新人社員が複数の部門システムに関わり学んだ運用の重要性
企業経営に不可欠なシステム運用とキャリアパス
今やシステム運用は企業経営に欠かせない要素となり、これらへの適切な投資は経営戦略の成否に直結する。インターネット黎明期からしばらくの間、システム無停止に対する脅威は、ハードウェアやアプリケーションに起因する障害であり、その排除に心血を注ぐことによって一定の成果をあげた。
しかし近年は、オペレーションミスや外部からの攻撃による停止、自然災害によるシステム運用体制の崩壊に加えて、内外からの悪意あるアクセスによる情報漏洩など、継続的かつ安全なシステム稼働の実現に対する懸念は、年々増加する一方だ。実際に、システム停止や情報漏洩によって損害を被った例は枚挙にいとまがなく、システムの立て直しやユーザーへの補償などによる金銭的な損失は膨大になる。
2011年3月15日に発生した、みずほ銀行のATMシステム障害は記憶に新しい。この際の、障害発生時の振込手数料無料化、迷惑を被った利用者に対する補填、ATMの計画停止に伴う損失、システム改修費用などを合計すると、100億円に近い損失を計上したと言われている。
それにもまして、顧客や株主の信頼を失ったことは、目に見えにくいが企業にとってより重大な損失である。システム停止を未然に防ぎ、仮に発生したとしても、可及的速やかに復旧させることだ。これは、企業戦略の中心に位置すべき経営課題とさえ言える。
システム運用担当者のキャリアパスとは
IT運用利用企業の経営者のなかで、システム運用に精通している人物はどの程度いるだろうか?
これだけ事業損益に直結する課題であるにもかかわらず、それを理解して、事業戦略にとり込んでいくことができる経営者は少ないのが実状だ。適切なシステム拡張や刷新のタイミングがわからないため、その実施は、経営状況に左右される。業績が悪いときは、期中の予算執行を停止することによって支出を抑え、良いときは、期末の駆け込み執行に目をつむる。結局、予算を立てる時点で、すでに失敗しているのだ。
もはや、経営者の資質としてシステム運用の知識は必須となった。そのため、キャリアパスにシステム運用の業務を含めることは、当たり前の時代なのだ。しかし、これらを担うべきシステム運用担当者にその覇気はない。
一般に、将来の企業幹部を嘱望される人材は、様々な部署を渡り歩くが、システム運用部門を通過することは稀だ。たとえあったとしても他部署の席が空くまでの腰かけで、良い椅子が見つかれば、そちらへあわただしく異動してしまう。他方、システム運用部門では、一旦配属されると異動は少なく、「上を見てもせいぜいが部門長なのだから…」となってしまう。これでは、やる気を維持するほうが難しい。
とは言うものの、ここでシステム運用担当者の救済を求めているわけではない。システム運用を、本来の「企業のビジネス規模に応じたサービスが提供できるよう、システムのライフサイクルを管理する」形へ切り替え、これらを経験することを、社員のキャリアパスのひとつとして組み込んでいけば、問題は自然と解決に向かう。
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