これからのクリエイターに必要なこと―最新情報と交流で独立の悩みを解消!「クリエイター200人祭り」レポート
2017年11月23日、大阪・天王寺のあべのハルカスにて、『集え!!3年後の自分へ爆裂ダーッシュ!!クリエイター200人祭り』(以下、クリエイター200人祭り)が開催されました。今年で3回目を迎えるこのイベントの参加者数は、過去最高人数の200人を大幅に上回り、なんと総数230人超え。Think ITも協賛として今年初めての参加となりました。
本レポートでは、クリエイター200人祭りで行われた「あなたはどっち!? クリエイター多数決!」、4名の若手クリエイターの講演、交流会の様子などを紹介します。
クリエイター200人祭りとは?
クリエイター200人祭りは、悩みを抱えるクリエイターのために、「明日から取り入れることができる方法」を伝授するためのイベントです。学んだことをすぐに実践に移せるように、身近に感じることができる情報の提供を目的としています。そのため、イベントの登壇者も最近働き方を変えたフレッシュなクリエイターの方々4名。筆者も「悩める駆け出しフリーライター」の1人として、学びが多いイベントとなりました。
スマホで投票! 本音を探る「クリエイター多数決」
講演に先立って行われた最初のイベント、「あなたはどっち派?クリエイター多数決」は、スマホで当日配布された資料にあるQRコードを読み込むことで、スマホから投票できる多数決アンケートです。質問は「朝型か夜型」かなどの簡単なものから、お金の話に切り込んだものなど、これまで聞きづらかったクリエイターの本音をゲーム感覚で探ることができます。特に「週7日勤務で年収1000万円と週3日勤務で年収200万円だったらどちらが良いか」「ぶっちゃけ年収300万?」などの質問については、結果が出るたびに参加者から大きな反応があり大いに盛り上がりました。
先駆者に学べ! フリーランス成功の秘訣
クリエイター多数決の熱気も冷めやらぬ中、続いて現在フリーランスとして各方面で活躍する若手クリエイター4名の講演に移りました。
「自分に自信を持つことが成功につながった」
(グロースハッカー・南 健太郎氏)
グロースハッカーとして、プログラミングとマーケティングという分野で活躍している南 健太郎氏は、長期契約を獲得するまでに苦労したことなどを踏まえ、プログラマーになった経緯について講演しました。新卒のままフリーランスになった南氏の体験は、経験がないまま独立したクリエイターの背中を押すものであったでしょう。
南氏がプログラマーになったきっかけは、海外留学のために受けた面接での理不尽な対応でした。留学に対するアツい想いを面接官にぶつけたのですが、「君は単位を取ってくれる気がしない」と、なぜか理不尽極まりないことを突き付けられ見事に落選。この体験をしたことで「理不尽な環境に負けずどうやって生き抜くか?」「自分が本当にやりたいこととは何か?」を考えるに至ったのです。
そして自分にやりたいことが「世界を飛びまわることだ」と分かった南氏は、Facebookの元役員が「プログラミングを学んだら生涯仕事に困らない」と語った1つの記事に出会います。その言葉に感化された南氏は、世界を飛び回りながらも就職に困ることのない、プログラマーになることを決意したのです。そして今、しっかりとした計画と豊富な情報量をもとに、現在ではフリーで安定した仕事を受注しつつ、海外へ渡航するための準備を進めています。
新卒でフリーランスとなり、一見順風満帆とも思える南氏ですが、実際に苦労をしたこともあります。フリーランスになった当初は単価の低い仕事の受注や安定しない単発の仕事が続き、同時にアルバイトもしていました。しかし、スケジュールが安定しない単発の仕事のみでは、本来の目的であった「世界を飛び回る」ことは困難であることに気づきます。
では、単発の仕事から脱却を図るためにはどうしたら良いのか。そこで南氏が気づいたのは、「自分には自信がない」ということです。自分への自信のなさが、より経験を求められる単価の高い仕事に着手できなかった理由だったのです。
南氏は、自分に自信をつけるために、「自分にできるかできないか」の微妙なラインの仕事に挑戦するようにして成功体験を重ねます。成功するために試行錯誤を繰り返した経験から、「不安に感じても調べれば何とかなる」という思いに至り、半年や一年の契約を結ぶなど、自分ができる仕事の幅が広がるようになりました。
