米トレジャーデータ IoT事業を中心に「トレジャーデータサービス」の導入拡大を目指す
ビッグデータを基盤にクラウド型のデータマネジメントサービス(DMS)「トレジャーデータサービス」を提供する米トレジャーデータ社は6月4日、国内における事業戦略発表会を開催した。
トレジャーデータサービスは、ビッグデータの収集・保存・分析をワンストップで提供するもの。従来までのDWHと比較して短期間で導入できるほか、初期投資費用を低く抑えられる、運用管理に特殊なスキルを必要としないなどのメリットがある。
導入企業の増加は信頼の証し
発表会では、初めに米トレジャーデータCEOの芳川裕誠氏が登壇し、「この1年の実績と今後の事業戦略」について説明した。まず国内実績としてヤフー、パイオニア、博報堂、良品計画、クックパッド、すかいらーくなどの有名企業が同社のトレジャーデータサービスを導入したことを紹介。「企業に保存されているデータ件数は18兆、1社が保有するサーバー数は最大4,000台、1秒間に保存されるデータ件数が50万と言われる中で、トレジャーデータのビッグデータ処理を信頼していただいた結果だ」と胸を張る。
一方で世界市場における実績では、2015年1月にベンチャーキャピタルより総額1,500万ドル(日本円で約17億7,450万円)の追加投資を受け、主にアジアを中心とした海外版図拡大のためソウルに支社を設置。さらにNasdaq上場企業からCFOを招へいしたほか、グローバルでの人材採用も積極的に行った。これは、トレジャーデータが上場を目指す戦略の一手だ。「海外進出に先立って韓国に支社を設置し、新たなCFOも迎えた。これで成長を加速する準備が整った」(芳川氏)。
日本国内の事業において、トレジャーデータはこれまでデジタルマーケティング領域やアドテク業界、ゲーム業界において広く導入されてきた。これらの実績を足掛かりに今後はIoT分野における事業展開を強化していくという。
芳川氏は「ビッグデータ分析は前段階に手間とコストが掛かり、なかなか始められない。トレジャーデータの領域はこういった企業を手助けすること」とした上で、これからは企業のIT部門ではなく、エンドユーザー部門と直接取引しトレジャーデータサービスのビジネスを推進していくと語った。
トレジャーデータはビッグデータ3大問題の最適解
続いて、米トレジャーデータCTOの太田一樹氏が登壇。太田氏は世界最大規模(登録者数1,700人超)とも言える「Hadoopユーザーグループジャパン」の創設者で、ビッグデータ分析・活用に一家言あるエンジニアだ。
太田氏は、トレジャーデータの技術戦略について発表。まず、ビッグデータ活用においては、解決が難しい3大問題があるという。
- 人材を確保できない(特に非IT系企業)
- プロジェクトに時間がかかる(投資しにくい)
- クラウドの初期投資がかさむ
「これらの問題を解決するためにトレジャーデータがある。トレジャーデータサービスは大量のデータをデータ構造に関わらず簡単に収集・分析できるプラットフォーム」であり「世界にひとつだけだと思っている」と強調する(太田氏)。
こういった問題を抱える企業にとって、トレジャーデータがこだわってきたデータ収集のノウハウがマッチした形だ。ビッグデータ分析の現場では、全体の7割にも及ぶ時間がデータ収集に浪費されていた。このようないわゆる「泥臭い」「やりたくない」作業を担い、数分でデータ収集を実現できたことでトレジャーデータの成長がある。
太田氏は「我々は、みなさんがあらゆるデータをトレジャーデータサービスに入れることで、データをさまざまな場所に繋げる『ハブ』としての役割を果たしていきたい」と今後のデータ活用における技術戦略を示して締めくくった。
事業の中心はデジタルマーケティングとIoT
最後に登壇したのは、株式会社トレジャーデータ代表取締役社長の三橋秀幸氏。三橋氏は、トレジャーデータ社が注力するIoT関連事業の展開状況について説明した。
まず三橋氏は、「トレジャーデータがどのような分野であればIoTを有効活用できるかを考え、積極的に推進していきたい」とした上で、次の3つの分野を示した。
- 新たなマーケティング⇒利用状況の把握、商品企画
- Quality of Lifeの向上⇒安心・容易・安い・便利
- 製造現場のカイゼン⇒高効率化、品質向上
三橋氏は、「新たなマーケティング」として、組み込みシステム開発のアットマークテクノ社と協業し、ログ収集ツール「Fluentd」を組み込んだIoTゲートウェイと連携してセンサーデータをトレジャーデータサービスに集積するソリューションを紹介。このほかにも、センサーデータを活用した3Dプリンターの予防保守、回転数の実績値を分析して風力タービンの予防保全を行う事例などを紹介した。
「今後も国内ユーザー企業へ導入支援を強化していくとともに、できる限り先進企業の事例を公開してマーケティングを推し進めていきたい」(三橋氏)としている。
Hadoopの牙城を崩すか!? リクルートグループの導入を発表
発表会の最後に、6月4日付で株式会社リクルートライフスタイル、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ、株式会社ブログウォッチャーの3社が新たにトレジャーデータサービスを導入したことが発表された。
リクルートグループは、ビッグデータの分野でHadoopによる運用・管理を自社で行ってきたことで有名だ。その中で一部とは言えグループ企業でトレジャーデータサービスが導入されたことは、大きな一歩を記したと言えるだろう。
株式会社リクルートライフスタイル、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ両社は、トレジャーデータサービスを採用した理由として「大量のデータを収集・保管しながら、利用者の要件の多様性にも柔軟に対応し、短期間でのデータ分析が可能なトレジャーデータサービスの特徴を高く評価した」としている。
また同日、トレジャーデータサービスのユーザー会の発足も発表され、上記リクルートグループ3社の導入事例などが紹介された。
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