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AIは実社会でどのように活用されているのか④ー画像認識(2)(Image Recognition)

2022年2月17日(木)
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)

はじめに

前回は店舗における画像認識の活用事例を見てきましたが、今回は駅や空港、駐車場などの交通機関および地域まるごと顔認証決済という取り組みなどを紹介します。現代の知識習得は動画活用がポイントですので、ベンダー各社が制作した動画も紹介しています。ぜひ、どこまで実現できているかを映像で確かめてみてください。

交通機関における画像認識

1. 電車

私のような切符世代にとっては駅の自動改札でさえ夢のような産物なのですが、さらに進化した「顔パス改札」が始まっています。進んでいるのはやはり中国で、2019年頃から深セン、成都、太原、鄭州、広州、南寧、昆明、西安、ハルピン、貴陽、福州など各都市の地下鉄で顔認証改札が続々導入されています。スマホで顔を登録して顔パス認証する様子を四川省の成都地下鉄の動画でご覧ください。

私のようにモバイルSuicaのタッチで満足している人も多いでしょうが、中国がやるなら日本もやらないわけにいかないかも知れません。日本はまだこれからですが、大阪の地下鉄とJR東日本が行っている実証実験ご紹介します。数年後には、誰もスマホを取り出さずにスイスイ改札を通り抜ける情景が見られるのでしょうか。

・Osaka Metro
自動改札は関西の私鉄がいち早く導入し、関東やJRはだいぶ遅れた感がありました。顔認証改札も同じように、まず関西私鉄がチャレンジしています。Osaka Metroは2019年12月から4つの駅で社員を対象にした顔認証によるチケットレス改札の実証実験を行っています。仕組み自体は単純で、①事前に顔写真を登録しておき、②駅の改札で顔認証をしてリアルタイムに照合するというものです(図1)。

図1:顔認証改札

実証実験の様子を撮影したOsaka Metro「Metro News vol.39」の動画をご覧ください。これを見るとマスクを着けていても認証し、スムーズに連続して顔パスで改札を通っている様子が伺えます。2024年度に全駅の改札口に1台設置することを目指しているそうです。

・JR東海
JR東海は、2021年11月から2022年1月まで品川駅と名古屋駅の一部改札機で社員を対象とした顔認証改札の実証実験を行っています。

<<Note>>顔認証と個人情報保護

JR東日本は2021年7月から東京オリンピックのテロ対策として、あらかじめデータベースに登録した対象者をカメラ画像で検知する新防犯システムを導入しています。対象者とは「JR東日本の施設内で重大な罪を犯して服役した人」「指名手配中の容疑者」「不審な行動を取った人」でした。

しかし、2021年9月21日に読売新聞が「刑務所からの出所者を駅構内で検知する防犯対策を実施している」と報道したころから大きな話題となり、容疑者や不審者の検知は続けるものの、服役した人(出所者)の検知は「社会的なコンセンサスがまだ得られていない」として取りやめました。

顔認証は改札だけでなく、いたるところでプライバシー保護の議論を呼んでおり、国や企業によってどこに境界線を引くかが難しい問題となっています。

2. バス(顔認証乗車と自動運転)

・山万ユーカリが丘線とコミュニティバス
千葉県佐倉市のユーカリが丘ニュータウンの都市開発を行っている山万株式会社は、パナソニック社、ジョルダン社と一緒に新交通システム「山万ユーカリが丘線」とコミュニティバスの顔認証乗車実証実験を行っています。

2021年5月からバスの顔認証乗車を行い、同年9月より山万ユーカリが丘線の全6駅の改札でも顔認証を導入しています。ニュータウン「ユーカリが丘」の人口は1万8千人だそうですが、すべての駅とバスで導入されるなら便利そうですね。JRのような大手だけでなく、独自に地域で取り組む姿勢は思わず応援したくなります。

・茨城県つくば市のバス乗車
スマートシティ構想を掲げるつくば市は産学官連携のもとで、2020年2月にバスの顔認証乗車の実証実験を行っています。こちらは、スマホを使った顔認証です。スマホなら安価なので多くのバスに配置しやすく、認証速度や精度が高まれば全国に展開しやすいでしょう。こちらも実証実験の動画をご覧ください。

・兵庫県三田市と群馬県前橋市の自動運転バス
三田市のウッディタウン地区を巡回する約6kmの神姫バス路線でも2020年7月20日から約1ヶ月間自動運転バスの実証実験が行われています。また、2021年2月には群馬県前橋市でも同じように自動運転バスの実証実験を行っています。これらの取り組みの目玉は自動運転ですが、乗車の際にタブレット端末の顔認証を使っています。

