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シマンテックイエローブック
ストレージ管理の標準化

第5回:Storage Foundationのコアの概要(VxVM)

著者:シマンテック   2007/5/11
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スナップショット

   アプリケーションを常に稼働状態にしておく必要性はますます高まっています。最初は航空管制などのアプリケーションから始まり、今では資金転送などのB2B 機能を備えたアプリケーションやWeb 上の小売販売用のアプリケーションなども登場しています。アプリケーションは、当初は利便性のための存在だったのが、今では必要不可欠な存在になりました。24 時間いつでも利用できる状態になっていない情報サービスは、実際には使われなくなり、生き残ることが難しくなるでしょう。常に利用できる競合他社のサービスがどこかに存在するからです。

   ところが、それと同時に、各企業の業務ではデジタル情報への依存度も高くなっています。どんなに規模が小さくても、コンピュータシステムやデジタル情報なしで運営できる企業はまれです。したがって、各企業では、現金や資本設備などの貴重な資産と同じように、デジタルデータを保護しなければなりません。

   この2つの傾向には互いに矛盾した側面があります。つまり、データを常に利用できる状態にしておく必要がある一方で、データの破損に備えてコピーを作成するまでの間、データの変更を認めないようにする必要もあります。

   このような矛盾を解決するのに役立つのが、実際の被写体を撮影する写真のように大きなデータセットの瞬間的なイメージを取り込むVxVMのスナップショットです。大きなデータセットを取り込むVxVMのスナップショットについては、実働アプリケーションがデータそのものを処理している間も、バックアップなどの操作を実行できます。

VxVMがサポートしているスナップショット

   VxVMは、完全コピー型と容量節約型(書き込み時割り振り型)の両方のスナップショットをサポートしています。完全コピー型のスナップショットは、ボリュームを1ビットずつコピーする機能であり、ボリューム自体と同じ量のストレージキャパシティが必要になります。完全コピー型のスナップショットの利点は、対象のストレージデバイスを他のホストに移動できることにあります。そうすれば、スナップショットを操作するときに、実働アプリケーションが利用できるリソースを減らさないですみます。

   一方、最初のスナップショットを作成するときには、スナップショットの対象のデータセットを1ビットずつスナップショットボリュームにコピーする必要があるので、実行処理に長い時間がかかります。これはこの方法の欠点になります。

   領域節約型のスナップショットは、ボリュームの仮想スナップショットです。物理的な観点からすれば、領域節約型のスナップショットには、スナップショット作成後に変更されたデータの以前のイメージだけが含まれています。

   以前のイメージのためのストレージキャパシティは、アプリケーションによって更新された時点で割り振られます。領域節約型のスナップショットも完全なデータセットとして提供されますが、未変更データの読み取り要求には、オリジナルのイメージを参照することによって対応します。したがって、この種のスナップショットをホストから別のコンピュータに移動して補助的な処理を実行することはできません。

   領域節約型のスナップショットでは、変更比率の低い大きなデータセットが対象になっている場合は特に、ストレージキャパシティの使用量が少なくてすみます。この場合のストレージキャパシティの使用量は、データセットのサイズではなく、スナップショットが存在している間の変更データの量に比例するからです。したがって、領域節約型のスナップショットを頻繁に作成し、データが破損した場合でも以前の状態(復元ポイント)にすぐにデータセットを復元することが可能になります。

   VxVMのFastResync.機能を使えば、完全コピー型と領域節約型の両方のスナップショットを反復的なアプリケーションで効率的に活用し、アプリケーションによって引き起こされたデータ破損からスムーズに回復できるようになります。

   VxVMには、アクティブなスナップショットとその対象のボリュームの両方に関する変更を追跡管理するためのデータ変更ログ(DCL)があります。VxVMはこのDCL に基づいて、変更のあったブロックをスナップショットから得られる以前のイメージで上書きすることによって、破損したボリュームを以前の状態にすぐに復元できます。

   一方、有効期間が過ぎたスナップショットは、オリジナルボリュームから得られる変更済みのブロックで上書きすることによって最新版に更新できます。したがって、完全コピー型のスナップショットをバックアップのためにホストの外に移し、バックアップの完了後に、変更データをコピーすることによってオリジナルボリュームの現在の状態に更新した状態でホストに戻し、次のバックアップサイクルのために再びホストの外に移す、といった操作を繰り返すことが可能になります。

   VxVMのスナップショットを利用すれば、大きなデータセットの瞬間的な状態を取りこみ、実働アプリケーションが実際のデータを処理する間も、バックアップや分析などのためにそのスナップショットを操作できるので、情報サービスの可用性を大きく改善できます。また、実働データが破損した場合でも、スナップショットを使用して破損前の特定の時点の状態にデータを復元できます。

   FastResync. テクノロジを活用すれば、ボリュームを以前の状態に復元するときにも、スナップショットを最新の状態に更新するときにも、必要なコピーの量を最小限に抑えることができるので、スナップショットの利便性が高まります。


ストレージデバイスのポータビリティ

   ホストを基盤とするストレージ仮想化ソフトウェアはいろいろありますが、その中でもVxVMは主なUNIXプラットフォームをすべてサポートしているという点で特異な存在です。したがって、2つ以上のプラットフォームで使用できる仮想ボリュームを作成することが可能になります。たとえば、Solarisシステムからボリュームを取り出して、AIX、HP-UX、Linuxのいずれかのシステムにインポートできます。

   PDC(Portable Data Containers)と呼ばれている、このVxVM機能は、1つのUNIX プラットフォームで作成したデータを別の種類のUNIXプラットフォームで使うという、シリアルデータ共有の基盤になっています。たとえば、Solarisプラットフォームで作成したファイルをレポート生成やデータ分析のためにHP-UXまたはAIXのプラットフォームに転送することが可能です。

   ただし、1つのプラットフォームで作成したデータを別のプラットフォームで使うには、両方のプラットフォームで共通のファイルシステムとファイルデータ形式を使用していることが必要です。

   VxFSファイルシステムは、プラットフォーム間で共通のファイルシステム形式を使用しており、その形式はUNIXとLinuxの間でも変換が可能です。アプリケーションの中には、プラットフォームに依存しないデータ形式を使うものもあれば、データベース管理システムのように、1つのプラットフォームから別のプラットフォームにデータを転送するためのフィルタを用意しているものもあります。

   さまざまなプラットフォームで生成されたデータを使用しなければならない状況に対応できるアプリケーションやデータマネージャの数が増えるにつれて、ファイルやデータベースを含んだボリュームを移動する機能の重要性も高まっています。VxVMには、プラットフォーム間でデータを転送するための基盤が用意されており、ネットワークを経由した長時間のコピー操作や、パフォーマンスの低いNFSクロスマウントファイルシステムは必要ありません。

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  Storage Foundationが必要な理由
  マルチパスによるストレージアクセス
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