Rancherってどんなもの?
What's Rancher?
Rancher概要
Rancherとは、コンテナ管理のプラットフォームを提供するアプリケーションで、アメリカ合衆国カリフォルニア州のクパチーノに本社を持つRancher Labsが開発しています。Rancherは、オープンソース・ソフトウェア(以下、OSS)であるため、ソースコードはすべてGitHubで公開されています。また、無償で利用できます。一方Rancher Labs社にライセンス料を支払うことで、オフィシャルサポートを受けられるエンタープライズ向けの利用形態もあります。
Rancherの主な特徴としては、以下の三つが挙げられます。
一つ目は、マルチクラウドをベースとしたKubernetesクラスタを一元管理できる点です。「Kubernetes is Everywhere」をコンセプトに、オンプレミスやあらゆるクラウドサービス上にKubernetesクラスタを構築及び管理、また既存のKubernetesクラスタをインポートしてRancherで管理できます。
二つ目は、Helmをベースとしたカタログという機能を備える点です。Rancherはデフォルトの状態で数多くのOSSをカタログ化しており、Rancherをインストールした直後からそれらを利用できます。また、ユーザが独自で開発したソフトウェアをカタログ化して、利用及び管理することもできます。
そして三つ目が、他のOSSとの連携が可能な点です。GitLab(CI/CD)、Prometheus(モニタリング)、Fluentd(ログの取得)等を始めとする他のOSSと連携して、利用及び管理できます。
またRancherではこうした利用及び管理のすべてを、洗練されたWebブラウザベースのRancher UI(ブラウザベースのRancher管理画面)で行えるため、Kubernetes初心者を始め、幅広い層からの人気を集めています。
これらの特徴を備えていることの結果の一つとして、米調査会社Forrester Researchの「The Forrester New Wave? Enterprise Container Platform Software Suites, Q4 2018」※1において、Enterprise Container Platform Leaderに、Docker、Red Hatと並んでRancher Labsが選ばれました(図1)。
本連載では、Rancherの機能・操作を紹介していきます。以下の内容で進めていく予定です。
- What's Rancher?
- Rancherのインストール
- Kubernetesクラスタの構築
- アプリケーションデプロイ(カタログ機能)
- カタログ機能の詳細
- アプリケーションデプロイ(kubectl)
※1:出典「The Forrester New Wave?: Enterprise Container Platform Software Suites, Q4 2018
The Eight Providers That Matter Most And How They Stack Up」(https://bit.ly/theforresternewwave)
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Rancherインストール
1.インストール環境について
Rancherをインストールする上で必要となる要素は、オンプレミスまたはVMWare社やクラウドプロバイダーが提供する仮想マシンとオペレーティングシステム、そしてDockerとなります。
ハードウェア
ハードウェア要件は、Rancherを稼働させるシステムの規模により調整は必要となりますが、Rancher Labsが公表している要件は表1のようになります(2019年2月現在)。Node数が500台以上の場合は、Rancher Labsにご相談となっています(ご相談窓口)。
Deployment Size | Clusters | Nodes | vCPUs | RAM |
---|---|---|---|---|
Small | Up to 5 | Up to 50 | 4 | 16GB |
Medium | Up to 100 | Up to 500 | 8 | 32GB |
Large | Over 100 | Over 500 | Contact Rancher | Contact Rancher |
オペレーティングシステム&Docker
オペレーティングシステムとDockerについて、Rancher Labsが公表している要件は表2のようになります(2019年2月現在)。
OS | Version | Docker Version |
---|---|---|
Ubuntu | 16.04(64ビット) | Docker 17.03.2、18.06.2、18.09.2 |
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)/ CentOS | 7.5(64ビット) | RHEL Docker 1.13、 Docker 17.03.2、18.06.2、18.09.2 |
RancherOS ※2 | 1.4(64ビット) | Docker 17.03.2、18.06.2、18.09.2 |
Windows Server | 1803(64ビット) | Docker 17.06 |
※2:RancherOSは、Rancher Labsが開発するコンテナ稼働に特化したオペレーティングシステム。https://github.com/rancher/os
RancherOSを使用している場合は、必ずDockerエンジンをサポートされているバージョンに切り替えてください。
2. インストール種別
Rancherには、インストール方法が2つあります。
- Single Node Installation
- High Availability Installation
Single Node Installation
Single Node Installation(単一ノードインストール)は、単一のLinuxホストにRancherをインストールします。セットアップが非常に簡単なので、開発環境、テスト環境に推奨されています。
High Availability Installation
High Availability Installation(高可用性インストール)は、Kubernetesクラスタ上にRancherをインストールします。Kubernetesの機能で高可用性を確立します。24時間365日稼働する実稼働環境に推奨されています。