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第4回:見積もりについて

著者:システムクリエイト  田中 徹   2004/12/10
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複数社からの見積もりで差が出た場合

   いくつかの開発会社から見積もりを取ると、見積額に大きな差が出ることがあります。たとえばA社800万円、B社3,000万円という見積もり額が出たらどう判断すればいいのでしょう。また何故こんなに差が出るのでしょう。これは決して稀なケースではなく、よくある話です。
ケース1

   システムの分野がB社にとって不得意分野であるとか、案件をいくつも抱えていて非常に忙しく、開発会社の人間で開発できないので、協力会社に設計も製造も丸投げするという前提で見積もりを出すことがあります。分かりやすく言えば「受注できなくても構わないし、受注できたとしても絶対に損はしない」方法です。

   大手でも中小のソフトウェアハウスでも業種によって得意分野、不得意分野があります。不得意分野の開発依頼の場合「ウチは専門外なので、他社さんへどうぞ」とはなかなか言いません。「専門外だけどこれを機に他社からSEを呼んで設計・開発してもらい、ついでに社内にも教育してもらう」と考えるでしょう。得意分野ではないので、他社から集めるというリスクを考え、さらにその分野での工数の見積もりも正確にはできないので、ある程度余裕を持たせ算出するでしょう。


ケース2

   A社はビジネスパッケージソフトを多く開発しており、依頼のあったシステムに少しカスタマイズすればそのまま利用できるノウハウを持っている場合があります。その分の開発工数が不要なので800万円という金額で充分利益が出せる。一方、B社は一から全ての開発を行うので、そのまま工数を見積もったら3,000万円になった。こういう場合は迷わずA社に依頼すればいいでしょう。しかし、そのパッケージソフトが今回のシステムにどれくらいマッチしているか、将来的な汎用性、拡張性はあるのか、本当にカスタマイズはすぐにできるのか、などを十分に確認してください。


   代表的なケースを書きましたが、一番多いケースはやはり同時に説明しない場合です。では、ここまで極端な差が出ないとしても、2,000万円と2,500万円ではどうでしょう。

   こういう場合は見積もり金額だけでなく納品されるドキュメントや運用後のバックアップ体制などくわしく聞き、総合的に判断するべきです。

   また、B社はいままでの取引先などが値引要求をするところが多く、そういう前提で算出した金額で、A社はかけ値なしの正直な金額を書いた、ということも考えられます。B社に対して「別の会社は2,000万円で見積もりを出しているが、おたくはいくらまで値引ける?」と聞くのはあまりいいやり方ではありませんが、値引きの余地があるかどうかを確認すると本音が分かります。

   別章で値引きありきという姿勢はあまりよくないと書きましたが、他社の金額を引き合いに出して値引き交渉するというのも同様です。発注側から具体的な数字が出されれば「仕事が取れるならその金額で受注しよう」と思うことでしょう。しかし、赤字を出さないために単金の安いプログラマを使ったり、設計期間を削ったりと、質を落として帳尻を合わせられたらたまったものではありません。ましてそういう胸の内は明かしませんので後々困ったことになる場合もあります。「値引きは可能?」くらいの聞き方で、あとは出てきた金額で判断してください。

   見積もりひとつとっても、経験しないと分からないことがたくさんあります。社内に頼れる経験者がいない場合、システムコンサルタントを活用するのも一つの方法です。システムコンサルタントといってもそれぞれの考えがありますので一概には言えませんが、発注担当者がある程度の交渉に慣れるまでや、見積もりが決まるまでという期間だけ、あなたのブレーンとして側に置いておくわけです。

   ITに関する知識なら、書籍、インターネットなどで得ることができます。しかし、開発会社のSEや営業相手の交渉などは、多くの経験を積まなければ分からないことも多いでしょう。分からないことは知ってる人に頼るのが一番です。


この連載は、ユーザ企業のシステム発注担当者向けのものです。発注担当者の方で、悩みを抱えられている方は、編集局までメール<info@thinkit.co.jp>でご相談ください。この連載を担当している田中徹氏がその解決法をお答えします。
※全てのご相談にお答えできるわけではありません。予めご了承ください。
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著者プロフィール
システムクリエイト有限会社  田中 徹
代表取締役。1963年生まれ。MS-DOS時代から、汎用機−PCでのデータ送受信を行ってのチャート(金融業)、表・グラフ描画(財務系)などのシステム開発を行う。 社内人事管理(勤怠・人材活用)、流通業、制御系の分野や集計業務なども手掛ける。ソフトウェアハウスや大手開発会社まで多数の現場で開発を経験し、33歳で独立。現在は各業種・分野でSEとして、またシステムコンサルタントとして活動中


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第4回:見積もりについて
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複数社からの見積もりで差が出た場合