この連載が書籍になりました!『RancherによるKubernetes活用完全ガイド

Rancherってどんなもの?

2019年2月27日(水)
市川 豊
連載の初回となる今回は、Rancherの基本的な知識と一般的なインストールの方法などを紹介する。

What's Rancher?

Rancher概要

Rancherとは、コンテナ管理のプラットフォームを提供するアプリケーションで、アメリカ合衆国カリフォルニア州のクパチーノに本社を持つRancher Labsが開発しています。Rancherは、オープンソース・ソフトウェア(以下、OSS)であるため、ソースコードはすべてGitHubで公開されています。また、無償で利用できます。一方Rancher Labs社にライセンス料を支払うことで、オフィシャルサポートを受けられるエンタープライズ向けの利用形態もあります。

Rancherの主な特徴としては、以下の三つが挙げられます。

一つ目は、マルチクラウドをベースとしたKubernetesクラスタを一元管理できる点です。「Kubernetes is Everywhere」をコンセプトに、オンプレミスやあらゆるクラウドサービス上にKubernetesクラスタを構築及び管理、また既存のKubernetesクラスタをインポートしてRancherで管理できます。

二つ目は、Helmをベースとしたカタログという機能を備える点です。Rancherはデフォルトの状態で数多くのOSSをカタログ化しており、Rancherをインストールした直後からそれらを利用できます。また、ユーザが独自で開発したソフトウェアをカタログ化して、利用及び管理することもできます。

そして三つ目が、他のOSSとの連携が可能な点です。GitLab(CI/CD)、Prometheus(モニタリング)、Fluentd(ログの取得)等を始めとする他のOSSと連携して、利用及び管理できます。

またRancherではこうした利用及び管理のすべてを、洗練されたWebブラウザベースのRancher UI(ブラウザベースのRancher管理画面)で行えるため、Kubernetes初心者を始め、幅広い層からの人気を集めています。

これらの特徴を備えていることの結果の一つとして、米調査会社Forrester Researchの「The Forrester New Wave? Enterprise Container Platform Software Suites, Q4 2018」※1において、Enterprise Container Platform Leaderに、Docker、Red Hatと並んでRancher Labsが選ばれました(図1)。

図1:Forrester Researchによる評価

図1:Forrester Researchによる評価

本連載では、Rancherの機能・操作を紹介していきます。以下の内容で進めていく予定です。

  • What's Rancher?
  • Rancherのインストール
  • Kubernetesクラスタの構築
  • アプリケーションデプロイ(カタログ機能)
  • カタログ機能の詳細
  • アプリケーションデプロイ(kubectl)

※1:出典「The Forrester New Wave?: Enterprise Container Platform Software Suites, Q4 2018
The Eight Providers That Matter Most And How They Stack Up」(https://bit.ly/theforresternewwave
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Rancherインストール

1.インストール環境について

Rancherをインストールする上で必要となる要素は、オンプレミスまたはVMWare社やクラウドプロバイダーが提供する仮想マシンとオペレーティングシステム、そしてDockerとなります。

ハードウェア

ハードウェア要件は、Rancherを稼働させるシステムの規模により調整は必要となりますが、Rancher Labsが公表している要件は表1のようになります(2019年2月現在)。Node数が500台以上の場合は、Rancher Labsにご相談となっています(ご相談窓口)。

表1. Rancherを可動させるシステムのハードウェア要件

Deployment SizeClustersNodesvCPUsRAM
SmallUp to 5Up to 50416GB
MediumUp to 100Up to 500832GB
LargeOver 100Over 500Contact RancherContact Rancher

オペレーティングシステム&Docker

オペレーティングシステムとDockerについて、Rancher Labsが公表している要件は表2のようになります(2019年2月現在)。

表2. オペレーティングシステムとDockerの要件

OSVersionDocker Version
Ubuntu16.04(64ビット)Docker 17.03.2、18.06.2、18.09.2
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)/
CentOS
7.5(64ビット)RHEL Docker 1.13、
Docker 17.03.2、18.06.2、18.09.2
RancherOS ※21.4(64ビット)Docker 17.03.2、18.06.2、18.09.2
Windows Server1803(64ビット)Docker 17.06

※2:RancherOSは、Rancher Labsが開発するコンテナ稼働に特化したオペレーティングシステム。https://github.com/rancher/os
RancherOSを使用している場合は、必ずDockerエンジンをサポートされているバージョンに切り替えてください。

2. インストール種別

Rancherには、インストール方法が2つあります。

  • Single Node Installation
  • High Availability Installation

Single Node Installation

Single Node Installation(単一ノードインストール)は、単一のLinuxホストにRancherをインストールします。セットアップが非常に簡単なので、開発環境、テスト環境に推奨されています。

High Availability Installation

High Availability Installation(高可用性インストール)は、Kubernetesクラスタ上にRancherをインストールします。Kubernetesの機能で高可用性を確立します。24時間365日稼働する実稼働環境に推奨されています。

日本オラクル株式会社

Oracle Groundbreaker Advocate
Principal Cloud Solution Engineer

これまで、インフラエンジニア、フロントエンドエンジニアとして官公庁のシステム基盤を中心としたサーバの設計構築、運用保守、Webシステム開発を担当。技術教育者として専門学校でクラウド技術やOSS(Linux、Docker、Kubernetes)の授業を担当し、企業様向けプライベートトレーニング講師も担当。 アドボケート/エバンジェリストとしてミートアップ、カンファレンスで登壇。現在は、クラウドネイティブ技術を中心とするソリューションエンジニアとして活動。クラウドネイティブ技術に関連するコミュニティの運営にも積極的に参加。

Community:
Oracle Cloud Hangout Cafe メンバー (#ochacafe)
CloudNative Days Tokyo 実行委員会メンバー (#CNDT)

Book:
著書「Dockerコンテナ開発・環境構築の基本」(インプレス)
共著「RancherによるKubernetes活用完全ガイド」(インプレス)、「コンテナ・ベース・オーケストレーション Docker/Kubernetesで作るクラウド時代のシステム基盤」(翔泳社)

連載バックナンバー

クラウド技術解説
第11回

Rancherコードリーディング入門(3/3)

2020/2/19
前回に続き、紙面の都合で「RancherによるKubernetes活用完全ガイド」に掲載されなかったパートをご紹介します。
クラウド技術解説
第10回

Rancherコードリーディング入門(2/3)

2019/12/25
前回に続き、紙面の都合で「RancherによるKubernetes活用完全ガイド」に掲載されなかったパートをご紹介します。
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2019/11/5
今回からは、紙面の都合で「RancherによるKubernetes活用完全ガイド」に掲載されなかったパートをご紹介します。

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