CNCFによる中国人のためのイベントだったKubeCon China

2018年12月28日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
KubeCon+CloudNativeCon Chinaの会場のようすを写真で紹介する。

今回初めて上海で開かれたKubeCon+CloudNativeConでは、約2500名の参加者を集めたという。そのうち中国以外からの参加者は約450名程度で、これはCNCFの想定した数よりは多かったそうだ。CNCFのCTO/COOであるChris Aniszczyk氏は、当初「中国以外からの参加者は100名にも満たないと思っていた」そうだ。

同じくCNCFのExecutive DirectorであるDan Kohn氏は、2018年中に6回も中国を訪れている。それほどにCNCFと中国企業そしてコミュニティとの繋がりの濃さがわかる。

パンダと戯れるKohn氏

パンダと戯れるKohn氏

CNCFがホストする中国発のプロジェクトもHarbor、TiKV、Dragonflyと増えており、着実に拡がっていることがわかる。

中国発のクラウドネイティブなプロジェクト

中国発のクラウドネイティブなプロジェクト

また、中国におけるスポンサーも大きく増加している。CNCFにとっては、これほどの市場を重視しない理由がない。

CNCFに対するスポンサーも急増している

CNCFに対するスポンサーも急増している

またCNCFが発表した11月13日付けのサーベイ(アジアにおけるクラウドの使用状況)の結果を見ても、パブリッククラウド、プライベートクラウドの利用が135%増加、またKubernetesを使った本番環境もクラスター数で1から5の規模での利用が37%減少した一方で、11から50クラスターという規模での利用例は154%も増加しているという。この流れを牽引しているのは、主に中国の企業だろう。最も利用が多いパブリッククラウドがAlibaba Cloudで38%、第2位がAWSで24%、Baidu Cloudが21%でオンプレミス21%と同位で3位という数値を見れば、日本での利用状況とは大いに異なっていることは理解できる。

より詳しいサーベイは以下から参照可能だ。

参考:CNCF Survey:Cloud Usage in Asia Has Grown 135% Since March 2018

カンファレンスの展示会場もHuaweiやAlibaba、Tencentには常に参加者が集まっており、注目度の高さを感じることができた。

Huaweiのブース

Huaweiのブース

HuaweiはUFOキャッチャーを用意して、個人情報のスキャンと引き換えにぬいぐるみをゲットできる演出をしており、常に参加者がチャレンジしていた。

一方Tencentは、Huaweiなどと比べるとまじめにソリューションを訴求していた。

Rancher Labsのブース。ここでも遊びの要素が

Rancher Labsのブース。ここでも遊びの要素が

今回、キーノートやCo-located Eventなどでも大いに気を吐いていたRancher Labsのブース。面積は少ないものの、常に参加者で溢れていた印象だ。

それに対してRed HatやCloud Foundry、NGINX、Elasticなどはあまり目立たない小さめなブースで出展しており、とりあえず参加することに意義があるといった様子だ。

Red HatのOpenShiftとCloud Foundryはお隣同士

Red HatのOpenShiftとCloud Foundryはお隣同士

MESOSとTiKVの開発をリードするPingCAPもブースを出展。PingCAPは明らかに中国人エンジニアだけをターゲットとしたブースであった。

PingCAPとMESOSのブース

PingCAPとMESOSのブース

AlibabaもKubernetesをメインに訴求するブース構成。ここでも説明の表示は全て中国語で、英語の表記は「Kubernetes」という名前だけ。このように、中国では中国語で書くのは当たり前といった風だ。

Alibaba Cloudのブース

Alibaba Cloudのブース

CNCFのホストするプロジェクトは数多いが、各プロジェクトのロゴを入れた靴下がショップでは販売されていた。ステッカーだけではなくノベルティとしても人気となっていたようだ。

LinkerdとEnvoyの靴下

LinkerdとEnvoyの靴下

ステッカーも会場のレジストレーションカウンターの横に大量に用意されており、エンジニアにはとても人気を博していた。

CNCFのプロジェクトのステッカー

CNCFのプロジェクトのステッカー

興味深いのは、カンファレンスのバッジに接着できるリボンが多数用意されており、自分がどのプロジェクトのコントリビューターなのかを明示できるようになっていたことだ。さらに、プロジェクト名だけではなく、仕事を求める「求職者」やハイアリングを行っていることを明らかにできるリボンも用意されており、クラウドネイティブなエンジニアの転職活動にも使えるようにされていたことだろう。

Job Seekerのリボン

Job Seekerのリボン

We are Hiringのリボン

We are Hiringのリボン

また展示会場内にもジョブボードが用意され、多数の書き込みがあった。このことからも、クラウドネイティブなソフトウェアを開発できるエンジニアは、どこも引く手あまたであることが感じられた。

ジョブボードはスペースがないくらいに書き込まれていた

ジョブボードはスペースがないくらいに書き込まれていた

KubeCon+CloudNativeCon Chinaを俯瞰してみると、CNCFが中国企業とエンジニアに最大限の配慮を行ったカンファレンスという印象となった。中国発のHarborやTiKVのようなソフトウェアが中国以外のコントリビューターとユーザーを獲得できるのか? これに関しては、コミュニティ内部のコミュニケーションに英語を加えるということをやらない限り、中国国内だけで繁栄するガラパゴスのような状況になりかねない。この辺りはCNCFがどのようにコミュニティをリードしていくのか、注目していきたい。

最後に今回のショウケースで行われていたお楽しみの部分を紹介しよう。中国らしく古典楽器を使った演奏や、扇子に毛筆で好きな漢字を書くアトラクション、そして飴細工など中国以外からの参加者にとっては普段見られないモノばかりで、どこも長蛇の列ができていた。

夕方にはこんな演奏隊が出現

夕方にはこんな演奏隊が出現

扇子に好きな漢字を書いてもらってご機嫌なサイバーエージェントのインフラチーム

扇子に好きな漢字を書いてもらってご機嫌なサイバーエージェントのインフラチーム

二人の書家が淡々と仕事をこなしている

二人の書家が淡々と仕事をこなしている

飴細工でPrometheusのロゴを作ってもらっているところ

飴細工でPrometheusのロゴを作ってもらっているところ

作っているところを動画に収めるPrometheusコントリビューター

作っているところを動画に収めるPrometheusコントリビューター

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

連載バックナンバー

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CNCFによる中国人のためのイベントだったKubeCon China

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2018/12/26
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