IoTとクラウドを融合するSORACOM、グローバルにスケールする製品の作り方を紹介
IoT向けのモバイルプラットフォームを展開するSORACOMが、IoTに特化したエンジニア向けのイベント「if-up 2017」を開催した。SORACOMの最高技術責任者(CTO)である安川健太氏のセッションで、SORACOM内部における開発の仕組みを解説した。
SORACOMのサービスは、NTTドコモのモバイル回線を使ったMVNOと、AWS上に実装されたサービスを組み合わせて実現されているというのは既知の事実だが、現在はAWSだけではなくMicrosoft Azure上にも展開されており、パブリッククラウドのスケーラビリティと、世界中に配置されたリージョンを使うことでグローバルなサービスとして展開されている。「SORACOM Air」から始まったサービスもBeam、Canalとアルファベット順に命名されたサービスが短期間で順次提供されており、アジャイルな開発パターンが実現されていることがわかる。
そしてそれらの公開されている各種サービスをつなぐのがPolaris、認証や課金などを行うのがDipper、運用監視を行うのがHubbleというモジュールであるという。
ネットワークアーキテクチャー的に言えば、Polarisはデータプレーンを、Dipperがコントロールプレーンを担当するという切り分けだ。
各サービスはAWS上のアプリケーションとして疎結合かつレイヤーごとに分離されており、依存を減らす意味で疎結合かつ非同期となっている。APIによってつながれていると言う部分が、SORACOMのアプリケーションの特徴だろう。
安川氏のプレゼンテーションによるとSORACOMでは開発当初から「スケールすること」、「グローバル展開ができること」を目指してマイクロサービスとして構築されており、開発から運用までを途切れなく実行するDevOpsが実現されているという。
また開発体制については、少人数の開発チームが開発からメンテナンス、さらに運用までの責任を持つ。つまり開発と運用が分かれておらず、文字通りのDevとOpsが一体化しているという体制であることが紹介された。そのチームの中にはOpsDevという役割を持つエンジニアが存在するという。OpsDevは運用の自動化など、運用を効率化するソフトウェアの開発を担当する。これはGoogleにおけるSRE(Site Reliability Engineering)チームの役割を、SORACOM流に実現しているということだろう。パブリッククラウドをフルに活用することで、インフラの構築とメンテナンスという仕事を必要としないSORACOMらしい応用と言える。コードは書くが、アプリケーションではなくインフラストラクチャーの自動化や効率化のためにソフトウェアを開発するのが、OpsDevの役目だ。ここもGoogleのSREの役割と似ていると言える。
安川氏のプレゼンテーションは、満員の参加者に向けてSORACOMの凄さを見せるというよりも「こうすればグローバルにスケールするサービスが開発できる」というリファレンスを紹介したように見える。つまり「このイベントに参加しているエンジニアの皆さんも、我々の通った道を参考にして世界に通用するサービスを作ってください」と勇気付けているように思えるプレゼンテーションであった。ITベンダーの開催する無料のカンファレンスではなく、敢えて有償とすることによって、質の高い情報を届けることを自らに課し、お互いに技術を高めていこうとする姿勢が感じられるカンファレンスであった。
参加者に「IoTお楽しみ袋」という特典を用意して、スポンサー各社のIoTデバイスなどを配付する辺りにも、「情報収集の次は手を動かして実装してみよう」というSORACOMの意図が感じられた。
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