KubeCon+CloudNativeCon North America 2025から、Kubernetesのコストを最適化するソリューションを提供するZestyの開発責任者、Mark Serdze氏のインタビューをお届けする。ZestyはSaaSプラットフォームとしてパブリッククラウドに実装されたKubernetesクラスターのコストを最適化するソリューションの開発元だ。Zestyは2019年に創業されたベンチャーで、イスラエル出身のMaxim Melamedov氏がCEO、Alexy Baikov氏がCTOである。本社はカリフォルニア州のサンマテオだが、開発は主にイスラエルのテルアビブで行われているようだ。
インタビューに応えてくれたMark Serdze氏は、ZestyのR&Dチームのリーダーである。
Zestyについて教えてください。
Serdze:ZestyはKubernetesのコストを最適化するソリューションを提供しています。多くの企業はKubernetesをパブリッククラウドで利用することからクラウドネイティブのコンピューティングを始めます。ひとつにはそれが容易であるからですが、使い始めてすぐに気が付くのは、そのコストが大きいことです。Zestyはそのコストを最適化するソリューションを提供しています。Kubernetesが使用するリソースを最適化することでコストを下げるのが目的です。
発想としてはFinOpsに近い感じですか?
Serdze:そうですね。ただZestyのソリューションはKubernetesのコスト管理に特化しています。そのためにノードやポッドのサイズを最適化します。FinOpsよりもさらに詳細に実行されるアプリケーションやメモリー、ディスクの使用量を調べて最適化します。実際にはKubernetesだけではなく仮想マシンの最適化も含まれています。仮想マシンについてはスナップショットの技術を使って実行されているリソースが無駄になっている場合は、即座にそれを違うインスタンスに移動して最適化を行います。
我々と同じようなソリューションを提供している企業もありますが、Zestyが彼らと異なっているのは多くのレイヤーでその最適化を行っているという点ですね。Zestyの最初のプロダクトはコミットメントというサービスで、これは全体のコストを最適化するための仕組みです。これはFinOpsのレイヤーと近いと思いますが、さらにその下のレイヤー、つまりノードの管理やポッドの管理まで含めて複数のレイヤーで最適化を行うという部分になります。他にも差別化のポイントとして、オートスケーリングの機能についてはリアルタイムで変更を加えられる点が挙げられます。他のソリューションでは、オートスケーリングはリスタートが必要になる場合がありますが、Zestyのソリューションではリアルタイムでそれを可能にしています。
会社の紹介ではなく自己紹介をしてください。
Serdze:私はクラウドエンジニアリングという開発チームのリーダーをしています。Zestyはまだ入社して1年半ですが、それ以前にはTrax Retailという会社で約10年間、クラウドにかかわるソフトウェア開発と運用チームのディレクターをしていました。その時はコンピュータビジョンのシステムの開発と運用をやっていました。だいたい2014年ごろにコンピュータビジョンを使った推論などのためのKubernetesクラスターを運用していましたから、クラスターの最適化という課題が重要だということはわかっていました。当時はすべてインハウスの開発によってDevOpsを実装していましたね。日本企業との関わりもその時にできましたよ。Retail Traxの顧客の一つがコカ・コーラで日本法人とも何度も仕事をしましたから。
ということは日本でのITビジネスの作法というのも理解していますよね?
Serdze:そうですね。日本で外資系がビジネスをして信用されるためには、現地に法人を作る必要があることは理解しました。私は営業担当ではないので、日本での展開については何かを語れる立場にはありませんが。
最適化を行うのはCPUとメモリーだけですか?
Serdze:ストレージについても最適化が可能になっています。これはポッドが使うPV(Persistent Volume)のサイズをオートスケーリングするプロダクトでBTFSを使っています。これを使うことで無駄なストレージのコストを最適化できます。AIを使った予測機能によってこれからどのくらいのサイズが必要になるのかを想定して、必要なディスクのサイズを変えるということを行います。
説明していただいた内容を聞いていると、サーバーレスの発想で必要な時にだけ必要なリソースを使うという発想のように見えます。
Serdze:それは近いかもしれないですね。KubernetesにはKserveというサーバーレスのソフトウェアがあり、サーバーレスを実装している企業も多いと思いますが、KserveもZestyのソリューションの中に取り込めるように現在、開発を行っています。それが実現すると、より効果的になるはずです。
現在は、AWSがメインのプラットフォームだとおもいますが、それ以外のクラウドの対応は?
Serdze:GoogleのGKEについては開発を予定しています。それ以外にはオンプレミスのクラスターについても対応可能です。これは直接的にはコストへのインパクトを与えないかもしれませんが、企業にとっては資産を最適化するという意味では重要だと思います。
システムのオブザーバビリティのデータを使ってコストを最適化するという意味では、オブザーバビリティの会社にコスト最適化の管理機能が追加されたという感じですか?
Serdze:Zestyはオブザーバビリティのデータをすべて使うわけではないですね。そしてそれをすべてクラウドのサービス側に持ってくる必要もありません。クラスターに実装するエージェントにはタイムシリーズデータベースが実装されていますので、そこでデータを分析して予測や最適化が行われます。なのでクラウドベースのオブザーバビリティツールのように、すべてをクラウドに集約する必要はなく、分析はオンプレミスのクラスターでも可能です。クラウドベースのオブザーバビリティではテラバイトクラスのデータが必要となり、かなりコストが必要になりますが、Zestyのソリューションではそのようなことは起こりません。
最適化については顧客ごとにカスタマイズしたポリシーを作ることも可能です。つまりワークロードによってはある特定の時間や時期にアクセスが集中することがわかっていれば、それに対応してリソースを設定できるようになっています。これが可能になると、単なるシステムの最適化ではなくビジネスに合った最適化が行えるということを意味しています。
最後にチャレンジは何ですか?
Serdze:Zestyにとってのチャレンジは、Kubernetesのワークロードというか使われ方にバリエーションが多過ぎることですね。エンタープライズも小さなスタートアップもKubernetesを使っていますが、一緒に使う他のオープンソースソフトウェアはそれぞれ異なっています。このように最適化するための環境が多様過ぎるために難しいということが挙げられます。
GPUの最適化はZestyのソリューションで可能なんですか?
Serdze:GPUについてはCPUとは違う課題があります。GPUのスライシングだけではなく、いかに無駄なくワークロードを詰め込むかというパッキング問題もありますよね。GPUの最適化については課題の一つだと思います。
●公式ページ:https://zesty.co/
SaaSのサービスであるもののオンプレミスのクラスターについても最適化が可能であるというのは、クラウドベースのオブザーバビリティツールベンダーにとっては差別化の一つだろう。「クラウドベースのオブザーバビリティツールにコスト管理が追加されたものでは?」という質問には明確に「それは違う、クラウドベースのオブザーバビリティのように大量のデータが必要になるわけではない、コスト管理のためにはそこまでのデータは必要なく、それよりも予測機能が重要だ」と語っていたのが印象的なインタビューとなった。
