仮想環境をITILで運用する

2009年12月18日(金)
志茂 吉建

運用形態を段階的に進化させる

仮想化システムの運用を軌道に乗せるコツは、段階的に運用形態を進化させていくことです。以下では、第1回で説明した仮想化の3つのステージについて、少し掘り下げて解説します。

【ステージ1:物理集約(統合)】

ステージ1のゴールは、サイロ型に独立したインフラから仮想化/統合型のインフラへとOSやアプリケーションを集約させることです。

原則として、統合前に実施したサイジング(容量設計)に基づいて物理インフラを統合するので、仮想OSに対するリソースの変更や追加は行いません。

しかし、複数のアプリケーションが1つの仮想インフラに統合された状態となるので、運用管理のやり方は、今までのサイロ型と同じというわけにはいきません。統合インフラ向けの運用プロセスを設計する必要があります。ITILの考慮点を図2-2に記載します。

【ステージ2:共同運用体制確立(標準化)】

ステージ2は、ステージ1に加え、仮想OSの新規追加やリソースの追加割り当てなどを考慮した環境です。ステージ2のゴールは、仮想OSのライフサイクルをサポートする標準的なプロセスを確立することです。

仮想OSの追加や削除を行うので、インシデント管理や変更管理など複数のプロセスをうまく組み合わせた業務設計が重要になります。また、ステージ2ではインフラ・サービス・プロバイダーを意識した設計も行います。つまり、インフラ・サービスの提供者と利用者とに役割を明確に分担します。同じくITILの考慮点を図2-3に記載します。

最適化/自動化で効率化を図る

【ステージ3:さらなる効率化(最適化/自動化)】

ステージ3は、ITIL管理プロセスの意味合いはステージ2と大きく変わりません。しかし、最適なシステム運用を行うための新たな視点が加わってきます。ステージ2で確立した標準化をもう一歩進める形で、システム運用の最適化/自動化を検討します。

最適化というと難しそうに聞こえるかもしれませんが、VMware vSphereのオプション機能であるDRS(Distributed Resource Scheduler:分散リソース・スケジューリング)機能などを利用することにより、仮想OSの配置の最適化なども自動的に行うことが可能です。

第2回で説明した監視ツールなどをうまく利用することにより、監視やイベントに付随した作業などを自動化して、作業効率を向上することも可能です。最適化/自動化は、ツール類をうまく活用することがポイントになります。

また、高価な運用管理ツールを用意しなくても、仮想マシンの電源オフ/オンなどの機能は、VMware vSphereのAPIを利用することで、PerlスクリプトやWindows PowerShellスクリプトなどでも実装できます。

伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)では、「TechnoCUVIC」というSaaS型のホスティング・サービスを提供しています。vCenter Serverや既存の監視ツールを組み合わせて運用していますが、一部vSphere APIを利用して運用を自動化しています。具体的には、Webポータルを利用したユーザーからの作業依頼のオペレーションを、vSphere APIを使って自動化しています。

仮想インフラにおいて、もっとも標準化を推進しやすいのはシステム構成です。システム構成が標準化できれば、作業手順書なども共通化できます。作業手順書を共通化したあとは、自動化の実装について検討することになります。このように、システム運用を最適化/自動化するポイントは、標準化/手順化にあります。

次ページでは、運用主体や組織の視点から、プライベート・クラウドとアウトソーシングの使い分けについて解説します。

株式会社未来科学応用研究所

1996年にシーティーシー・テクノロジー株式会社に入社。プラットフォーム、ストレージ、ミドルウェア関連のサポートやプロフェッショナルサービスに従事。2007年下半期から、VMware仮想化関連のサービス開発やコンサルティングなどを担当。2011年に仮想化関連書籍などを共同執筆。2013年4月から株式会社未来科学応用研究所を設立し、仮想化/OSSコンサルタントとして活動中。

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