UNIX系OSを比較検討する~まとめ

2009年7月10日(金)
大村 幸敬

AIXを比較検討する

 AIXはIBMが販売しているUNIXです。主にIBMのPower Systemsシリーズで稼動し、基幹システムのDBサーバーなど企業でも重要な領域で使用されます。動作するハードが特殊なこともあり、利用経験がある方は少ないのではないでしょうか。

 現在の最新バージョンは6.1です。動作環境は一般的に利用されているIntelプロセッサではなく、IBM社のPowerプロセッサを搭載したサーバーになります。以前はAIXはIBM社のSystem iとSystem pシリーズで動作していましたが、2008年4月にこれらを統合し、Power Systemsというシリーズに一本化されました。IBM以外では日立のEP8000シリーズなどで動作します。

 各種のエンタープライズシステム向けミドルウエアが動作するほか、基幹系業務アプリケーションも対応しています。AIXはバイナリ(プログラム)の後方互換性を確保しており、旧バージョンのAIXで動作したバイナリは新バージョンのAIXでも動作するようになっています。基幹業務で長期間利用されるサーバーOSならではの機能といえます。

 ハードが専用のものになるためメーカーは限られてしまいますが、ハード・OSを含めたメーカーのフルサポートを受けられます。障害調査などでも徹底的な調査が可能である点は専用ハードで動作するUNIXならではの特徴でしょう。

 運用という観点では、ほかのUNIXやLinuxが操作できればそれほど違和感を覚えることはありません。ただ、デフォルトシェルはkshというシェルであり、bashを採用しているLinuxに比べると、補完が効かない、コマンドが編集できないなど、不便さが目立ちます。設定次第で変わるのかもしれませんが、筆者が以前障害対応でAIXを操作したときは、もろもろの事情で素のkshが使用されており、長いコマンドを打ち間違えたときなど、bashのありがたみを身に染みて感じたことがありました。

 基幹系で使われることから、高いレベルの運用管理が求められるのでしょう。IBM社のTivoliはもちろんのこと、JP1やSystemwalkerなど、多くの運用管理ソフトウエアでエージェントが対応しています。

 仮想化機構としてはPower Systemsのハードウエアが持つLPARという仮想ハードウエア区画の上で動作が可能です。さらにOSであるAIXの機能と連携して、アプリケーションを動作させたまま筐体(きょうたい)間を移動するLive Partition Mobilityという機能が利用できます。これはVMwareでいうVMotionと同様の機能です。そのほか、ダイナミックLPARという機構によって、稼動中にCPUやメモリの割り当てを変更することも可能です。

 IAサーバー上で仮想化環境が利用できるようになってきたのはここ数年ですが、メインフレームやUNIXが動作するサーバーでは、もっと以前から仮想化機構が実現されています。

 安価なサーバーを複数台利用して信頼性を確保する、というIAサーバーの考え方と、高価だが高信頼なハードウエアを仮想化で分割し、複数のサービスを提供する、というUNIX専用ハードの考え方とでは、実は信頼性に関する考え方が大きく違っています。その上でリソース配分をどのように行うか、という効率性についてもUNIXサーバーでは各種の機能が搭載されており、1台のサーバーを分割する、という意味の仮想化機能についてはUNIX(およびその動作ハード)のほうが一日の長があるといえるでしょう。

No. 評価ポイント 評価 コメント
(1) 業務系アプリケーションの対応状況 ★★★★☆ 基幹系の業務アプリケーションが多い。
(2) 既存運用・構築経験への適合度 ★★★☆☆ 操作感はLinuxや他のUNIXと同様。既存メーカーから変更する場合は保守体制等の検討が重要。
(3) ハードウエアの対応状況 ★★★★★ 専用ハードにより、ハードとOSが一体となった高信頼システムを構築可能。
(4) 運用系ソフトウエアの対応状況 ★★★★★ 基幹系用途が多く、運用管理ソフトウエアによる管理を行うことがほとんど。
(5) OSのサポート期間 ★★★★★ 同一バージョンは約5年間利用可能。バージョンアップしてもバイナリ互換性あり。
(6) 仮想化への対応状況 ★★★★★ ハードと連携した仮想化(IBM PowerVM)および強力なリソース配分・管理機能。

表2-1:AIXの評価ポイント

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No. 評価ポイント 評価 コメント
(1) 業務系アプリケーションの対応状況 ★★★★☆ 基幹系の業務アプリケーションが多い。
(2) 既存運用・構築経験への適合度 ★★★☆☆ 操作感はLinuxや他のUNIXと同様。既存メーカーから変更する場合は保守体制等の検討が重要。
(3) ハードウエアの対応状況 ★★★★★ 専用ハードにより、ハードとOSが一体となった高信頼システムを構築可能。
(4) 運用系ソフトウエアの対応状況 ★★★★★ 基幹系用途が多く、運用管理ソフトウエアによる管理を行うことがほとんど。
(5) OSのサポート期間 ★★★★★ 製品出荷から最低10年間サポート。
(6) 仮想化への対応状況 ★★★★★ ハードと連携した仮想化(HP VSE)。

表2-2:HP-UXの評価ポイント

インテック
株式会社インテック ITプラットフォームサービス事業部所属。社内のLinux/OSS事業立ち上げに参画後、金融機関を中心に大規模システム基盤の提案・構築・運用サポートを担当。
Linuxから仮想化を経て、現在はクラウドの中身が気になる日々。
http://www.intec.co.jp/

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