TOP>キャリアアップ> 第18回:バブル時代が懐かしい?エンジニア福利厚生の実情 IT転職百科事典 第18回:バブル時代が懐かしい?エンジニア福利厚生の実情 編者:Tech総研 2007/3/7 次のページ 企業への忠誠心と働きがいを支えたのは、給与や地位よりも、案外、福利厚生の充実だったかもしれない。かつては自前の保養施設で大宴会というのが、福利厚生の象徴だった。さかのぼれば、バブル時代は就職戦線も今とはかなり違っていた。とりわけ新卒採用活動の騒々しさは今の比ではない。企業訪問での交通費支給は当たり前、夜は飲ませてもらったうえに、手みやげをもたされたという学生もいる。他社面接を阻止するための身柄拘束旅行なんてものもあった。 優秀な人材を確保するために、企業が宣伝したのが福利厚生。休日数の多寡はどこも大差がないので、差別化アイテムはおのずから社員寮や保養施設の贅沢さになった。中小企業に多かったのが、「社員旅行がハワイ!」というのも福利厚生の一環として語られたような記憶がある。 読者の会社の40歳前後の社員たちにも、いまだその頃の記憶が忘れられない人もいるのではなかろうか。さて、昭和バブルの崩壊(1991年)からはや16年。今日本企業の福利厚生はどうなっているのだろう。 バブル崩壊以降、日本企業が向かったのは福利厚生の削減または「持たざる福利厚生」という考え方だった。社員寮や保養施設を自前で抱えるほどの余裕はなく、他の遊休施設と一緒に手放した企業も多い。現在は、「社員寮」とは名ばかりで、実質は民間アパートを会社が借り上げる、あるいは一部家賃を負担するというケースのほうが多いだろう。保養施設も健康保険組合などがかろうじて維持する施設を複数の企業が共同で利用するという仕組みのほうが一般的だと思われる。 福利厚生制度は維持するものの、住宅などのハードウェアではなく、資格試験補助などのソフトウェアを重視するようになったのも、バブル崩壊以降の流れだ。仕事の生産性により直接的に結びつく方向に福利厚生のメニューを改めた企業も多い。 「カフェテリアプラン」などがその例だ。カフェテリアプランとは、従業員が一定額のポイントを使って福利厚生メニューを選択できる制度で、メニューには資格試験受験料、書籍購入、通信教育受講料補助などの自己啓発、人間ドック費用、保険外治療などの健康・医療支援が並ぶ。ベビーカーやチャイルドシートなど育児用品購入費の一部を補助するという企業もある。 バブル崩壊以降、縮減が進んだ企業の福利厚生だが、景気回復に伴う人材採用の困難という状況の下で、再び見直しが進む傾向があるようだ。日本経団連が今年1月にまとめた2005年度の福利厚生費調査によれば、企業が負担した従業員一人あたりの福利厚生費は、月平均10万3722円。前年度比1.3%増で過去最高を更新したという。ちなみにバブル絶頂期の1990年でも7万4482円。日本企業の福利厚生費は、意外にもこの30年というもの一貫して増え続けているのである。 ただし、この10万円強という数字には、社会保険料など企業の拠出分である「法定福利費」も含まれている。法定福利費は福利厚生費全体の7割を占める。雇用保険、労災保険、厚生年金保険などの料率が上昇しているため、それが全体を押し上げた結果のようだ。 住宅手当や保養施設、資格試験補助など企業が任意で行う福祉政策の費用「法定外福利費」は2万8286円で、前年度比0.1%とほぼ横ばいだ。90年が2万5882円だから、それに比べても8.5%の伸びに留まる。ただ、近年は健康・医療や介護・育児などのライフサポートの伸びが目立っているという。 日本企業の労働者の働きすぎを戒め、仕事と生活のバランス(ワーク・ライフ・バランス)を取るという考え方が生まれてきた。少子高齢化時代に、従業員の仕事と子育ての両立をサポートすることも、企業にとっての新たな課題になっている。またメタボリックシンドロームなど生活習慣病の改善に企業の健康保険政策が果たす役割も期待されている。これからの福利厚生は、こうした課題を実現する手段として用いられていくのかもしれない。 