第11回:ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(後編) (3/3)

VMware ESX Server サーバ統合ガイド
VMware ESX Server サーバ統合ガイド

第11回:ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(後編)

著者:デル   2006/9/4
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L2(2次)キャッシュの容量と性能との関係

   CPUに搭載されているL2キャッシュの大きさと性能との関係を調べるため、L2キャッシュが1MBの3.6GHzプロセッサを、L2キャッシュが2MBの3.6GHzプロセッサに交換して検証しました。交換したプロセッサですべてのテストを繰り返し、前回のテスト結果と、L2キャッシュ量を2倍にしたときの結果を比較しました。両方のプロセッサともハイパースレッディングを有効にし、3台の仮想マシンはいずれも1基の仮想CPUで構成しています。
ユーザ数 ESXのCPU利用率(%):
3台のVMと1MBのL2キャッシュ
ESXのCPU利用率(%):
3台のVMと2MBのL2キャッシュ
10 34 30
20 60 52
30 88 72

表1:プロセッサのL2キャッシュ・サイズがESX ServerホストのCPU利用率に及ぼす影響

   表1からわかるとおり、ユーザ数(スレッド数)が増えるほど、大きなL2キャッシュの効果が顕著になります。大容量のL2キャッシュは、たとえユーザ数が増えても、小さいL2キャッシュに比べてESX ServerホストのCPU利用率を抑えることができます。

   Online DVD Storeは、その性質上ワークロードが一定することはなく、また、データベース・システム・ディスクへの読み書きが発生します。したがって、L2キャッシュが大容量になれば、より多くのデータがキャッシュ内に保持でき、メモリに比べて低速なディスク・サブシステムへのアクセス回数を減らすことができます。

   プロセッサ・キャッシュ内のデータにはより高速にアクセスできるので、CPUサイクルも素早く解放され、ESXServerカーネルがスケジュールする他のタスクにCPUサイクルを回すことができます。

CPUキャッシュの容量と、ESXのCPU利用率との関係
図4:CPUキャッシュの容量と、ESXのCPU利用率との関係

   図4を見ると、2MBのL2キャッシュを搭載したシステムで3台のVMをホストすると、ESX ServerシステムのCPU 利用率は70%前後にとどまりますが、1MBのL2キャッシュでは88%まで到達することがわかります。一般に、L2キャッシュ容量が増えると、ESX Serverソフトウェアのホスト能力が高まり、ESXサーバ上の仮想マシン数を増やすことができます。

   これを実証するため、ESX Serverにもう1台のVMを追加し、他の3台のVMと共に、ワークロードを30ユーザにまで増やしました。このようにL2キャッシュ量を増やし、4台のLAMP VMを稼動してユーザ数を変えていくテストを実施したところ、ESX Serverシステムは、OPMスループットを大幅に落とすことなく、4台のVMの稼動を良好に維持することができました。図5は、このデータをグラフにしたものです。

1台のホストで3台および4台のVMを稼動したときの、VMあたりのOPM平均値
図5:1台のホストで3台および4台のVMを稼動したときの、VMあたりのOPM平均値

   図5を見れば明らかなとおり、1台のESX Serverは、たとえ4台の仮想マシンをホストしても、各仮想マシンで良好なOPMトランザクション性能を維持することがわかります。図5に示したOPMデータは、VMごとの平均値であって、ESX Serverホスト全体のスループットではありません。

   本連載のデータを参考にするときは、これらが各VMに中程度〜重い負荷をかけたときのテスト結果であることに注意してください。稼動しているVMの利用率がこれより低い場合は、1台のESX Serverホストでより多くのVM数が稼動できる可能性があり、コンソリデーションの比率がさらに高まります。

   ハイパースレッディングの箇所で述べたとおり、1台のESX Serverホストで運用できる最適なVM数とは、VMの利用率に関わらず、希望する性能レベルを満たすか否かが最終的な決定要因となります。たとえば、IT組織のSLA(サービス・レベル合意)を満たすには、どれくらいの応答時間、スループット性能、ホスト全体の利用率を達成すればいいのか検討します。

   したがって、図5のように、たとえシステム自体には4台のVMを実行する能力があっても、ESX Serverホストを業務環境で運用しているシステム管理者によっては、突発的な処理量の増加やVMotionを通したVMのフェイルオーバに備えるため、VM数を3台以下に抑えて、予備のリソースを十分に確保する方を選ぶ場合もあります。


まとめ

   LAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)スタック上で中規模(データベースの大きさ=1GB)のOLTPワークロードを処理する場合、ESX Server 2.5.1ソフトウェアを搭載したDell PowerEdge 1855ブレードサーバは、最小でも2台の仮想マシンをホストするのに適したプラットフォームとなります。

   ESX Serverホストでハイパースレッディングを有効にしたときは、データベースへの同時アクセス・ユーザ数を増やすことで、最大8%の性能向上が達成できました。ESX Serverホストでより多くのVM数をホストする場合、または、ESX ServerホストのCPU利用率を減らす場合、大容量のL2キャッシュを搭載した物理プロセッサを推奨します。

   L2キャッシュの容量を1MBから2MBに倍増すると、ESX ServerのCPU利用率が18〜20%下がり、リソースに仮想マシンをもう1台増やす余力が生まれます(VM数を増やすと、その分、他のVMに性能劣化が生じますが、影響はわずかです)。

   以上のテストおよび分析結果から、VMあたりの処理ユーザ数とVM数が増えても、ESX Serverシステムは、良好なレベルのOPMスループットを発揮できることがわかりました。ESX ServerシステムのCPU利用率を評価し、上限を適切に定めるときは、判断基準として「VMごとのスループット」と「ESX Serverホスト全体のスループット」が利用できます。

   ESX Serverのリソース利用率(たとえばCPU利用率など)を調べ、本連載に示したような評価方法を参考にすれば、IT組織が目標とするSLA以上の運用性能を達成することも可能になります。

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デル株式会社
著者プロフィール
著者:デル株式会社
デルはスケーラブル・エンタープライズ戦略の重要な要素の1つとして、VMware社の仮想化技術を用いたサーバ統合ソリューションを提供しています。業界標準技術を採用した、デルのPowerEdgeサーバとDell | EMCストレージから構成されるハードウェアプラットフォームと、仮想化ソフトウェア「VMware ESX Server」、仮想マシン管理ツール「VirtualCenter」、仮想マシンの無停止マイグレーション技術「VMotion」を組み合わせることにより、柔軟でコストパフォーマンスに優れるサーバインフラストラクチャが構築可能です。

http://www.dell.com/jp/


INDEX
第11回:ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(後編)
  LAMPの性能とサイジング
  ESX ServerシステムあたりのVM数
L2(2次)キャッシュの容量と性能との関係
VMware ESX Server サーバ統合ガイド
第1回 VMware関連基礎用語
第2回 仮想化環境の設計と物理サーバから仮想マシンへの移行方法
第3回 サーバの構成
第4回 インストール時の注意点とチューニングポイント
第5回 SANブート
第6回 ブレード・サーバへの導入
第7回 Dell PowerEdge 1855ブレードサーバのVMware VMotion性能
第8回 ブレードサーバで構築するVMware ESX ServerのVLANネットワーク
第9回 VMware ESX Serverの性能〜ベンチマークテスト
第10回 ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(前編)
第11回 ブレードサーバのLAMP性能特性とサイジング(後編)
第12回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(導入編)
第13回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(仮想化CPU機能編)
第14回 メール・プロトコル環境における仮想CPU(リソース管理編)
第15回 デュアルコア・サーバによるVMware ESX Serverの性能向上

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