<<Note>>5Gと顔パス

スマホやタブレットを使った顔パス乗車は、クラウド上のデータベースと照会するので通信速度がとても重要になります。そのため基本的に回線は5Gを想定しており、全国への広がりは5Gの普及との兼ね合いもあります。

3. 空港

コロナ禍で飛行機と縁遠くなっていますが、実は2021年7月から羽田空港と成田空港で顔認証による搭乗手続き「Face Express」の本格運用が開始されています。図2のように最初に自動チェックイン機でパスポート情報を読み取って顔情報を登録したら、あとは手荷物の預け、保安検査場、搭乗ゲートをすべて顔認証で(パスポートや搭乗券を提示することなく)パスできます。

図2:Face Express【出典】日本航空Webサイトより

事前の利用登録やパスポートの提示などが一切不要ですべて顔パスというのはすごいですね。厳しい顔をした保安検査員と対峙するのを待つ長蛇の列の中で、なぜかドキドキしていた世代からすると隔世の感があります。

4. 船

大型クルーズ船の乗船にも顔認証が使われ始めました。乗船の際にカメラで顔を撮影し、事前に登録されている顔写真と照合して本人確認する仕組みです。乗船時にチケットや身分証明を確認する手間が省けるので、乗船の待ち時間が解消されるとともにスタッフの省力化も行えます。

地域まるごと顔認証

地域全体で顔認証(顔パス)サービスを提供してお客さんを呼ぼう。観光地などでそんな新たな展開が繰り広げられています。

・南紀白浜のIoTおもてなしサービス実証
NECと南紀白浜エアポート社は2019年1月から「IoTおもてなしサービス実証」を行っています。キーワードは顔認証です。飛行機やバス、ホテルなど個別に顔認証サービスを導入するのではなく、以下に示すようにエリア全体を顔パスで過ごせるという壮大な発想です。

  1. 出発する羽田空港のJALのショップ「BLUE SKY」で顔認証決済
  2. 南紀白浜空港ではサイネージがウェルカムメッセージを表示
  3. 観光案内所でレンタカーや現地ツアーなどの顔認証決済
  4. ホテルのチェックイン、顔認証ドア解錠、フロントで顔認証決済
  5. 南紀白浜の各店舗、飲食店、観光施設での顔認証決済

個人的に期待したいのがホテルの顔認証ドアです。これで大浴場へ行くときに誰がキーを持っていくかという悩みが解消され、風呂場でキーを盗まれる心配もなくなります。

・富山市の顔認証システム社会実験
富山市でも2020年10月から2022年3月までの予定で実証実験を行っています。取り組みの主体は顔認証決済で、観光施設やホテル、飲食店、お土産店などで顔認証決済ができるようになっています。

・静岡県「海の湖」顔認証決済実証実験
浜名湖エリアでも2021年3月に実証実験が行われました。自分のスマホを使って顔情報やクレジットカード情報を登録する方式で、宿泊施設や飲食店、観光施設のレジに置いてあるタブレット端末で顔認証決済を行います。

・石垣島の実証実験
石垣島でも空港や市内で「顔認証を活用したおもてなしサービス実証実験」を2021年11月から2022年1月にかけて実施しています。こちらは割引が主体で、新石垣空港到着ロビーで顔情報を登録して「あんしん島プレミアムパスポート」を受け取ると、観光施設やお店で顔認証して割引サービスの特典があります。

・その他
この他にも、顔認証決済やチケットレスの実証実験はさまざまなところで行われています。下記にいくつか紹介しますが、続々増えている状況です。数年後にはQRコード決済の時代から顔認証決済の時代に変わっているかも知れません。

著者
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
株式会社システムインテグレータ

東芝、SCSKを経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立し、現在、代表取締役社長。2006年東証マザーズ、2014年東証第一部上場。

前職で日本最初のERP「ProActive」を作った後に独立し、日本初のECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」を開発・リリース。日本初のWebベースのERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発し、統合型プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」、アプリケーション設計のCADツール「SI Object Browser Designer」など、独創的なアイデアの製品を次々とリリース。最近は、AIを利用したサービスに取り組んでいる。

主な著書に「Oracle8入門」シリーズや「SQL Server7.0徹底入門」、「実践SQL」などのRDBMS系、「グラス片手にデータベース設計入門」シリーズや「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」などの業務知識系、「実践!プロジェクト管理入門」シリーズ、「統合型プロジェクト管理のススメ」などのプロジェクト管理系、最近ではThink ITの連載をまとめた「これからのSIerの話をしよう」「エンジニアなら知っておきたいAIのキホン」を刊行。

「日本のITの近代化」と「日本のITを世界に」の2つのテーマをライフワークに掲げている。

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