それでも「持たざる福利厚生」という考え方自体は、現在も一貫している。その結果、福利厚生代行(アウトソーシング)という新しいビジネスも生まれてきた。福利厚生代行は、代行会社が受託企業の従業員にホテルなど宿泊施設の利用や各種講座などの福利厚生メニューを提供するもの。企業負担(受託料)は従業員一人あたり600〜800円程度が相場だといわれる。景気回復で、従業員の士気向上にある程度の出費は必要と考える企業が増えてきたため、受託料は上昇する傾向だ。 それではエンジニアの福利厚生の実態はどのようなものだろうか。25〜44歳のソフトウェア/ハードウェア系のエンジニアにアンケートを行い「手当」「休暇」「残業代」の視点から紐解いていく。続きはこちら>> 次のページ IT転職百科事典 第1回 都心vs地方の最大格差は2割! 地域別年収差を徹底比較 第2回 もしも平賀源内が35歳でレジュメを書いたら 第3回 KDDIテクノロジー斉藤社長が欲しい「究極のレジュメ」 第4回 一般人理解不能…ここまでズレてる「エンジニア時間」 第5回 大手ITベンダー“在宅勤務”一斉導入の真意 第6回 IT業界の給与格差を探る!元請と下請でいくら違う? 第7回 仕事の“やり損”を回避せよ!世渡り上手な自己PR術 第8回 外国人のホンネ「ソコがヘンだよ!日本人エンジニア」 第10回 業種明暗も!2006年冬のエンジニアボーナス平均80万円 第11回 梅田望夫氏が提案“2007年ITエンジニア進化論” 第12回 年収250万円未満で働く30代エンジニアの胸の内 第13回 人事が証言!大手が若手IT技術者を欲しがる理由 第14回 転職で年収アップを狙え!大作戦/レジュメ・面接編 第15回 世界に知られるオープンソース言語「Ruby」を作った、まつもとゆきひろ 第16回 次世代Webサービスの本命、SNSの展望 第17回 男性の皆さんわかってよ!女性SEの仕事へのキモチ 第18回 バブル時代が懐かしい?エンジニア福利厚生の実情 第19回 IT企業の悪しき慣習を破る!技術屋社長の社内制度 第20回 「あるある」「ねーよ!」巷のエンジニア都市伝説 第21回 登大遊@PacketiXは好奇心の振幅が非常に広い 第22回 職種別 採用天気予報 [07年4〜6月期] 第23回 2万人の年収比較!IT系職種は本当に給料が安い? 第24回 我ら“クレイジー☆エンジニア”主義!世界初!量子テレポーテーションを成功させた古澤明 第25回 IT系300人に質問☆○○だと思う企業ランキング 第26回 ”ヒーローエンジニア”を探せ!大ヒットmeromero parkのFLASHエンジニア 第27回 新人は知らない…先輩エンジニアの黒い教育活動記 第28回 本当にあった!ITエンジニア垂涎の極上オフィス環境 第29回 外資系だけじゃない!海外と関わるIT技術者の仕事 第30回 俺もお前もアイツも危ない“メタボリックエンジニア 第31回 エンジニアに「イラっときた」瞬間<診断ツール付き> 第32回 最先端技術を駆使する外資系サポートエンジニアの実力 第33回 川合史朗@Gaucheは、ハワイで俳優をしている 第34回 アクセンチュア程社長もプログラミングから始まった 第35回 外資系SIerとソフトハウスの給与はどれだけ違う? 第36回 どこが一番?7大都市別エンジニアの働き心地チェック 第37回 大ヒット会計ソフトを生んだ役員も“さん”づけの職場 第38回 職場内SMタイプを見極めて、人間関係2.0を目指せ 第39回 エンジニアを魅了するノベルティコレクション・07夏 第40回 「職場のいじめ」エンジニア的対策マニュアル 第41回 隣の女性SEは何タイプ?職場のシーン別接し方入門 第42回 30歳年収1000万エンジニア51人のキャリア図鑑 第43回 スゴ腕?下請け任せ?SEのプログラム愛情度チェック 第44回 与えられた環境の中でも道を見いだしたT.Mさん 第45回 竹内郁雄@Lispハッカーは、日本のゲルトミューラーだ