RHEL7やOpenStackなど最新技術が集結するRed Hat Summit 2014 現地レポート(後編)
ハンズオン・ラボ演習(Red Hat Storage関連)
Red Hat Storageのハンズオン・ラボ演習は、最新のRed Hat Storage 2.1 Update2を使って行われました。Red Hat Storageは分散ストレージ基盤ですので、本番環境は複数の物理サーバーを並べて、10GbEスイッチ等の高速なネットワーク機器に接続された構成で構築されますが、ハンズオン・ラボでは、1人1台の物理マシンを利用し、Red Hat StorageがKVMのゲストOSとして準備されていました。それら複数のゲストOSを使ってRed Hat Storageの構築を行うようになっていました。
Red Hat Storageによる分散ストレージ基盤構築の基礎のハンズオン・ラボ演習では、主に以下の内容について演習に取り組みました。
- XFSファイルシステムの利用方法
- Red Hat Storageノードの登録方法
- ボリュームの作成、マウント方法
- ボリュームのオンライン拡張とリバランス
- レプリケーションによる災害対策 等
さらに、データ保護の観点でのRed Hat Storageの設定に関するハンズオン・ラボ演習が別途設けられており、中上級者向けの内容になっていました。
- ボリュームの暗号化とマウント
- ファイヤーウォールの設定
- レプリカボリュームの設定
- Swiftと暗号化、アクセス制限
- キャッシュ(memcached)の利用
- HTTP(REST API)でファイルをGETおよびPUTする
中上級者向けの演習では、Red Hat Storageのファイルシステムレベルでの暗号化によるデータ保護の必要性が理解できるようになっていました。災害対策では、遠隔地へのレプリケーションが必要になる場合が少なくありませんが、その場合のデータの暗号化通信とファイルシステムレベルでの暗号化を組み合わせることで、強固なデータ保護を実現できることがこの演習でわかるようになっていました。
ハンズオン・ラボ演習(Red Hat Enterprise Linux 7関連)
Red Hat Enterprise Linux 7関連では、Linuxコンテナー「Docker」によるLAMP環境構築のハンズオン・ラボがありました。演習内容は、以下の通りです。
- Dockerの基本コマンドの理解
- 以下のサービスをコンテナーで稼働
- 話題の軽量Webサーバー「nginx(エンジン・エックス)」
- OSSデータベースとして注目を浴びる「MariaDB」
- ウィキペディア・サイトで採用されていることで有名なOSS「Mediawiki」
- Mediawikiが稼働するコンテナーとMariaDBが稼働するコンテナーの連携
systemdの基礎、障害対応、新しいログの仕組みの基礎を学ぶことできるハンズオン・ラボが用意されており、初心者でもわかりやすいハンズオン・ラボガイドが用意されていました。典型的なApache Webサーバーのサービスをsystemdで管理し、ログを閲覧する最低限のコマンドを知る良い機会になりました。
- Apache Webサーバーをsystemdで管理
- firewalld及びiptablesによるファイヤーウォールの管理
- OS起動失敗時のトラブルシュート
- journalctlコマンドを使ったログの管理
RHEL7では、journalctlでOSの各種ログを管理します。ログは運用や監視に大きく影響しますので、RHEL7の導入を検討されている方は、従来のsyslogとjournalctlの差に注目しておくことをお勧めします。RHEL7は、RHEL6と比べ、ログだけでなく、システム管理の方法が大きく異なりますので、Linux OSの管理者は、RHEL7 RC版をダウンロードし、早めに慣れておくことをお勧めします。
Red Hat Summit 2014の全体を通じて
今回、Red Hat Summit 2014は、革新的な変化がみられるRHEL7が大きな目玉であることは間違いありませんが、それだけでなく、製品を跨いで、OSSクラウド基盤、ビッグデータの先進的な取り組みが幅広く行われているのが印象的でした。具体的には、IaaS基盤おいて、RHELOSPの機能拡張だけでなく、Red Hat Storageとの連携を強く意識しているという印象を受けます。また、ビッグデータにおいては、Red Hat社CEOのジム・ホワイトハースト氏やCTOのブライアン・スティーブンス氏の基調講演でも言及されていましたが、Red Hat StorageとHadoopの連携も強く意識されています。
さらに、OpenStackへのHadoopの配備を簡素化するSaharaプロジェクトのような先進的な取り組みも見逃せません。展示ブースでは、コミュニティの活動やOSSクラウド、ビッグデータ、開発ツール等、バラエティーに富んだ多くの製品・技術情報が得られるサミットであり、OSSに携わる営業系SEや開発者にとって有意義なイベントであることは間違いありません。来年は米国ボストンでの開催が予定されています。進化の速いOSSの最前線をRed Hat Summitで体感してみてはいかがでしょうか。
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