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商用&OSSデータベースの現状と今後
商用&OSSデータベースの現状と今後

第1回:シェアの差はそのままデータベースの実力の差か?〜RDBMS各々のメリットとデメリット比較〜

著者:オフィスローグ  工藤 淳   2005/3/11
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商用とOSSのデータベース、実際の勢力図はどうなっている?

   「一般に商用DBでは、Oracle、SQL Server、DB2 UDBがトップ3の順位といわれていますね。その後にさまざまな各社製品群がシェアを分け合っていますが、実はこの4位以下に、日本のマーケットシェアの特徴が見られるのです」

   こう語るのは、ガートナー ジャパン株式会社でデータベース市場の分析を手がける、主席アナリストの堀内秀明氏だ。

堀内秀明氏    「たしかにワールドワイドでも日本でもトップ3を占めているのは、"定説"どおりOracle、Microsoft、IBMです。ところが日本では3位のIBMだけが非常に低いシェアになっています。下のグラフでもわかるように、ワールドワイドでは22%なのが日本ではわずか9%と、同じ3位ながら13%もマイナスになっています」

   そしてこのマイナス分を奪うかのように4位、5位を占めているのが、富士通、日立といった国産DB製品だ。こういっては失礼だが、ワールドワイドではほとんど目立たない国産DBがこれだけの健闘ぶりを見せるのは、いくらお膝元の日本だからとはいえ意外である。

世界のRDBMSベンダーシェアと日本のRDBMSベンダーシェア
図1:世界のRDBMSベンダーシェアと日本のRDBMSベンダーシェア


   「実は、これらはメインフレームのユーザチャネルなのです。もちろんデータベース製品の選択条件として機能は重要です。しかし、一定のレベルを満たしていれば、今度は売り方の違いが大きく出てきます。この点で富士通、日立の日本市場でのプレゼンスには大きなものがあります」

   老舗の大手企業を中心に、日本ではメインフレームというシステム風土が長らく生き残ってきた。そうした背景によって、日本市場のシェアではメインフレームに強い2社の特性がいまだに影響しているというわけだ。では、OSSの方はどうなっているのだろうか?

   「率直に言ってOSSは、まだエンタープライズレベルの本番環境用DBとしては普及していないというのが実態です。OSSのRDBMSとして有名なPostgreSQLやMySQLは、実行環境としてLinuxが利用されることがほとんどですが、逆に見れば、Linuxの売れ行きにOSSのDBが依存しているとも考えられます」

   下のグラフを見る限りでは、Linuxの市場は着実にふくらんでいる。すると、今後OSS DBの市場も比例して拡がっていくと考えてよいのだろうか?

堀内秀明氏    「たしかにLinuxは伸びていますし、今後も成長は続くと思います。しかしそのLinuxユーザのうち、データベースを使っているのは20%に満たない数です。しかもその20%のDBユーザにしても商用DB製品を採用しているかもしれません」

   「また、そもそもLinuxベースのDBユーザの母数そのものがそんなに大きいものではないので、ユーザ数は微増でもパーセンテージは見かけ上大きく伸びてしまいます。なので、『グラフ上の伸びイコールOSS DBの普及の実像』ととらえるのは、やはり無理があると思います」

日本におけるLinuxサーバの利用率推移
図2:日本におけるLinuxサーバの利用率推移



なぜOSSのDBは、ビジネス用ソリューションとして普及しにくいのか?

   とはいえ、PostgreSQLは2005年リリースのバージョン8.0からWindowsプラットフォームにネイティブ対応を実現、MySQLもバージョン5.0ではまだアルファ版ながら機能を大幅に増強した。また同製品は、国内ベンダーによる有料サポートも行われている。それでも本番環境を担う存在へのステップアップは難しいのだろうか。

堀内秀明氏    「製品そのものの機能とはまた別に、ビジネスで使うための環境という点も大きいのです。もともと、エンタープライズ系のユーザは保守的です。せっかく問題なくシステムが稼働しているのに、わざわざ新しいものや未知のソフトウェアを導入してトラブルを招くことは避けようとします」

   「また、データベースを単体で買うことはまずありえません。ソリューション全体として導入するとなると、技術者の数が多い方が運用コストも節約できるわけですから、プレゼンの場では『シェアはどうなんだ?』と聞かれるでしょうし、実績の少ないものをあえて選んで開発でトラブルが起きたら、見積もりを超えてしまうリスクも考えられます。そもそもデータベースがソリューション全体の予算に占める金額は決して大きな割合にはなりません。リスクとのバランスを考えると、当然インテグレータの側も、あえて危険を冒してまでクライアントにOSSを勧めることはしないのです」

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著者プロフィール
オフィスローグ  工藤 淳
IT技術系出版社勤務を経て、オフィスローグとして独立。データベース関連誌編集に携わっていた流れで、現在もデータベース系の執筆が比較的多い。元々は楽器から建築、自動車まで何でも注文があれば書いてきたのが、気がついたらIT専門のような顔をして仕事をしているのに自分で少し驚愕、赤面。


INDEX
第1回:シェアの差はそのままデータベースの実力の差か?
〜RDBMS各々のメリットとデメリット比較〜
  はじめに
商用とOSSのデータベース、実際の勢力図はどうなっている?
  「どちらがよいか」の単純比較は無意味。「どちらがビジネスに有効か」に注目せよ