仮想環境をITILで運用する
プライベート・クラウドとアウトソーシング
“プライベート・クラウド”という言葉を何度か聞かれたことがあるのではないでしょうか。プライベート・クラウドとは、企業内で利用される仮想化インフラを差すことが多いと思います。プライベート・クラウドは共同利用となるため、ITILプロセスをうまく活用しながら、前ページで解説した仮想化の3つのステージを確実に進んでいくことが重要です。
プライベート・クラウドの実践には、システム運用業務が非常に重要です。適切な運用業務を行うためには、情報システム部門内で仮想化インフラ環境の知識を身に付けたエンジニアをじっくりと育成していくことが必要となります。一方、コスト面を考慮して外部のクラウド・サービスを利用するのも1つの方法です。しかし、セキュリティ要件などから自社内でクラウドを用意して業務部門にサービス提供を考えているユーザーも多いのではないでしょうか。
アウトソーシング・サービスを利用することは、プライベート・クラウドの運用負荷軽減という課題に対する解の1つです。CTCでは仮想化運用アウトソーシング・サービス「RePlavail」を2009年10月から提供しています(図3)。また、これに合わせて仮想化インフラの設計や運用プロセスの設計など、高付加価値なSIサービス事業も提供しています。
運用アウトソーシング・サービス「RePlavail」
RePlavailとは、仮想化インフラの運用を支援する、ITプラットフォーム・マネジメント・サービスです。RePlavailを使用することによってCTCが持つ運用ノウハウを活用できるため、最大で30%以上の運用コストを削減できます。また、このサービスでは、ヴイエムウェアと共同開発した運用フレームワークを利用して、ユーザーのビジネス環境に合わせた運用サービスを個別に提供します。
実際の運用サービスでは、ユーザー先の仮想化インフラを統合するvCenter Serverを「RePlavail Operation Center」(以下、ROC)から遠隔マネジメントし、以下で紹介するさまざまなサービスを提供します。
ROCは、CTCグループの運用/サポート会社であるCTCテクノロジーが運営する、VMware vSphereなどの仮想化インフラに特化した監視サービスです。約150名規模のエンジニアがユーザーを遠隔支援します。また、全国約100カ所にカスタマー・サービス拠点を置き、オンサイトでハードウエア交換作業を含む障害復旧支援を行います。
【安定稼働サービス】
- 障害の迅速検知、事前に整備したワーク・アラウンドによるダウンタイムの最小化
- 仮想化インフラにおける複雑な障害起因の解析、恒久対策の立案と実行
- 予兆検知にもとづく、障害の未然防止策の立案と実行
- データ・バックアップと、データ・ボリューム単位の復元
【リソース最適化サービス】
- インフラ・リソースの利用トレンド情報の定期的な取得
- 余剰リソース最小化のための施策の提示/実行による継続的なインフラ投資の最適化
【ビジネス・サポート・サービス】
- ユーザーのインフラ変更計画に対する実行可否判断の支援(リソース利用状況にもとづく判断)
- インフラ変更における実行計画の策定支援、作業実施に向けた各種の調整サポート
- 事前にテンプレート化された変更作業の迅速な実行
【ITガバナンス支援サービス】
- 対象インフラ製品に関するセキュリティ脆弱(ぜいじゃく)性の情報提供、パッチ適用によるインフラ環境の安全性維持
- ユーザーの依頼にもとづく、仮想化インフラへのアクセス状況(ログ)の情報提供
- 最新のインフラ構成情報のレポーティング
【システム管理者支援サービス】
- インフラ稼働状況のステータス管理と、異常時の即時アナウンス
- 定期的なインフラ利用状況の分析と、レポーティング
- マルチベンダー環境のテクニカルな問い合わせ/相談への回答
今回は、仮想化インフラの共有利用という視点で、ITILプロセスをまじえて解説しました。ビジネス・ニーズに合ったプライベート・クラウドへの指針になれば、うれしい限りです。次回では、ITILプロセスの1つであるインシデント管理/問題管理の重要性について、詳しく解説します。