ばらばらのファイルサーバーを統合!
ファイルサーバー統合の際の注意ポイント
1つ目の注意点は、導入コストだ。これまでは、部門でコスト分散してファイルサーバーを導入していたものが、専用NASを導入するとなれば、企業全体での検討項目となるであろう。第1回でも紹介したように、今後の企業データは急激に増加する傾向にあることを十分に認識した上で、既存環境での運用で耐えうるかを検討しよう。
2つ目の注意点は、ネットワーク帯域である。同じ拠点内における、高速なLANを介してのファイルサーバー統合であれば、アクセススピードに心配は無い。一方、複数の拠点にあるファイルサーバーをデータセンターなどに集約した場合は、WAN経由でのアクセスとなるため、パフォーマンス低下が気になるところである。
よって既存環境のネットワーク状況を把握して統合に耐えうるかを評価することになる。その結果、ネットワーク環境の見直しが必要となった場合は、WAN自体の帯域を増やすことを検討するのはもちろんだが、WAN環境をそのままに残しつつ、アクセススピードを上げる「WAN高速化装置」の導入も検討してみよう。WAN高速化装置にはいくつかの高速化アプローチがあるので、どれが既存環境に適しているかを把握すると共に、コストシミュレーションも必要である。
3つ目の注意点は、災害対策だ。ファイルサーバーを統合するということは、インフラの集約となる。その場合、集約したサイトで災害などに見舞われた場合、一挙にデータを失うリスクが伴うことを念頭に置かなければならない。よってファイルサーバーの統合を検討し始める際には、同時に災害対策も計画に含めておく必要がある。
専用NASには、データのクローンコピーやレプリケーション(複製)に対応している機種が多いので、どのように実現できるのかを確認しておこう(図3)。
もちろん、データをテープなどにバックアップしておいて、遠隔地に保管しておくことも災害対策の第一歩であるので、まずはそこから検討してほしい。ただ、遠隔地にテープを保管する運用では、万が一の災害では復旧するのにかなりの日数が掛かると考えられる。また正確にデータを元に戻すことができるか保証しがたいことも確かである。導入予算と要件が見合えば、ディスクへのデータ複製を行うこと検討したい。レプリケーションは、遠隔地にWAN経由で複製を作成することになるため、運用次第では即時の復旧も可能である。
非構造化データを統合管理
ファイルサーバーに保存されるタイプのデータを「非構造化データ」と呼ぶ。これは、HTMLやMicrosoft OfficeやOpenOffice.orgなどで作成された文書、PDFファイル、文書内の写真や画像など行や列の形式で保存されていないデータである。このようなデータを効率よく管理するには、ファイルサーバーを統合するだけでは解決できない。最後にこうした課題を解決するソリューションとして「ECM (enterprise content management):エンタープライズコンテンツ管理」である。
ECMは企業レベルでコンテンツアプリケーションを統合し、コンプライアンスの順守や管理コスト削減など、多くの企業が抱える問題の解決を図る方法論である。次回はECMによるデータ管理について詳しく解説する。