2009-2010年の流行色は何色?
2009-2010年、21世紀最初の10年、新たな未来へ
師走を迎えようとしている2008年11月現在、金融危機、テロ、犯罪、異常気象と、不安なニュースばかりが聞こえてきます。これらの出来事には、私たちが真剣に取り組まなければならない課題が隠されています。
20世紀に開発された科学技術は、私たちの生活を飛躍的に向上させました。その一方で、自然を破壊し、地球上の生物に必要不可欠な水と空気が汚染されました。壊れたのは自然だけではなく、自然の一部である人間も同じです。心身が壊れているとしか思えない事件や新たな病気が続出しています。
21世紀に入り、最初の10年も終わりにさしかかっています。これまでエコロジー問題は70年代、80年代末と何度となく取りざたされてきましたが、今度ばかりは真剣さが違うようです。企業も個人もエコロジー問題、つまり自然の生態系を健全に戻すために、できる限りのことをしなくてはならないのです。
このような「時代の気分」は、商品の色に敏感に反映されています。ここでは、2009年から2010年に向けて、私たちの心を引きつける色彩について紹介します。
ブラック基調か、ブラウン基調か
では今の時代の気分は何色でしょう。
時代の気分を象徴する色は1つではなく、いくつかあります。先行市場に向けての商品開発にたずさわる人々は、当該シーズンの市場で注目される色を予測していかなければなりません。そのような立場にある人に向けて、筆者は色彩予測を行っています。色彩予測の方法はさまざまあると思いますが、私は、まず、基調色はどのような方向に動くかを考えます。
基調色とは、インテリアで言えば、壁や床のような大きな面積を占める色のことを言います。基調色で全体の雰囲気がほぼ決定づけられます。図1-1は、これまでの基調色の推移を簡単にまとめたものです。左側にはブラックが注目された年代を、右側にはブラウンが注目された年代を挙げました。基調色の推移を追い、その年代におきた出来事と重ね合わせると、その時の消費者の意識に共通点がありました。
図1-2は、ブラックが注目された1980年代初頭から中ごろの街頭を撮影したものです。このころはいわゆるバブルと呼ばれた、景気が非常に良かったころでした。ブラックは鮮やかな色を一層引き立てる色で、この時期は、ブラックと同時に強いオレンジやブルーグリーンも流行しています。鮮やかな色調を人々が好んで身にまとう時は、前に向かって躍進しようとする意思が表れている時です。
ブラックを基調にして、鮮やかな色が注目される時は、ホワイトもまた大事な色になります。この時に登場する白は、濁りのない純白が求められます。
一方、ブラウンは、オイルショックなど、経済不安が急速に高まる時や、自然破壊が声高に叫ばれたころに注目されています。環境に対する意識が高まる時や、心を穏やかに保ちたいという欲求が高まる時にブラウンが注目されるのです。ブラウンは大地の色、お母さんの肌の色など、落ち着いた安心感を与える色だからです。
ブラウンが注目される時、ブラウンと相性が良い、灰(はい)みの色調を持った色や、グレー系の人気が高まります。ブラウンとともに使われるホワイトは、アイボリー(象牙に見られる白)のような温かみのある白が求められます。
では2009年、基調色はどちらの方向に向かうのでしょうか。
2009年は、ブラックとブラウンが拮抗(きっこう)します。時代は不穏なムードが優勢ですが、弱ってばかりでは救われません。追いつめられた私たちは、しっかりと前を向いて、少しでも状況を改善していかなければならないのです。このようなある種戦う姿勢が、ブラック基調や、強い色を求めます。
しかし同時に、私たちは安らげる場所を求めます。20世紀に進められた規格化、グローバル化で置き去りにしてきた、地域文化の大切さを見直す時がきています。個々人においては、競争社会にさらされ押し殺してきた「感情」を、解放し自分自身の人生を楽しむ場所を求めているのです。このような気持ちをかなえるためには、ブラウンを基調とした色の組み合わせも重要なのです。