子どもたちの「笑顔」が仕事の原動力

2023年12月13日(水)
宮川 文吾
本連載では、演出家であり脚本家である著者の経験から、他業種の視点でエンジニアに役立つ知識などを紹介していきます。

皆さま、はじめまして。演出家・脚本家を名乗らせていただいております、宮川文吾と申します。神戸市出身で、脂が乗りまくり、もはや脂しか乗っていないテッカテカの49才です。

今回、ご縁があってコラムを書くことになりました。演出方法やキャラクターのセリフ、物語の展開などを例に「アイデアの作り方」や「人を感動させるテクニック」などについて、何か皆さまの参考になれるようなものをお届けできるようにしたいと考えています。ITエンジニア向けWebメディアの読者の皆さまには全く関係ないと思われる話題が続くこと請け合いですが、「他業種から学べることも数多くある」という気持ちで、生暖かく見守っていただければと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします!

子どもたちの笑顔が力になる

ところで、私はアニメの脚本を書いたり、テーマパークのショーを演出したりと、ちょっと変わったお仕事をさせていただいています。「はなかっぱ」や「ベイブレード」をはじめ、某夢の国や某映画の国など、子どもたちの笑顔が原動力のお仕事でもあります。

このコラムをご覧いただいている方の中にも、小さなお子さんがいらっしゃるお父さん、お母さんがいるかもしれませんが、特にNHKのEテレで現在も放映されている「はなかっぱ」という朝の5分アニメは、私が脚本家としてデビュー間もない頃から書いている愛すべき作品の1つです。子ども達の日常の何気ない行動をネタにして、面白くも可愛らしいエピソード満載の作品となっています。

毎日の子育てって大変なことも多いですが、楽しく面白いこともたくさんですよね。以前、脚本のネタ探しに子連れのお母さんが集まる公園によく通っていました。ベンチに座って子ども達の会話に聞き耳を立てるという、不審者のようなことをしていたときがあるのですが、ある時、幼稚園くらいの2人の男の子が、

「ぼくのママ、お絵描きがすっごく上手なんだよ! アンパンマンとか!」
「ぼくのママだってすっごいんだよ。毎日お顔にお絵描きして、キレイなお姫さまに変身するんだぜ!」

なんて会話をしていたことがありまして。それが元で「ぼく、どんな顔だっけ?」というはなかっぱの第1話を書かせていただいたことがあります。引きつった笑顔のお姫様以外は、そのかわいいやり取りに公園中が笑顔いっぱいになりました。たとえ見ず知らずのお子さまだったとしても、その笑顔に「よし、頑張るぞ!」と思えたりするものです。

大人になると笑顔が減る?

ご存知ですか? 子どもって1日に笑う回数が平均して350回程あるのに対して、大人は平均15回ほどしかないんですって。子どもの頃はあんなに毎日笑顔だったのに、知らず知らず、年を重ねる毎に笑顔が減り、逆に人に対して怒ったり不満を持ったりする回数が増えてしまうのはなんなんでしょう。

「なるべく自分の子ども達には笑顔でいてほしい」と思っているのに、自ら笑顔の回数を減らしてしまうような行動を取ってしまったりするんですよね…

息子がまだ幼かったある時、

「大人になると怒られなくなるの?」

と質問してきました。そのときは「大丈夫。大人になっても、ちゃんと怒られるよ。大人なのに、すごく怒られることもあるよ」と教えたことを覚えています(ですよね?)。

イヤなことも笑顔で乗り切る

私が新人作家だった頃、番組プロデューサーから新人向けの意地悪なダメ出しをかなりくらいました。結果を出して実績が出てくると細かいところは言われなくなるのですが、「はなかっぱ」1年目くらいの時なんて、

「君の本からは、どうもリアリティが感じられないんだよね-」

という、ふんわりとした謎のダメ出しをいただききました。

(頭に花が咲くカッパの話を書いてるのに、リアリティって!!)

そのときは、そんな叫びが心に浮かびましたが、笑顔で「はい、直してきます!」と引き取り、翌週には素知らぬ顔で同じ原稿を再提出したら、すんなりOKをもらうことも。大人って割といい加減ですよね。

意外と、皆さんが今怒っている(としたらその)内容も、自分の怒りの根拠も、冷静に考えると「そこまでじゃないな」ってこともありますよね、きっと。

それでは、また!

1974年生まれ。演出家・脚本家。コンサート演出、フェス演出、テーマパークショー演出など多岐に渡る。脚本代表作は「はなかっぱ」「ベイブレードバースト神」などアニメ作品が中心。

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