使用したSQL Serverシステムを、ioDriveを使用したAlwaysON可用性グループを使用したシステムに変更することで、フェールオーバ時間を14秒に抑えつつ、DBのメンテナンス時間・バックアップ時間を約10倍に高速化できました。さらに、これまではOLTPと同一サーバで稼働させていたOLAP処理を、AlwaysONのリーダブルセカンダリ機能を用いて セカンダリサーバにオフロードさせることで、OLTPの性能を損なうことなく、いつでもレポーティングやメンテナンス処理を実行させることが可能になりました。
図1 SQL Serverでのユーザ事例:AlwaysOnとioDriveで実現する高速・高可用性データベース(クリックして拡大)
仮想化によるサーバ集約
既存のサーバを仮想化して集約することで、システムコストを削減するケースも多いと思います。しかし、CPUやメモリが余っていても、SANや外部ストレージがボトルネックとなり、仮想マシン(VM)の集約率がなかなか高められなかったりするのではないでしょうか。ioDriveを使用すれば、さらに集約率が高まり、コスト削減を進めることが可能です。
仮想化環境でioDriveを使用する場合、ローカルストレージとして利用している限りはHAやライブマイグレーションの機能が利用できないため、仮想化のメリットを100%発揮できません。そこでFusion-io社が提供しているioTurbineキャッシングソフトウェアを使用し、ioDriveを共有ストレージのキャッシュ(サーバサイドキャッシュ)として利用します。
ioTurbineを使用すると、外部ストレージ・VM間でやり取りしたデータは自動的にioDriveにキャッシングされます。VMが同じデータにアクセスした際は外部ストレージではなく、ioDriveからデータが返送されるので、IO性能を飛躍的に向上させることができます。さらに、これまで外部ストレージ側で処理していたリード処理をioDriveにオフロードできます。そのため、外部ストレージがライト処理に専念できるようになり、ライト性能も向上させることができます。
あるオンラインショップ企業では、ioTurbineを使用することでWebページの読み込み時間を5分の1に短縮させつつ、ESXのホスト台数を20台から8台に削減させることに成功しました。また、外部ストレージ側の負荷が減ったため、ディスクを追加することなく、将来のシステム拡張に備えることも可能になりました。
なお、ioTurbineは、IBMよりFCSA(Flash Cache Storage Accelerator)という名前でOEM提供しているため、ソフトウェアの保守も一括してIBMより受けることが可能です。
図2 ioTurbineのアーキテクチャ(クリックして拡大)
VDIでの利用例
仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)でioDriveを活用する構成も一般的になりつつあります。VDIは多数のデスクトップ端末の管理工数を大幅に削減できる一方、外部ストレージやSANのIOボトルネックが発生し、パフォーマンスが一気に劣化するなど、 深刻なトラブルを招きやすくなっています。
ioDriveに仮想デスクトップイメージを格納すれば十分なIOPS性能を仮想デスクトップに提供できます。ステートレス環境での構成例は、以下の図3のようになります。ioDriveにレプリカおよびリンククローンイメージを配置し、ユーザドキュメントなど永続化が必要なファイルのみ外部ストレージ側に配置します。このような構成をすることで、ほとんどの負荷をioDriveが処理して高い性能を提供する一方、外部ストレージは容量ベースでサイジングが可能なため、ストレスフリーなVDI環境を構築でき、さらにコストを大幅に削減できます。実際のところ、外部ストレージを使用した構成と比べて約半額の費用でVDI環境を構築できた事例があります。
またFusion-io社は2月に実施されたVMware Partner Exchange 2014にて、ステートフル環境においても低価格・高性能で実現できるソフトウェアioVDIを発表しました。最新情報はFusion-io社のWebサイトで随時紹介しています。ご期待ください。
図3 ステートレスVDIでの構成例(クリックして拡大)
共有ストレージでの利用例
Fusion-io社が提供しているioNデータアクセラレータを使用すると、ioDriveを搭載したサーバを共有フラッシュストレージとして利用することが可能になります。ioNは各サーバベンダから販売されている汎用サーバにインストールできるため、非常に安価で高速な共有フラッシュストレージが構築可能です。
SANストレージ構成からミラーリング構成への変更や運用方法を変えるのが難しい場合、仮想化環境で高速な共有領域として使いたい場合、VDI環境でレプリカイメージを保存してブートストームに対応したい場合など様々な用途で利用できます。
特にOracle と併用されるケースが多いようで、採用しているシステムもミッションクリティカルなものが多くなっています。Fusion-io社のWebサイトでは、OracleのCARIBRATE_IOを使用したベンチマーク結果として、 DELLサーバを使用したioNを利用することにより、Oracle Exadata と同等の性能を、半分のラックサイズと半額のデータベースライセンスコストで実現できるという検証結果を公開しています。
図4 ioNを使用した共有ストレージとしての利用例(クリックして拡大)
このように、ioDriveはアプリケーションの性能向上だけではなく、大幅にコスト削減が可能な製品となっています。今回紹介した構成やソフトウェア製品を活用することで、皆さまの手がけているシステムのコスト削減につなげられれば幸いです。
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