Apple TVに音声認識、タッチ操作、tvOSが備わった
アップルのCEO、ティム・クックが今月9日にサンフランシスコで催されたイベントで、TVはここ数十年大きく変わっていないといった事は正しい。我々は今でもTVの前に座り、見たいものが見つかるまでチャンネルを回し続けている。
だが一つ変わったことがある。チャンネル選びは昔ほどシンプルではなくなったことだ。実のところ我々はあるタイトルやキーワードで番組を探している。このプロセスは全く胸の悪くなるものであり、かつてはボーっとしていられたものが今ではイライラすることも多くなった。
アマゾン、グーグルおよび他社はこの問題のために音声操作とコンテキスト検索をもってきた。そしてアップルもSiriを使って同等の機能を実装した。
Apple TVはある意味Amazon Fire TV、Amazon Echo、Nexus Playerが一つになったようなものだ。加えてサードパーティー製アプリでかゆいところに手が届くようになっている。
これだけではない。Apple TV用に新しく作られたtvOSとタッチ操作に向いたリモコンも備わり、かつては”遊び”でしか無かったこのデバイスはプラットフォームの一つとなった。
tvOSの登場
Apple TVはこの2年間特に大きな動きをみせてなかった。クックにいたってはこの空白期間について「かなり長い期間真剣に取り組んでおり….」と述べている。
空白期間の主な理由はtvOSによるものだろう。Apple TVのためのこの新しいソフトは幹部のエディー・キューによると、「iOSがベースとなっているが、リビングルームのために特化したもの」ということだ。このOSは新しく出てきたものではあるが、ユーザーはこのために別途ソフトを用意する必要はない。開発者たちはソフトを汎用に用意し、ユーザーはデバイスの種類に関係なくそのソフトを使うことが出来る。
キューによれば、アプリ開発者はiPhone、iPad、そしてApple TVで動くストリーミングやゲームなどのソフトを作ることが出来、あるデバイスで進めてたゲームの続きを別のデバイスやるといった事が可能になるという。
アップルの開発者向けページでは、アプリ製作者はMetalやUIKit、オンデマンドリソースにCloudKitといったキーとなるフレームワークを使うことが出来、Game Centerを使うことでApple TVで動くリッチで見た目のいいゲームを作ることが出来ると書かれている。これらのツールにはtvOS向けアプリ向けにXML/Javascriptを使った新しいテンプレートも含まれる。定義済みのレイアウトやJavascript APIを使う事で開発者はApple TV向けのアプリを素早く作ることが出来るようになる。
キューが言うには、tvOSベータ版はTV向けアプリに取り組んでいる1100万人の開発者に向けて公開されている。
もっとも受付の締め切りは非常に短く、Apple TVデベロッパーキットを手に入れるための登録は太平洋時間で9/11の昼までに終わらせておかなければならない。
SiriがしゃべるTV
Apple TVからもApp Storeが使えるようになったが、他にも変更点はある。Siriによって自然言語が理解できるようになった。例えば「アクション映画の新作がみたい。ジェレミー・レナーが出てるやつだけでいい」といった命令が出来る感じだ。
Amazon Echoも自然言語とそのコンテキストを解釈する事については大変優れており、検索機能も備わっている。Apple TVの場合、Siriがこの役目を担うことになる。番組を見てるときに天気予報やスポーツの得点を確認したりできる。詳細を確認する際はストリーミングは自動的に一時停止される。
Apple Music等のアプリを音声で起動することの他に、Siriでアプリ間をまたがった検索も行えるようになる。Amazon Fire TVでも大々的に取り上げられていた機能だが、出たての頃は第三者のアプリのサポートが非常に限られており、その後もあまり広がりを見せなかった。アップルの場合は手始めにiTunes、Netflix、Hulu、HBO、Showtimeをサポートする。時がたつにつれ、サポートの範囲は広がるだろう。
他にも素晴らしい機能がある。もし俳優のせりふを聞き逃した場合、Siriに言えば15秒巻き戻してくれる。一時的に字幕も有効化されるので、画面でも確認できるというわけだ。
タッチ操作
私は当初、操作の際にろくに見ることもないTVのリモコンにタッチパッドを取り付けるというアイデアはいかがなものかと考えていたが、その真の狙いは今やより明確なものとなった。
スワイプ操作で早送り巻き戻しをしたりできるのは手始めに過ぎない。
リモコンにタッチパッドを取り付けることで、ゲームやTVショッピングのカタログをめくるなどの機能が充実するのだ。リモコンには加速度計およびジャイロスコープが内蔵される。
アップルはユーザーにTVの前でただボーっとしているだけでなく、スポーツの成績を確認するとか、Guitar HeroやDisney Infinityをプレイする、Airbnbで次の旅行の計画を練る、不動産屋で新居を探すなど、TVを使って何かをさせたいということがCrossy RoadとGiltによるデモをみるとよく分かる。
クックは次のように述べている。「TVの未来はアプリにあると我々は信じている。そうした動きはすでに始まっている。」彼はストリーミング動画の60%以上がアップル・デバイス上のアプリで視聴されていることを引き合いに出している。このアップルはTVにもこのエコシステムを広げることで、我々のリビングルームを手中に収めようとしている。
もちろん疑問もある。その目的とするところは一体何か?売上だろうか、もちろんだろう。しかし発表からは見えてこない理由が他にもあるのではないか。これまで様々な予想や噂からApple TVがスマートホームのフレームワーク、HomeKitをサポートすると思われていた。しかし今の所この点について何の話も上がってきておらず、アップルからもサポートするというアナウンスは何もない。
TVのエクスペリエンスについて我々が唯一わかっている事は、既にデベロッパはtvOSで開発を進めることが出来、アップルの公表によると新しいハードを試すことも出来るということだ。10月後半にはコンシューマの元にも届く事になる。32GBモデルが149ドル、64GBモデルは199ドルだ。
この価格で64bit A8プロセッサおよび802.11acにBluetooth 4.0が装備される。後者についてはリモコンが対応しており、操作の為にTVに向ける必要はない。これらを全て前モデルより10mm厚くなったパッケージングに詰め込んだとキューは語っている。
この製品はまず80カ国で販売が開始され、年内で100カ国まで拡大される。だが今の所5カ国語まで対応しているSiriが使えるのは、そのうちの8カ国に留まる。
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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。
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