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シマンテックイエローブック
ストレージ管理の標準化

第5回:Storage Foundationのコアの概要(VxVM)

著者:シマンテック   2007/5/11
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マルチパスによるストレージアクセス

   データセンターは、個々のサーバーのためのストレージを別々に設定する状態から抜け出して、ストレージエリアネットワークによるストレージプールという考え方を採用するようになりました。その結果、データとアプリケーションの高い可用性を確保するために、ストレージエリアネットワーク自体の重要性が高まっています。

   仮想ストレージデバイスが堅牢でなければならないのは言うまでもありませんが、それだけではなく、基盤になっている物理デバイスへのアクセス機能をネットワーク障害から保護することも必要です。

   ホストとストレージデバイスとの間の接続の耐障害性を確保するための主なメカニズムは、両者の間に複数のパスを用意することです。1つのパスで障害が発生しても、代替のパスによってホストとデバイスの間の通信を継続できます。

   データマネージャやストレージユーティリティのほとんどは、1つのネットワークストレージアドレスと1つのデバイスを同一視します。そのようなソフトウェアコンポーネントと複数のアクセスパスがあるデバイスとを連携させるには、デバイスへのパスを仮想化して、ホストで実行されるストレージを利用するアプリケーションが擬似デバイスを参照するようにします。つまり、ホストソフトウェアの1つの層がすべてのI/O要求を1つ以上のアクセスパスによって特定のデバイスに送信し、実行処理が完了するまで未解決の要求を追跡管理する必要があるということです。

   マルチパスによるアクセスを確保するための最も耐障害性が高い方法は、図3-3に示すように、完全に独立した2つの物理ネットワーク(ファブリック)を構成し、その2つのファブリックにホストサーバーとストレージデバイスの両方を接続することです。
ネットワーク上のストレージデバイスに対する複数のパス
図1:ネットワーク上のストレージデバイスに対する複数のパス
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   図1では、サーバーとストレージデバイス(この場合は、ディスクアレイファームウェアによって仮想化されるミラー化デバイス)の間のパスに存在する主な物理コンポーネントをブロック図の形で示しています。

   図1でスイッチというラベルが付いている2つのブロックは、2つの別個のストレージネットワークファブリックに相当します。この2つは、エンドポイントホストサーバーとディスクアレイメモリシステム以外のコンポーネントを共有していません。ホストバスアダプタ(HBA)、ケーブル、ディスクコントローラ、ディスクコントローラポートがそれぞれ独立しているので、ホストサーバーと仮想デバイスの間には完全に独立した2つのパスが存在しています。

   どちらかのパスにあるいずれかのコンポーネントで障害が発生しても、ホストサーバーとデータの間の通信が中断することはありません。ただし、次の条件を満たしていることが必要です。

  • ホストサーバーは、ストレージデバイスとの間に2つのパスがあることを認識している必要があります

  • ホストサーバーのI/Oソフトウェアスタックは、障害が発生したパスに対する要求をもう1つのパスに送り直し、アプリケーションのデータアクセスが中断しないようにする必要があります

表3:ホストサーバーとデータの間の通信が中断しない条件


VxVMのDynamic Multipathing(DMP)機能

   VxVMのDynamic Multipathing(DMP)機能は、この2つの要件を両方とも満たしています。DMPは、オペレーティングシステムの基本的なデバイス検出機能を基盤として、同一のディスクドライブまたはディスクアレイのLUNに対する複数のパスを認識します。

   何かの理由でデバイスへのパスに障害が発生すると、DMPは要求を別のパスに送り直します。ほとんどの場合、アプリケーション側では、この再送信を認識することはありせん。いわゆるアクティブパッシブ型のディスクアレイでは、代替パスによってデバイスと通信するために特定の操作が必要になりますが、DMPはその操作も実行します。

ストレージのI/OシステムスタックにおけるDynamic Multipathing
図2:ストレージのI/OシステムスタックにおけるDynamic Multipathing

   図2からわかるとおり、DMPはI/Oスタックの中でVxVM仮想化層の下に位置しています。DMPは、システムの起動時またはオンデマンドの検出フェーズで、よく似ているデバイスに対するクエリーを実行し、それらが実際に別々のデバイスなのか、それとも2つのホストバスアダプタによってオペレーティングシステムに提供されている同一のデバイスなのかを判別します。複数のパスが検出された各デバイスについて、DMPはオペレーティングシステムの中に擬似デバイスのデータ構造を作成します。

   VxVMの仮想化層は、DMPによって提供される擬似デバイスを仮想化(ミラー化やストライプ化などを)します。VxVMによってドライバに送信されたすべてのI/O要求がDMP層を通過すると、そのDMP層がそれらの要求をデバイスへのI/Oパスに送り、VxVMのI/O要求がシステムの中で失われてしまわないように進行状況を追跡管理します。

   I/Oデバイスへの1つのパスで障害が発生すると、DMPは未解決の要求と今後の要求を別のパスに送り、パスのフェールオーバーを有効にするために必要なディスクアレイ固有の操作を実行します。

   DMPのもう1つの利点は、デバイスへの2つ以上のパスを同時に使用して、スループットを改善できるということです。この機能は、大きなキャッシュメモリを伴う大規模なディスクアレイで特に役立ちます。

   特定の種類のアプリケーションでは、I/O要求の比率の変化に対応するために、ディスクアレイのキャッシュを参照します。これらの要求については、シークやローテーションによる遅延が発生しないので、I/O処理速度を低下させる要因はデータ転送だということになります。2つ以上のパスによってLUNに同時にアクセスする機能をディスクアレイがサポートしていれば、DMPは、全体的なスループットを改善するために、その時点で最も負荷の少ないパスにVxVMの各I/O要求を送信します。DMPには、複数のパスの間でI/Oの負荷を分散させるためのアルゴリズムが組み込まれています。

   DMPの主な利点は、ストレージデバイスにアクセスするためのI/Oパスの耐障害性を高めることによって、サーバーレベルでデータの高可用性を維持できる、ということです。2番目の利点は、複数のI/OパスによってLUNに同時にアクセスする機能をサポートしているディスクアレイを使用している場合に、I/O処理速度を改善できる、ということです。

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