コロナは地方・都市・世界を繋げた。あなたは今後どう働く?「ローカルと都市の関係から考えるアフターコロナの働きかた」レポート
5月28日(金)、世界中がコロナ禍により、テレワークの導入や検討を進める企業が増えるなど、働き方自体が変化してきている中、「ローカルと都市の関係から考えるアフターコロナの働きかた」(主催:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、共催:HafH パソナJOB HUB)が、オンライン配信された。当日は、会社員を中心に245名以上が参加した。
コロナ禍で働き方はより多様化していく
はじめに、登壇者3名より、自己紹介とこれからの時代の働き方や生き方のヒントが語られた。1人目は、パソナJOB HUB事業総括部長・内閣官房シェアリングエコノミー伝道師の加藤 遼氏だ。
「働くということは、傍(はた)を楽(らく)にすること」をテーマに、一人ひとりが身近な人をお互いに助け合う働き方や、才能をシェアする多様な働き方を実現するタレントシェアリング事業を行なっている。
また、これからの働き方として、経営・地域課題を解決するために地域の企業と協働し、航空会社・旅行会社と共に体験ツアーを企画するなど、「旅するようにはたらく」という新しい働き方を提唱している。
2人目は、株式会社KabuK Styleの共同代表で、定額制コリビングプラットフォーム「HafH」を展開する大瀬良 亮氏。
HafHは「世界が広がる、働き方を。」をコンセプトに、第二のふるさとを持つべく、世界中で住み放題となる定額制コリビングサービスだ。利用者はフリーランスだけでなく会社員も多い。コロナ禍で働き方が多様化してきた今、これから自分で自分の働く場所と働き方を選ぶ際には「いかに孤独を感じないかという点も押さえてほしい」と紹介した。
3人目は、プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会 代表理事の平田 麻莉氏だ。元々フリーランスとして働いてきた平田氏は「場所にとらわれずに、住所不定で働く働き方が一般に広がっていくことを嬉しく思っている」と語り、フリーランス白書2020に掲載されている「会社員・フリーランスの地方での就労意欲調査」では、現在、首都圏在住者の8割以上が地方で働きたいという結果も出ていると紹介した。
また、フリーランス協会が実施したコロナ禍緊急調査「コロナ禍でのフリーランス・会社員の意識変革調査」のレポートも公開した。これまでフリーランスではテレワーク(在宅ワーク)利用済みは54.1%だったが、コロナ禍で新規のテレワーク利用者が17.4%増加したこと、会社員ではテレワーク利用済みが35.9%、コロナ禍による新規テレワーク利用者は41.7%増加したという調査結果を共有した。
コロナ禍でテレワークを経験したことで、テレワークを利用しながら複業を始めたいと考えるようになった人も5、6割増えているという。
平田氏は、本調査でフリーランスの約9割が新型コロナウイルス感染拡大により「業務に影響があった」と回答していることを挙げ、「職種ごとの収入の違いや政府の支援策に対する評価も調査されている。この貴重なアンケート結果も併せて見ていただきたい」と語った。
テレワークは「働く」と「生きる」が融合する
平田氏による意識改革調査の結果を踏まえ、加藤氏は「日本もこれまでのメンバーシップ型の雇用でなく、それぞれの仕事に合わせて働くジョブ型な働き方へと向かっていくのではないか。この数ヶ月間のテレワークの普及は、複業にせよテレワークにせよ、今後働く上で何を成果とするかが問われている」と力説した。また、下図のようにテレワークを活用することで、自然とジョブ型・ワーケーション・多地域居移住・関係人口創出へと繋がっていくことを示した。
コロナ時代における「これからの働き方」とは
そして、各登壇者からの発表後には「これからの働き方-コロナ禍の変化-」をテーマに、登壇者3人による対談が行われた。ここでは、内容の一部を箇条書きにて紹介する。
