Part5 ストレージ・データ保護機能の活用

2011年9月2日(金)
Think IT編集部

データ保護の重要性と課題

 企業のデータは増加傾向にあり、ストレージの追加を余儀なくされている。一方で、IT予算を削減しなければならない。この状況の下、IT部門の管理者を最も悩ませる問題が、データのバックアップである。IDCによる2005年以降の調査結果を見ると、ストレージ管理の課題として常に上位に挙げられているのが「バックアップの効率化」である。この情報からも、バックアップが長期に渡って問題となっていることが良く分かる(図5-1)。

図5-2●国内企業が抱えるストレージ管理課題の上位5項目(2005年~2010年)
問:あなたの会社のストレージ管理における課題は何ですか?
  2005 2006 2007 2008 2009 2010
1位 バックアップの効率化 データセキュリティー強化 災害対策 バックアップの効率化 データ量増加への対応 バックアップの効率化
2位 データ量増加への対応 バックアップの効率化 バックアップの効率化 データ量増加への対応 バックアップの効率化 データ量増加への対応
3位 災害対策 災害対策 データ量増加への対応 データ量増加への対応 管理者のスキル不足 災害対策
4位 データセキュリティー データ量増加への対応 データセキュリティー強化 データセキュリティー強化 管理者不足 管理者のスキル不足
5位 client PCのデータ管理 管理者不足 法規制への対応 管理者のスキル不足 災害対策 管理者不足
Source:IDC Japan, 2011年2月「国内ディスクベースデータ保護市場2010年の推定と2011年~2014 年の予測」(J11440102)


 従来、サーバが分散した環境では、サーバごとに独立して個別にバックアップを取っていたため、管理も煩雑化していた。 しかし、現在はビジネスを取り巻く環境の変化に合わせ、企業経営にスピードが求められている。事業継続を意識した効率的なデータの保護と、迅速なリストアを可能にする仕組みが要求されている。 それには、データ保護の目的や用途によって、ストレージの機能やバックアップ・システムを適切に使い分けなければならない。

確実にリストアできることが大切

 バックアップの目的は、データの保護である。しかし、単にデータを保管しておくことが目的なのではない。過去のデータが必要となった際に、データが読み込めなければ意味がない。大切なデータを損失してしまった時に確実にリストアできるために、バックアップを取得しているのだ。 バックアップ先のストレージは、これまではテープ・メディアが主流だったが、リストアする時間を考えると、テープ・メディアよりもディスク・ベースのバックアップ(バックアップ専用ストレージ装置)の方が、昨今のビジネス・ニーズに適している。

統合でバックアップを効率化

 分散しているサーバを統合し、ストレージを集約すれば、バックアップも一元的に行えるようになる。また、データの統合によって、これまで分散していたバックアップの仕組みも統合化できる。 例えば、VNXeでファイル・サーバを統合した場合、ファイル・サーバを効率的にバックアップする標準技術であるNDMP(Network Data Management Protocol)を利用できる(図5-2)。

図5-2●NDMPバックアップの仕組み
VNXeは、NDMPプロトコルをサポートしており、Windows(CIFS)やLinux(NFS)の環境において、プロトコルに依存しないネットワークベースのバックアップが可能。

CIFSやNFSといったプロトコルに依存しないバックアップが実現できる。 また、バックアップを複数世代、かつ長期間保持しようとすると、膨大な容量のバックアップ・ストレージが必要になってしまう。かつてのテープ・メディアを利用したバックアップの仕組みでは、増加傾向にあるデータに対して限界がある。こうした背景からも、最近ではEMCの「Avamar」など、重複除外機能を搭載したバックアップ・ストレージが主流となりつつある。 重複除外機能を搭載したバックアップ・ストレージを利用すると、データ量が膨大で長期間保管しなければならないケースでも、最大で数百分の1程度にまでバックアップ・データ量を削減できる効果が期待できる。バックアップにも最新のストレージ機能を利用するなど、万全な体制を整えておきたい。

スナップショットの活用

 用途に応じて、ストレージのスナップショット機能も活用したい。スナップショットは、テープ・メディアへのバックアップと異なり、過去のある時点の状態へ、いつでも迅速にアクセスできる。このため、ファイル共有ボリュームにスナップショットを適用するケースが多い。エンドユーザーにスナップショットを開放しておき、ユーザー自身で自由にデータを復元できる環境を用意する企業も多い。尚、VNXeのスナップショット管理は、非常に簡単であり柔軟性も高い(図5-3)。

図5-3●VNXeのスナップショット設定画面
スナップショットは任意のスケジュールで作成できる。また、作成サイクルを定めた推奨ルールセットがあらかじめ用意されている。


 スナップショットのもう1つの用途は、「バックアップ向けの静止点確保」である。データベースなど、アプリケーションによっては、データをバックアップする際に、データの一貫性を保つことが望ましい。ここで、スナップショットが活用されている。 バックアップ・ソフト側のオンライン・バックアップ機能によってストレージのI/Oを一時的に停止させた状態で、ストレージ側でもボリュームの静止点を確保すると、一貫性を維持したバックアップが取得できる。 EMCでは、このようなアプリケーションのバックアップ処理を自動化するレプリケーション・ソフト「Replication Manager」を提供している。Replication ManagerがアプリケーションとVNXeのスナップショット機能と連携することで、バックアップ運用の効率化を実現する。

レプリケーションの活用

 バックアップとは異なり、レプリケーションの目的は業務継続にある。ストレージ・データの複製を連続的に実施することで、機器の故障や被災などによってファシリティ(設備)が利用できなくなった場合でも、データを継続して利用できるようにする。特徴は、RPO(目標復元時点)とRTO(目標復旧時間)が比較的短い点である。 VNXeは、装置内および装置間のボリューム・コピーが可能で、運用も非常に簡素化できる(図5-4)。

図5-4●VNXeのリモート・レプリケーション構成
2台のVNXe同士の間で、データをレプリケーションすることができる。遠隔地同士に配置することで、WANを介したリモート・レプリケーションが可能になる。


 昨今、事業の継続性が強く求められるようになり、ストレージのレプリケーションを導入する企業が増えている。現在もテープ・バックアップの手法だけに頼って、課題を抱えている企業には、ストレージ・ベースのバックアップ手法や、レプリケーションを活用した事業継続性の高い環境への移行を推奨したい。


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