「クリエイターにも営業が求められている」
(イラストレーター・Haiji氏)
講演を通してクリエイターにも営業が必要なことを伝えたのは、イラストレーターのHaiji氏。今年の夏に行った東京での自身の営業活動と、出版社に行った「イラストレーターの営業の必要性に関してのアンケート」の結果をもとに、クリエイターが行うべき営業について解説しました。
Haiji氏は3年間ネット上にイラストをあげ続けた中で舞い込んできた仕事からフリーのイラストレーターとしての活動を開始しました。これまでは仕事を断ることなく、依頼された案件はすべてこなしてきましたが、5年目の活動となった今年を機に、働き方や方針を見直そうと思い立ったそうです。Haiji氏が見つけたこれからやりたいことは、「子供たちを笑顔にするイラストを描きたい」といったもの。どうしたらこの仕事を受注できるか考えた結果思い付いたのは、営業することでした。
Haiji氏は営業活動として、①自己紹介や仕事が欲しいという旨を書いた暑中見舞いを送る、②営業用のポートフォリオを新調する、③「今度東京に行く際にイラストを見て欲しい」といった内容の営業メールの送付、を行いました。結果としてこの営業から仕事を受注することはできませんでしたが、営業に対する恐怖心の払拭や体験のシェアを通して「営業に行って良かった」と感じたそうです。
イラストレーターの営業について伝えたいと考えたHaiji氏は、12社の出版社に対して「イラストレーターの営業に関するアンケート」を実施。14名中9名の有効回答が得られたこのアンケートでは、「イラストレーターは積極的に営業をすべきである」と、すべての回答者が答えたことを明かしました。Haiji氏は今回のアンケートを通して「自分の作品を安売りしないこと」「展示会の案内などを一緒に年賀状に入れる」「メールの添付資料を開けるのはためらうため、本文にイラストを載せる」など、細かいところまで出版社が感じていることをリサーチしました。
Haiji氏が特に印象的だったのは、クライアント側は「強みや売りがあるイラストレーターを求めている」ということ。何でもできるというよりも、自分の強みや売りとなるものをアピールすることが大切だと再認識したそうです。講演の最後には、気になる企業に送るための年賀状の作成方法や名刺に住所を入れることなど、今からできる営業の準備を提案して締めくくりました。
「アナログとITの融合で仕事の幅が広がる」
(貼り絵作家・岡森陽子氏)
3人目の講演者として登場したのは、貼り絵作家の岡森陽子氏。アナログとITの良いところを組み合わせたことによる効果について講演しました。先の「クリエイター多数決」で、およそ7割の参加者が「ITとWebの活用が苦手」と回答した質問があったのですが、実はデジタルが苦手と考えているクリエイターは多いようです。岡森氏も、以前はITやWebが苦手だったクリエイターの1人でした。
2011年、26歳のときに発生した東日本大震災に対して、「自分にできることは何か」を考えた岡森氏は、身近にある素材でできる貼り絵を思い付きました。未経験から個展を開催したのち、貼り絵作家を仕事として活動を始めます。それまでアナログ一筋であった岡森氏は、作家としての活動をさらに加速させるためにWebやITの勉強を始めました。岡森氏は当初パソコンのシャットダウンも知らず、強制終了をするのが当たり前。また、Facebookと通常のホームページの違いも理解していなかったなど、自身がITに無頓着であったことを明かしました。
その状態でもめげることなく基礎的な知識から勉強を続け、現在はFacebookと自身のWebサイトを活用し、Webから仕事を受注するようになりました。目指すのは「SEO対策を施し、Web上で知らない人でも岡森氏や作品に検索でたどり着くこと」、「相手の頭の中での検索で岡森氏を思い出せるような印象付け」。どの検索ワードで自分のブログにたどり着いているのかを知ることで、自分のビジネスの特色や、どんな人が自分の作品を必要としているのかなど、マーケティングにつなげたそうです。また、忘れられない人になることを意識して発信している岡森氏は、今回の講演でも独特のキャラで笑いを誘い、会場全体に強い印象を残していきました。
「クリエイターは作品が生む効果に価値があることを理解すべき」
