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かつて海外と関わるITエンジニアの仕事と言えば、外資系ベンダーなどで働くエンジニアが、本国のエンジニアと関わることぐらいだった。輸出や海外生産などをいち早く展開してきた自動車や家電など他の製造業に比べ、エンジニアが海外と日常で関わる機会が少ない業界だったと言えるかも知れない。だが、現在ではどうだろうか。約1600人のエンジニアから回答が寄せられたアンケートによれば、海外と関わる仕事をしていると応えたITエンジニアの比率は24%にもおよんでいる。実に4人に1人弱が、海外と関わっているのだ。
次に、海外と関わる仕事をしていると応えてくれたITエンジニアの中から200名をピックアップしてその仕事内容を調べたところ、依然として海外の開発スタッフとのやりとりをしているという例の多いようだ。また、オフショア開発に関連する業務を担っているエンジニアも多く、ソフトウェアの海外委託開発が一過性のブームではなく、定着したスタイルとなったことを示している。
その一方で、海外拠点を含む社内システム統合といった新しいスタイルもいくつか見られた。オフショアに関してもプログラム製造だけではなく、サーバの保守・運用といった案件に加え、さらに下請けというイメージを覆す、グローバルなソリューション・プロジェクトの一環としてオフショア開発を活用しているという例もあった。少なくとも海外と関わるITエンジニアの仕事は量も内容も拡大しているようだ。
海外出張や海外赴任をしなくても、国内企業で日本にいながらにして海外と関わっていると答えてくれたITエンジニアが一定数いたことも、新しい傾向と言えるのかも知れない。

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海外と関わる仕事ともなれば、気になるのは語学力。特に英語力だろう。まずはどのようなシーンで英語が必要なのかを調べたところ、興味深い傾向が見えた。海外と関わる仕事をするITエンジニアの80%以上から回答があったのは、文章読解とメール交換。つまり英語による読み・書きの仕事である。聞く・話すが主となるプレゼンテーションや交渉といった実務は、それぞれ30%前後とそれほど高くない。コミュニケーションの多くは読み・書きによって行われているのである。
では、その英語力はどれほどのものなのだろうか。TOIECの点数分布を見てみると、900点台から200点台まで広範囲に広がっている。平均点の652点は日常会話に困らないレベル。200点台でも仕事になるのだろうかという疑問が起る一方、900点を超える準ネイティブとも言えるエンジニアも少なくない。ただ、ここで見逃せないのは、900点台のエンジニアであっても国民性や商習慣の違いに頭を悩ませているという回答が複数あったことだ。多くのエンジニアは、言葉の壁と文化の壁に苦労しているのである。
その反面、海外と関わる仕事はやりがいも大きいようだ。言葉や文化の壁を乗り越えて得た仕事上の達成感を、多くのITエンジニアが挙げている。ワールドワイドなスケール感にやりがいを見つけているITエンジニアも少なくない。総じて高いハードルではあるが、それを乗り越えた時の満足度が高い仕事と言えるだろう。

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