SonyのSmartEyeglass、「企業向け」市場に活路を見いだせるか
もともとはコンシューマ向けとして(良くも悪くも)注目されたものだったが、スマートグラスはすでにビジネスの場においてその居場所を見つけている。拡張現実(AR)は、企業向けのシンプルで効率的なソリューションを作りだすのに大いに役立つためだ。今回紹介するSonyの『SmartEyeglass』は、市場においてインダストリ4.0に関わる技術が、そのビジネスバリューと競争利益をいかに早く生み出せるかを顕著に示している。
すでに進行している工業のデジタル化により、あふれだすほどの貴重なビジネスデータが日々生み出されている。このことはデータをコントロール、処理を同時におこなうというニーズも生み出している。ディスプレイに縛られたこれまでの可視化と異なり、スマートグラスは日々の労働環境の中にデータを自然な形で表現することを可能にするのだ。
SonyのSmartEyeglass: ARの使用例
SonyのSmartEyeglassは、モノクロのARメガネであり、内蔵されたホログラフィックディスプレイにより装着者の視界内に情報を表示させることができる。ディスプレイにはカメラやその他センサーが備わっており、装着者は周りの環境から有用な情報を得て、タスクの進行の助けとすることが可能だ。
Sonyは『Developer World』でSmartEyeglassの使用例をいくつか披露している。それは、たとえば火事のビルに飛び込む消防士に重要な情報を提示するものであったり、オペラの視聴の際に見やすい字幕・翻訳が表示されるものだったり、と種類はさまざまだ。中でもSmartEyeglassが大きな可能性を秘めているのが<リモートガイダンス>である。
Sonyのパートナーエンジニアであり開発を支持しているヨアキム・エルヴァンダー氏は、リモートガイダンスがどういうものかを次のように説明している。「SmartEyeglassの大きな利点の1つに、双方向コミュニケーションが取れるということがあげられる。ビルトインカメラを通じて装着者が見ている視界をストリーミングすることで、それを見た側はシチュエーションに応じた情報を装着者に送り返し、視界に投影させることができる。」
ではこのリモートガイダンスが現場をどうやって改善するのだろうか?
「リモートガイダンスはある一定層にとっては投資価値が高いものかもしれない。たとえば、バックオフィスにいる専門家たちの知見を活用したい小さなメンテナンス会社から、エキスパートを世界中に出張させる代わりに遠隔からソリューションを提供させることで数百万ドルのコストを削減できる世界規模の大企業までだ。」エルヴァンダー氏は語る。
彼は、SmartEyeglassを披露するためにリモートガイダンスのデモも用意した。
「このデモはARの新しい使い方を取り上げたものであり、さらにいえばパートナー間での使用例とその機能の紹介になる。スマートグラスのもつ機能の多くを組み合わせたものだが、主なポイントは2者間のインタラクションだ。スマートな可視化と機能性によって拡張されたコミュニケーションというものは、未来に起こることのほんの一部かもしれない。しかし、インダストリ4.0の時代にどういったソリューションがありえるのかということを示すデモではある」とはエルヴァンダー氏の言葉だ。
ビデオストリームのショーケースの際、スマートグラスの装着者と、ストリームを受ける側とがどのようなやり取りをおこなえるのかということも披露された。このやり取りはテキストやグラフィックを使っていたが、マウスクリックによる指示も可能だ。つまり、指示者はストリームビデオに映る物体をクリックすれば、装着者の視界にはそれがマーカーとなって現れるわけだ。また、視界の外に指示内容を表示することもできる。これにより支持者は装着者にどこを見るか指示を出し、矢印やテキストを使って可視化することが可能となる。騒々しい環境下においてこれは特に有効であろう。
Sonyはさまざまなイベントでこうしたデモを行い、企業自身が、この技術の可能性を体感できるよう手助けしている。
スマートグラスの未来 : 効率が良くなる職場
ARメガネはまだ一定の人たちから遠い未来のことだと考えられているが、その実現性を過小評価するべきではない。
これに興味を示す企業は増え続けており、SmartEyeglassのような製品が特定の業種において当たり前の存在になるのも時間の問題だろう。工場やうるさい建設現場などの職場は導入の可能性のある業種のごくわずかな例に過ぎない。その可能性に限界があるとすれば、それは作り手の想像力の限界ということだ。
SmartEyeglassおよび職場でのARについてもっと知りたいのであれば、Sony SmartEyeglassのウェブサイトを見るといい。さらに多くの情報と将来的なパートナーシップ、自分自身で作るソリューションなどについて述べられている。ほか、SmartEyeglassの製品ビデオでも手軽な使用例が紹介されている。
※この記事はSonyとの協力で執筆されました。
ReadWrite[日本版] 編集部
[原文4]
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