CanonicalとDockerがクラウドコンテナ管理で提携、ほか

2016年12月8日(木)
吉田 行男
OSS界隈に造詣が深い吉田行男氏が、この一週間に起きたOSS業界の注目すべきトピックをセレクトして、お届けします。

こんにちは、日立ソリューションズの吉田です。

先週、秋葉原で開催されたPGConf.ASIA 2016に参加しました。PostgreSQLの普及が進んでいることが感じられるカンファレンスでした。特にユーザ企業の発表では「OSSを活用することで組織も活性化する」という、とても興味深いお話もありました。今週もOSSに関する注目すべきトピックを取り上げましたので、ゆっくりとご覧下さい。

ミラクル・リナックス、FPGAで文字列分割処理を最大10倍高速化するフレームワークを開発

ミラクル・リナックス(株)は12月1日、FPGA(Field-Programmable Gate Array、プログラミング可能な集積回路)を使った文字列分割処理の高速化についての研究開発の成果を公開しました。同社では、文字列分割処理を高速化する手法として、FPGAを用いた研究を進めていました。文字列分割をFPGAで並列処理するアルゴリズムや、ホストコンピュータとFPGAの間のデータ転送の効率化により、IoT機器やIoTゲートウェイからの大量データ処理を目的としたフレームワークを開発しました。同技術の開発を進める背景について同社は、「Apache Hadoopでの文字列解析など、大量のデータを処理する場合にFPGAでの処理が有効だ。併せてCPUのオフロードも可能となるため、処理自体だけでなく、システム全体の高速化が可能になる」と述べています。

(参照記事:http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1612/05/news069.html

CanonicalとDockerがクラウドコンテナ管理で提携

英国Canonical社は11月30日、商用サポートの付いた「Commercially Supported Docker Engine(CS Docker Engine)」をUbuntu上で利用可能にすることを目的とした、米国Docker社との提携を発表しました。「Docker Engine」を用いることで管理者は、ノードのクラスタをまたがる分散アプリケーションを宣言的に定義できるようになります。この提携により、Docker社は安定版のDockerをUbuntuのsnapパッケージとしてリリースし、Canonicalは「CS Docker Engine」向けのLevel 1とLevel 2の技術サポートを受け持つことになります。

(参照記事:http://japan.zdnet.com/svc/nls/?id=35093107

OSSのAPI管理ソフト「Kong」が日本でのサポート開始

OSSのAPI管理ソフト「Kong」の開発を主導する米国Mashape社は12月7日、日本での製品販売を2017年1月に開始すると発表しました。(株)ブリスコラ社が代理店となり、企業向けのAPI管理ソフトスイート「Mashape Enterprise」を販売・サポートします。同製品はAPI管理の「Kong」を中心に、開発者ポータルやAPIアナリティクスのソフトを組み合わせたものになります。「Kong」は、APIを安全、柔軟に公開するためのAPIゲートウエイと呼ばれる種類のソフトです。Webサーバの「Nginx」をベースに開発され、認証や流量制御、APIの変換といった機能を備えています。

(参照記事:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/120703665/

Mozilla、2015年の売上高は前年比28%増 検索パートナー戦略変更が奏功

米国Mozilla財団は12月1日、2015年の収支を報告しました。2014年11月に発表した検索パートナー戦略の変更が奏を功し、売上高は前年比28%増の4億2,128万ドルでした。Mozillaは2014年11月、米国Google社との契約期間終了に際して検索パートナー戦略を変更し、デフォルト検索エンジンを世界で共通化せず、国ごとに新たなパートナー契約を結ぶこととしました。例えば、米国では米Yahoo!と5年間の提携契約を締結しています。2014年と同様に、2015年の総売上高のほとんどがロイヤルティ収入で、さらにそのほとんどは検索パートナーからでした。実際、ロイヤルティ収入が売上高全体に占める割合は前年より1ポイント増え、99%となったそうです。

(参照記事:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1612/05/news056.html

Google、OSS向けファジングイニシアティブ「OSS-Fuzz」を発表

米国Google社は12月1日、オープンソースソフトウェア向けの継続的ファジングイニシアティブ「OSS-Fuzz」を発表しました。よく利用されるソフトウェアインフラの安全性と安定性を高めることを目的に、ファジング手法に分散実行を組み合わせました。これにより、オープンソースソフトウェアの脆弱性を調べるテストを大規模に行うことができるようになります。自社のChromeブラウザのコンポーネントにおける脆弱性を調べるのに利用しているという「AFL」や「libFuzzer」といった汎用ファジングエンジンを実装し、「AddressSanitize」などのサニタイザーと組み合わせるとともに、分散型のファジングインフラ「ClusterFuzz」を利用し、拡張性のある分散実行環境を構築しました。これを利用して、バッファオーバーフローや整数オーバーフロー、Use-After-Freeといったセキュリティ脆弱性、メモリリーク、NULLポインタへの値の参照など、ソフトウェアの安定性に関わるバグを検出できるようになります。

(参照記事:https://mag.osdn.jp/16/12/05/170000

編集後記

今年の流行語大賞に「神ってる」が選ばれました。今年は広島東洋カープの快進撃とともに、とても注目された言葉になりました。しかしながら、「神ってる」はネットの世界ではすでに中高生を中心に使われていた言葉であり、それがいきなり表舞台に出てきたわけで、ここでもネットの世界が現実よりも進んでいることを実感しました。さて、来年はどんな言葉が流行語になるか、想像してみてはいかがでしょうか?

イベントのご案内
OSSウォッチ100回記念イベント(12/22)やります!

2014年11月7日から連載が始まった「週刊OSSウォッチ」ですが、ついに今回が100回めとなりました!そこで、著者の吉田行男お呼びして今年1年のOSS業界を総括するイベントを開催します。

緊急開催! OSSウォッチ特別編「吉田行男と振り返る2016年のOSS業界」

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

連載バックナンバー

OSSコラム

SQL Server v.Next CTP 1.3 Linux版も含めて公開、GoogleのTensorFlowが1.0に、ほか

2017/2/24
OSS界隈に造詣が深い吉田行男氏が、この一週間に起きたOSS業界の注目すべきトピックをセレクトして、お届けします。
OSSコラム

MSが「Azure IP Advantage」を発表、インテル「BigDL」をオープンソース化、ほか

2017/2/17
OSS界隈に造詣が深い吉田行男氏が、この一週間に起きたOSS業界の注目すべきトピックをセレクトして、お届けします。
OSSコラム

「LibreOffice 5.3」公開、UIプロジェクト「MUFFIN」を初導入、ほか

2017/2/10
OSS界隈に造詣が深い吉田行男氏が、この一週間に起きたOSS業界の注目すべきトピックをセレクトして、お届けします。

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています