利用者のニーズに応えるSUSEの「Always Open Open」戦略、ほか

2016年12月16日(金)
吉田 行男
OSS界隈に造詣が深い吉田行男氏が、この一週間に起きたOSS業界の注目すべきトピックをセレクトして、お届けします。

こんにちは、日立ソリューションズの吉田です。

「サポート切れ」は、どんなソフトウェアでも重大な問題です。特に外部に公開しているサーバでは、気をつけなければいけません。Linuxディストリビューションでも来年2017年の3月末にサポートが終了するRed Hat Enterprise Linux 5は、大きな問題になっています。今週は、そのLinuxの新バージョンへの移行支援という新しいサービスが登場しました。それ以外にもOSSに関する注目すべきトピックを取り上げましたので、ゆっくりとご覧下さい。

HASHコンサルティング、サポートが切れるRHEL 5/CentOS 5からの移行を支援

HASHコンサルティング(株)は12月14日、主に中小企業に向けて、2017年3月31日にサポート切れを迎えるRed Hat Enterprise Linux 5(RHEL 5)およびCentOS 5から後継OSへの移行を支援するコンサルティングサービス「OS移行サポート2017」を発表、同日提供を開始しました。RHEL 5とCentOS 5は、延長サポートを別途契約しない限り、2017年の3月末をもって修正パッチの提供が止まります。サポート終了後も使い続けるとセキュリティの脆弱性が放置されることになるため、それぞれの新バージョン(バージョン6やバージョン7)などへの移行が推奨されています。

なお、RHEL 5とCentOS 5を2017年3月31日以降も使い続けたい場合は、緊急避難的な解決策として、OSベンダーなどが提供している延長サポートを受けることによって修正パッチを得られます。例えば、RHEL 5の延長サポートは、レッドハット(株)から提供されます。 また、CentOS 5に対しては、ミラクル・リナックス(株)が、「CentOS 5向けパッチ提供サービス」を12月14日に販売開始しました。

(参照記事:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/121403741/

トレジャーデータ、今後はDMPからLDMへ、新サービスTreasure Workflowも発表

トレジャーデータ(株)は12月7日、複数のクラウド基盤やウェブサービス上にあるデータを、シームレスに統合させて運用することが可能となる、初のデータ処理のためのワークフロー管理サービス「Treasure Workflow」の提供開始を発表しました。このサービスでは、同社が開発するOSS「Digdag」を使用します。

「Treasure Workflow」を活用することで、企業は、異なるベンダーが提供するクラウド基盤にあるデータや、組織内にあるさまざまなビジネスアプリケーションやデータベースから、各種のデータを収集、統合、分析するプロセスを構築可能になります。具体的には、米国Google社の「BigQuery」や、米国Amazon社の「Amazon Redshift」、米国Microsoft社の「Azure」等のクラウドサービス上にあるワークフローデータが、相互にアクセスし合うことができるようになります。これら複数ベンダーのクラウド基盤上のデータをつなぐことで、企業内のさまざまなデータがリアルタイムでシームレスに統合され、データのいち早い分析が実現されます。

(参照記事:http://news.mynavi.jp/news/2016/12/08/329/

サイオス、オープンソースのアクセス解析ツールを利用したログ解析サービス

サイオステクノロジー(株)は12月7日、オープンソースのアクセス解析ツールである「Piwik」を利用して大規模なWebサーバログを解析できるサービス「Webサーバーログ解析サービスon Cloud」(ログ解析Cloudサービス)の提供を開始しました。システム構成は「Piwik」のほかに、クラウドプラットフォームに「Microsoft Azure」、大量ログデータの保管には「TREASURE DMP」(トレジャーデータ(株)が提供するプライベートDMPソリューション)を採用しています。このサービスは、Webサーバのログデータの解析を目的としたものですが、今後は内部で保有しているユーザープロファイルなどの会員データや購買行動に関する情報の活用のほか、本格的なプライベートDMP構築を円滑に進めることも可能となる予定です。

(参照記事:http://news.mynavi.jp/news/2016/12/09/029/

利用者のニーズを満たすためにオープンに使えるようにするSUSEの「Always Open Open」戦略

Linuxディストリビューションなどを開発するSUSEのカンファレンスイベント「SUSE Open Forum Japan 2016」が、日本でSUSEの事業を展開するノベル(株)により12月9日に開催されました。イベントでは、11月に米国で開催された「SUSECon 2016」からの最新情報などが解説された。また基調講演では、11月末に発表された米国HPE社(Hewlett Packard Enterprise)からのOpenStackおよびCloud Foundary関連資産の買収と、11月中旬に発表された富士通(株)との協業について、両社から特別ゲストが登壇してその狙いを語りました。その中で、SUSEの考えとして「Always Open Open」という言葉を掲げました。「『Open Open』とは、オープンソースなライセンスで提供するだけでなく、利用者のITのニーズを満たすために、オープンに使えるようにすることを意味する。ロックインの正反対だ」と説明しました。

(参照記事:http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1034698.html

Open Source Forum 2016開催 ブロックチェーンやセキュリティなどに注目が集まる

Linuxの普及をサポートする非営利団体であるThe Linux Foundation(以下、LF)が11月15日、国内で初めて開催した「Open Source Forum 2016」のレポートです。LFは、近年Linux以外にも注目を浴びる各種のOSSプロジェクトを、協業プロジェクトとして支援しています。現在ホットなテクノロジー分野であるコンテナ、ブロックチェーン、セキュリティに関する協業プロジェクトには、Cloud Native Computing Foundation、Open Container Initiative、Hyperledger Project、およびCore Infrastructure Initiativeがあります。

今回、それらのプロジェクトからリーダーが来日し(一部はビデオ講演)、各プロジェクトの現状や今後について紹介しました。その中から、セキュリティとブロックチェーンに関して投稿がありましたので、ご紹介します。

(参照記事:なぜブロックチェーンはOSSプロジェクトで運営するべきなのか
(参照記事:「OSSのセキュリティ改善は道半ば」-- Linux FoundationのCTO

編集後記

年末が近づくと、電車内でカレンダーを多く抱えた営業と思しき方々を見かけるようになります。昨今は、卓上型の小さなカレンダーも好まれるようですが、まだまだ、大型のカレンダーを提供している会社も多いようです。一方でカレンダーを作成しない会社も増えてきているようで、そのうち「昔のことですね」といわれる時代がくるかもしれません。

イベントのご案内
OSSウォッチ100回記念イベント(12/22)やります!

2014年11月7日から連載が始まった「週刊OSSウォッチ」ですが、めでたく先週で100回を数えました!そこで、著者の吉田行男氏をお呼びして今年1年のOSS業界を総括するイベントを開催します。

緊急開催! OSSウォッチ特別編「吉田行男と振り返る2016年のOSS業界」

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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