AIは実社会でどのように活用されているのか④ー画像認識(2)(Image Recognition)

2022年2月17日(木)
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)

駐車場における画像認識

・車番認証
駐車場の発券と精算。あれ、シートベルトしたまま手を伸ばすのが大変だったりしますね。最近の駐車場は、入るときこそ駐車券を受け取りますが、事前精算機で精算を済ましておけば出るときは自動でゲートが開きます。これは駐車券を発券するときにカメラ画像でナンバープレートを読み取って紐づけ、出るときもカメラで読み取ります。駐車券を事前精算することで「このナンバープレートの車は精算済み」となってゲートが開くわけです。

もう一歩進んで、入庫の際も発券機を使わないスマートパークのような仕組みもあります。こちらは事前精算する際に自分の車両ナンバー4桁を入力し、車の写真を確認してから精算します。入出庫ともフリーパスで、ゲート機すら取り払っているところもあります(支払わずに出ると次回通知される)。私のように自分のナンバーを覚えていない人もいるので、忘れた人用にだいたいの入庫時刻で検索できるボタンもあります。もう一歩進んで、運転手の顔認証もして紐づけてくれると顔パス精算もできそうですね。

・満空監視
監視カメラで駐車場の満空状況をAI自動判別して、表示版やサイネージなどで車を誘導する仕組みも普及してきました。誘導だけでなく不正駐車監視、衝突などの証拠映像、来場者の属性や駐車時間の分析など、カメラを設置することで用途が広がります。こうしたサービスを提供する企業も増えてきました。図3はニューラルポケット社のニュースリリースの画像です。広大な駐車場でどのように画像認識をしているかがよくわかります。

図3:駐車場の満空把握【出典】ニューラルポケット社のWebサイトより

・衛星画像を使った駐車場の車両数検知
駐車場に設置されたカメラの代わりに衛星画像を使った画像分析も行われています。ここでは、そんなサービスを提供しているオービタル・インサイト社を紹介します。この会社は、世界各国の原油貯蔵タンクの蓋を上げ下げする画像から原油備蓄量を分析した事例で有名な会社です。この技術をリテールにも適用し、ウォルマートなど大型ショッピングセンターの駐車場の車両台数をカウントし、各店舗の集客力の推移を車両台数ベースで分析するサービスなどを提供しています。

道路における画像認識

・Nシステムとオービス
ナンバープレートを読み取るため幹線道路のあちこちに設置されている装置が「Nシステム」です。これは刑事ドラマにもよく出てくるように、警察が手配車両の追跡などの目的で設置しているものです。最新のNシステムは「オービス」と同じくナンバープレートと運転者や助手席を撮影できますが、スピード違反を取り締まる役目はありません。ただし、2018年から車検切れ検知にも使われるようになっています。図4を見ると、車検切れの車の場合には「HIT」と表示されています。

図4:Nシステムで車検が切れた車の検知【出典】Automotive media Renspose. 2017/9/15のニュースリリースより

実は、高速道路で発行される通行券にもナンバープレートの下2桁が印字されています。これは運転手同士がサービスエリアで通行券を交換して料金をごまかす不正を防止するためのもので、出口のカメラでナンバープレートを読み取り照合されています。

・ガソリンスタンド
ガソリンスタンドでもカメラを設置して車番認証システムを導入するところが増えてきました。給油やタイヤ空気入れなど過去の取引履歴情報がスタッフの腕時計に表示され、運転手への声掛けなどカスタマーサクセスに使われています。導入の主目的は車検獲得で、国土交通省の自動車情報提供サービスと連携して車検時期が表示されます。もちろん、防犯録画の役目も果たします。今度、ガソリンスタンドに立ち寄った際にカメラがあるか確認してください。これは「NXEYES」というシステムの動画がわかりやすいです。

・ドライブレコーダー
最近のドライブレコーダーはAI搭載を謳っているものが多く、車外だけでなく車内もモニタしてAIを使って映像解析し、次のようなサポートを行ってくれます。こちらはdocomoの「docoですcar」の動画を紹介します。

a. 自分の運転を自身に注意(個人向け)
 ・車間距離や追突の危険を警告
 ・車線逸脱や歩行者を注意
 ・あおり運転やふらつき運転を警告
 ・ながら運転や居眠り運転を警告

b. 自分の危険運転や事故を管理者に通知(企業向け)
 ・危険運転や交通違反、規則違反(スマホや喫煙)をリアルタイム通知
 ・事故レポートを自動作成
 ・遠隔から見たい映像を検索

・交通量調査
実は、学生の頃に交通量調査のアルバイトをよくやっていました。18時間とか長い時間働けるのでまとまったお金を手に入れるのに手っ取り早かったのです。でも、単に台数を記録するときは良いのですが、1回だけナンバープレートを記録する方式をやったことがあり、信号が変わって一斉に走ってくると間に合わなくて難儀した覚えがあります。

お察しの通り、最近ではカメラの映像データをAIが解析する方式に切り替わっています。私は夜中に眠い目を凝らしてやりましたが、カメラなので夜間でもばっちりです。新規出店に向けた交通量や歩行者数の調査、イベント来場者のカウントなどにも使えるので、いろいろな製品が出ています。ここではフューチャースタンダード社の「SCORER」という製品の動画を紹介します。

国土交通省が5年に1度行っている「全国道路・街路交通情勢調査」も、人手観測を廃止してカメラを使った方式に切り替わることになりました。

・交通誘導
交通量調査は単調な仕事なので、AIが代わってくれるのはありがたいですね。これに続いて、道路工事などで交通誘導する作業もAI方式に切り替わりつつあります。カメラと大型サイネージを組み合わせてカメラで車を検知し、サイネージで「止まれ」や「進め」などの交通誘導を行うものです。こちらもいろいろな製品が出ていますが、ここでは「KB-eye」いう製品の動画を紹介します。

おわりに

AI画像認識の第2回は、交通を中心とした活用を取り上げました。まだ実証実験にとどまっているものもあれば、すでに実用化されて進化を続けているものもありますね。気がつけばいたるところにカメラがあり、この先さらに撮られまくる社会になっていくことが実感できたと思います。

著者
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
株式会社システムインテグレータ

東芝、SCSKを経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立し、現在、代表取締役社長。2006年東証マザーズ、2014年東証第一部、2019年東証スタンダード上場。

前職で日本最初のERP「ProActive」を作った後に独立し、日本初のECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」を開発。日本初のWebベースのERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発し、統合型プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」など、独創的なアイデアの製品を次々とリリース。

主な著書に「Oracle8入門」シリーズや「SQL Server7.0徹底入門」、「実践SQL」などのRDBMS系、「グラス片手にデータベース設計入門」シリーズや「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」などの業務知識系、「実践!プロジェクト管理入門」シリーズ、「統合型プロジェクト管理のススメ」などのプロジェクト管理系、最近ではThink ITの連載をまとめた「これからのSIerの話をしよう」「エンジニアなら知っておきたいAIのキホン」「エンジニアなら知っておきたい システム設計とドキュメント」を刊行。

「日本のITの近代化」と「日本のITを世界に」の2つのテーマをライフワークに掲げている。

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