- 加藤:私も在宅ワークをきっかけに料理をするようになり、これまで関係を構築してきた地方の方から地場野菜を送ってもらうなど、より地域の人とのつながりを感じる機会になった。今後ますます、経営者・人事担当者側らは「会社に共感し、一緒に働きたい」と思ってもらえる仕組みを作ることが大切になってくるだろう。
- 平田:全員が同じ条件になり、海外・都市・地方が本当の意味でフェアになった。オンラインで世界に繋がったことで、今後は世界のどこにいても仕事ができる社会が実現していくのではないか。
- 大瀬良:(「60歳を過ぎた都会のサラリーマンが地方で役立てることはあるか」という参加者からの質問に対して)コロナを受け、現在、私は地元の長崎に滞在している。知り合いの東京の人を長崎の人に紹介・繋げることは、地方にとって大きなチャンスになり得る。仕事自体は都市にも地方にもあるが、どうやって収入を確保していくかが考えどころだろう。
オンラインをこれまで活用していなかった人も関心を持ち始めている今、ますますオンラインのニーズが出てくる。世の中が何を求めているかよりも「自分が何をやりたいか」をベースに考えると良い。
テレワークで「旅するようにはたらく=より生き方が豊かに
続いての対談テーマは、「旅するようにはたらく」だ。
- 加藤:旅先で出逢う人々のユニークな生き方や働き方は、自分の生き方や働き方をゆっくり考える機会になる。自然の近くで働いていると、人間も自然の一部であることに気づき、身体能力が上がったり、アイデアが生まれやすくなったと感じる。また、複業を通して繋がった地方の方々に仕事を発注するなど、地方関係者の存在も大きかった。あらゆるエリアに、共に働く仲間がいることで広がる可能性が大いにある。
移動しなくて良い時代に、どうしたら移動したいと思い、実際に動いてもらえるか。人が動くのは、会いたい人がいたり、一緒に行きたいと思う人がいたり、いずれも「人」が原動力となっている。魅力的な人が集まる設計がされている地域は強い。 - 平田:これまでの「大企業に就職すれば安定」というステレオタイプの幸せの価値観から、豊かさや幸せの価値観も多様化している今、働き方・生き方が変わるのは必然で、段階的に多拠点居住・地方で働くことも始めやすい。多拠点移住は子どもにとっても地方を体験できる場であり、子育て環境としても良い。
オンラインでもオフラインでも「同時間に同空間にいる」という帰属意識から解放され、ポートフォリオ分散(複線化)していくだろう。共感による信頼関係が築ける拠り所となれるのかが企業の課題だ。 - 大瀬良:家族で共に過ごす時間が増えるチャンスにもなり得るので、家族連れにはワーケーションを勧めたい。ゆくゆくは、家族で多拠点居住などに一歩踏み出してもらえたら嬉しい。海外ではテレワークで生産性が上がったというデータもあり、通常はテレワークで仕事をし、半年に1回くらいリアルで同僚に会うと気持ちも盛り上がり感動が起こる。スパイス的にオフラインで会う機会を取り入れると良い。
災害の多い日本では、セーフティネット・リスク分散として、地方の価値は充分にある。社員の心理型セーフティネットになれる会社経営や地域の拠り所となる自治体など、今回のコロナ禍で、その良さが鮮明に見えた場面もあったのではないか。
オンラインイベント後には、spatial.chatにてオンライン懇親会が開催された。さまざまな体験を通じてオンラインならではの楽しみ方を得られることで、今後できることが増えたり、新しいサービスのアイデアが生み出されたりなど、未来に希望と可能性が感じられるイベントだった。
* * *
コロナウイルスの世界的な感染拡大により、世界中が同条件になったことで、オンラインやテレワークの活用が急激に進んだ。本当の意味で世界・都市・地方の垣根がなくなり、自分が理想とする幸せの形を実現できる可能性が、今、一段と広がっているのではと感じる。このコロナの状況を悲観するだけではなく、明るい未来に向かって自分の生き方・働き方を見直す起点と捉えてみるのは、いかがだろうか。
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