(フリーランス/クリエイターギルドTheCreative主宰・カッシー(樫本祐輝)氏)
最後の講演者として登壇したのは、フリーランス/クリエイターギルドTheCreativeとして法人化し、クリエイターの独立支援をしている、カッシーこと樫本祐輝氏です。3年目の登壇となった今回の講演は、2015年、2016年からさらにバージョンアップさせた、「次世代クリエイターに必要なもの」を語りました。
今回の樫本氏の講演テーマは「あなたは、本当は何を創っているクリエイターなのか?」ということ。このテーマを通して樫本氏が講演した内容は、収入に悩みを抱えた会場にいるクリエイター全員にとって、課題解決のきっかけとなるものでした。
クリエイターという職種の平均収入は、ほかの職業と比較すると下から数えた方が早いという事実があります。一部のクリエイターが収入面での悩みを抱えているのではなく、業界全体を通してクリエイターが低収入であることを説明しました。そのため、周りと同じことをやっていては平均値に引っ張られてしまい、結局収入を上げることにはつながりません。
これまでは、技術やスキルを向上させることで低収入からの脱却を図ることができましたが、これからはもう一歩踏み込んでいかなくてはいけないと話す樫本氏。クリエイターの課題解決のヒントとなるのは、「世の中におけるクリエイターが担う価値を認識すること」である、と強調しました。
例えば、イラストレーターはイラストが描けることだけに価値を見出すのではなく、「イラストが生む効果に価値がある」ことを知る必要があります。イラストを創り出す技術力とは、その価値を支えるだけに過ぎず、技術力を磨くだけでは本質は変わりません。このように、クリエイターは課題解決のために、どうやって企業や社会に自分のイラストが貢献できるのかを考えていくことが重要なのです。
悩みをぶつけろ! ジャンル別相談会(座談会)
講演が終了した後、参加者各自が興味のある分野で交流する「ジャンル別相談会(座談会)」が行われました。この相談会では、今回の講演者やクリエイター200人祭りの実行委員の方々、参加者同士が自由にコミュニケーションできます。ジャンルは「初級フリーランス」「イラスト&アート」「働き方」「上級フリーランス」「クリエイターレベルアップ」「転職」の6つです。中でも特に参加者が集まっていたのは初級フリーランスのブース。実行委員側のクリエイターの仕事内容に沿って、Webデザインやプログラミング、SEOマーケティングなど、さらに3グループほどに分かれて話し合いを始めます。
その中で私が参加したのは、SEOマーケティング部門です。そこには私と同じようにライター業を始めたばかりの人や、アフィリエイトを専門としている人が集まりました。独立する前に稼いでおきたい月収、検索流入の増加のさせ方など、思い思いの質問が飛び交います。これまで誰にも相談できなかった悩みを、実行委員側のクリエイターから経験をもとにしたアドバイスをもらうことができます。
この相談会では、実行委員側との交流だけでなく、参加者同士でも経験や知識を共有する姿が見られました。同じ悩みを抱えるクリエイターと出会うことができるのも、クリエイター200人祭りの特徴でしょう。
行動あるのみ! 学んだことはすぐに実行する
クリエイター200人祭りの良いところは、「明日から行動できることを学べる」こと。登壇者やほかの参加者との距離が近く、これからのクリエイターに必要なフレッシュな情報を手に入れやすいイベントであることを感じました。
そのうえで、今回参加して特に印象的だったのは、参加者同士の交流です。積極的に名刺交換をする姿や、話し合いをする姿を見ると、クリエイター各自がしっかりとした目的意識を持ってこのイベントに参加していることを感じました。
同じ悩みを抱えるもの同士が集まり、情報交換をするような場を設けないと、フリーランスを始めたばかりの人は孤立してしまいがち。その状況を打破するのに、クリエイター200人祭りは大きく参加者の役に立ったはずです。今回のイベントで作られた人脈がどう広がっていくのか。参加したクリエイターの今後の活躍に期待です。
写真撮影・写真提供
新レイヤ
https://leiya.goat.me/
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