自分の「代名詞」とも言うべき「セリフ」を考える

2024年4月11日(木)
宮川 文吾
本連載では、演出家であり脚本家である著者の経験から、他業種の視点でエンジニアに役立つ知識などを紹介していきます。

3月に入ってからメチャクチャ風の強い日が続いていましたが、皆さま飛ばされずにお過ごしですか。宮川文吾です。こんにちは。

絶賛「体重を元に戻そうキャンペーン」中の私ですら軽く吹き飛んでしまいそうな日が連続でありましたね。「いやいや、飛ばされる訳ないやろー!」って、テンパっている時は、このように1人ボケ突っ込みで気分転換することを心からオススメ…しません。空しさと寂しさと心弱さが突風のように押し寄せてきます。ね? ちょっと今おかしいでしょ? 今回はこのようなノリでお届けします。

口癖から見るコミュニケーションスタイルと印象形成

ところで皆さんは、何か口癖などはあるでしょうか。先日、私の担当編集者が新人の女の子に代わったのですが、彼女、会話の中でメチャクチャ「あの」とか「あのー」とか入れるもので、すごく気になって打ち合わせ中なのにノートに正の字で数えてみたんですよ。すると、なんと63分の打ち合わせで166回! めちゃスゴくないですか?

正直、打ち合わせの内容よりも彼女にものすごく興味が湧きまして。名前は覚えてないけど、

「宮川さん、うちの新人。何か迷惑かけませんでした?」
「! ああ、あの『あの』の娘やろ?」

って。私、人の顔を覚えるのは少々苦手なのですが、こういう口癖的なものがあるとすっごく相手の印象に残りますよね。

例えば、(我が)阪神タイガースの岡田監督は、インタビュー中に

「おーん」

という自己相づち(?)とも呼べる有名な口癖があります。もちろん、この「おーん」に特に意味はないと思われ、間を取るためのものと推測されるのですが、新聞やネットニュースのインタビューでは、度々文字化されています。

-3連戦はすごい勝ち方
「おーん、まあでも、別に変わったこともやってないしな、ちゃんと、ね、逆転されたり、そんなんもあるわけやからな、投手もそらそんなず~っと抑えられへんから。なんとか追いかける時にはみんながな、おーん、ちょっと代打攻勢っていうかな、おーん、なんかみんなでやるっていうそういう雰囲気をちょっとな生み出さなあかんしと思って」

(※デイリースポーツ記事より抜粋)

こんな風に書かれていたら、実際どんな話し方をするのかメチャクチャ気になりませんか? ていうか、しゃべってるところを見掛けたら、いつ「おーん」が登場するのか、期待して注視しませんか? まさに「よしもと新喜劇」の定番ギャグ状態! ですね。

キャラクターを象徴する名ゼリフとその魅力

こういう名言とも言うべき口癖って色々ありますよね。ドラえもんなら、のび太の「ドラえも~ん」がいつ出てくるか気になるし、具志堅用高さんなら「ちょっちゅねー」だし、いかりや長介さんなら「ダメだこりゃ」を期待するし。ルパン三世なら「不二子ちゅあーん」、石川五右衛門なら「また、つまらぬものを切ってしまった……」、ジョジョの奇妙な冒険の岸辺露伴なら「だが、断る!」。ちびまる子ちゃんからは「うーん、いけずぅ」が聞きたいし、新世紀エヴァンゲリオンだったら、アスカに「あんた、ばかぁ?」って言われてみたいし。……言われてみたいし?

つまり「代名詞」とも言えるフレーズやセリフがある人物ってとても印象に残るし、注目度が抜群に上がるんですね。

私はアニメ脚本家なので、そういう意味での傑作は「キャプテン翼」です。皆さんは「キャプテン翼」と言えば、どんなフレーズを思い出しますか?……そうです。「なにィ!」ですね。ボールを奪われれば「なにィ!」。ゴールを決められれば「なにィ!」。必殺シュートの体制に入られれば「なにィ!」。小学生の翼がライバル校の若林源三の庭に「挑戦状」と書いたサッカーボールを500m離れた丘の上から蹴り込めば「なにィ!」。お母さんに呼ばれれば「なにィ!」。

この「なにィ!」は万能で、なんと主人公の翼くん以下、登場人物のほとんどが叫び、作品としての印象を抜群に上げました。ちなみに、トップは石崎くんと日向くんで、90なにィ。3位は次藤くんと松山くんで、38なにィでした。意外。しかし、石崎くんの貢献度は高いですね。

このフレーズは、日常生活にも応用ができて、原稿を書いたデータを誤って消してしまったら「なにィ!」。気づいたら〆切が過ぎていて「なにィ!」。スーパーでお金が足りなかったら「なにィ!」。これで万事解決。

あなたがもし、人に話す機会が多い立場や職業でしたら、ぜひ非今からでも意識して、自分の代名詞となるキーフレーズを考えてみることです。印象や期待値は莫大に上がること請け合いです。

え? 私? 私のキーフレーズですか?「あー、もう本当にすみません。えへへ……」です。宮川、また謝ってごまかしてるよ……えへへ……。それでは、また!

1974年生まれ。演出家・脚本家。コンサート演出、フェス演出、テーマパークショー演出など多岐に渡る。脚本代表作は「はなかっぱ」「ベイブレードバースト神」などアニメ作品が中心。

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