第7回:RailsとGrailsの比較(後編) (1/3)

徹底比較!!Ruby on Rails vs Javaフレームワーク
徹底比較!!Ruby on Rails vs Javaフレームワーク

第7回:RailsとGrailsの比較(後編)

著者:アスタリクス  大西 正太   2006/10/25
1   2  3  次のページ
はじめに

   前回より、Groovy上で動作するRailsライクなフレームワークである「Grails」と「Rails」について比較をしています。今回はモデルについて比較するとともに、その他にも気になる点をまとめました。

モデルの比較

   では、さっそくモデルの比較を行います。


スキーマ管理

   RailsでもGrailsでもテーブル名とモデル名およびカラム名とフィールド名について命名規約に従うことで、自動的にO/Rマッピングが実施されます(表1)。

  Rails Grails
モデル名/クラス名の規約 クラス名はテーブル名の単数形 モデル名とクラス名を一致
フィールド名/カラム名の規約 フィールド名とカラム名を一致 フィールド名はカラム名のキャメルケース

表1:O/Rマッピングを自動化する規約

   ただし、GrailsとRailsのモデルを比較すると、スキーマ情報をクラスで一元管理するのか、テーブルで一元管理するのか、という点がかなり異なります(表2)。

  スキーマ管理位置 メリット デメリット
Rails テーブル カラムの大きさ、インデックスなど、RDBの機能をフルに使うことができる モデルクラスとそのフィールドの情報が散り、かつ別言語で記述される
Grails モデルクラス Groovy上ですべてのスキーマ記述が完結し、一括管理できる カラムの大きさ、インデックスなどの項目を指定できず性能が悪化する可能性がある

表2:RailsとGrailsのスキーマ管理比較

   Railsではスキーマ情報はmigrationなどの機能を用いて、テーブルで管理します。RailsのActiveRecordがテーブル構成を自動的に読み取り、クラスにデータへのアクセッサメソッドを動的追加しています。

   Grailsでは逆にクラスでスキーマ情報を管理しています。クラスに宣言したフィールドが解析され、サーバ起動時に必要に応じてテーブルが生成・更新されます。

   クラスでスキーマ情報を管理することのメリットとして、Groovy上ですべての記述が完結し、シンプルな構成になることがあげられます。

   一方、今回調査した範囲では各カラムの大きさやインデックス付与の指定をする方法は見つかりませんでした(注1)。これは性能面に致命的な悪影響を与える可能性があるため、今後アノテーションなどで任意に指定できることが望まれます。

※注1: Grailsではテーブルの自動生成をOFFにし、自前でテーブルを定義すれば上記の問題を解決できますが、その場合スキーマがSQLとクラス定義で2重管理されてしまいます。


リレーション

   Grailsではテーブルとテーブルのリレーション指定をRailsに近い形式で記述できます。リスト1ではrelatesToManyという記述でCarとWheelの1:nのリレーションを記述しています。

リスト1:1:nリレーションの記述
class Car {
   Long id
   Long version
   String name

   def relatesToMany = [ wheels : Wheel ]
   Set wheels = new HashSet()
}

   記述できるリレーション指定をまとめたのが表5です。

   Railsでできることの大半はGrailsでもできますが、唯一n:nのマッピングについては今のところ未対応のようです。Grailsは内部でHibernate(JavaのO/Rマッピングフレームワーク)を利用しており、Hibernateではn:nのマッピングが実現されているため、早晩対応されることが予想されます。

   また、継承関係にある複数のクラスを1テーブルにマッピングする(Single table inheritanceと呼ばれる)ことはRailsでもGrailsでも実現されています。

  Rails Grails
1:1 has_one belongsTo
1:n has_many relatesToMany
n:1 belongs_to belongsTo
n:n has_and_belongs_to_many 未対応
テーブル継承 対応 対応

表3:Grailsのリレーション記述一覧

1   2  3  次のページ


株式会社アスタリクス 大西 正太氏
著者プロフィール
株式会社アスタリクス  大西 正太
JavaEEフレームワークの設計構築や開発プロセス策定などの業務を経て、現在は新規ビジネス創生に携わる。Ruby on Rails上に構築したオープンソースのCMS「Rubricks」(http://rubricks.org/)のコミッタ。


INDEX
第7回:RailsとGrailsの比較(後編)
はじめに
  バリデーション
  その他の比較
徹底比較!!Ruby on Rails vs Javaフレームワーク
第1回 O/Rマッピング
第2回 JSFとRailsで比較(前編)
第3回 JSFとRailsで比較(後編)
第4回 DIコンテナとの比較
第5回 テストフレームワーク
第6回 RailsとGrailsの比較(前編)
第7回 RailsとGrailsの比較(後編)
Ruby on Rails入門
第1回 Railsが注目されている理由
第2回 すぐできるアプリケーション作成
第3回 アーキテクチャと検索機能の追加
第4回 Railsでテストをしてみよう
第5回 Ajaxアプリケーションの作成
第6回 プラグインでさらに生産性アップ
第7回 Linux環境で動作させよう

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る